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【11】急なメール

出張中の滞在期間は快適だった。

最近、面倒なことに巻き込まれつつある予感がしていたから、今回の出張は息抜きになる。

いきなり理花がいなくなったと思って焦ったらしい樹からは、メールや電話が届く。

一生懸命なのは悪くないと思うので、適当にメールを返してはいるが、

電話だと時間も体も束縛されているようで正直言って、うっとおしい。

あれこれと詮索ばかりされるのも迷惑なのだ。

悪い人ではないんだけれど。



そうして過ごしているうちに、夏休みも残り2週間になった。

1日の仕事が終わり、後片付けをしているとき、同じ事務所から来ている桜井涼に誘われた。

「今夜、飲みに行かない?」

明日は2人とも仕事が休みだから、飲みに行くのはちょうどいい。

「今日は暑かったからな。ビールでも飲んでスッキリしたいね」

「私を誘ったりしていいのかな?」

「何で? 別に変なことするわけじゃないし、いいだろ」

実は過去、彼とは彼の言う「変なこと」をしてしまったことがある。

当時、まだ独身だった涼は理花と少しの期間付き合っていたが、涼のことは好きになれなかった。

友達としてはいいけれど、恋愛感情がまったくわかなかったのだ。

別れを切り出したのがクリスマスイブだったせいか、かなり傷つけてしまったと思う。

悪意があったわけではないけれど、悪いことをしたような罪悪感はあったし、

同じ職場で居心地悪く過ごしていた。

でも、理花と別れたおかげで今、涼は幸せな結婚をしたのだから結果的には良かったのだ。

「酔った勢いで変なことしたら悪いから----」

と言って断ろうとしたとき、タイミングよく理花のケータイにメールが届いた。

「……え、えええっ!!」

ケータイ画面の文字が理花に大声を出させた。

「どうした?」

涼が近づいてきて画面を覗き見する。

「理花ちゃんとの飲みは、延期みたいだね」

ふっと笑って肩をすくめた。

メールは透弥からだった。

今、長崎駅にいるらしい。会えるかどうかの返事を促すメールだった。

わざわざ会いに来たとなると、会わないわけにもいかない気がした。

涼と別れてひとりになると、理花は透弥に電話をかけた。

駅にいると言うから、列車で来たのかと思ったけれど、透弥は車で来ているらしかった。

樹に聞いて、理花の居場所はわかったものの、泊まっている寮の場所まではわからない。

とりあえず思いつきで駅を目指して運転してきたのだそうだ。

『何かあったの?』

電話の向こうで透弥は『別に何もないけど』なんて言って笑った。

何もなくてわざわざ車を飛ばしてくる距離でもない。

とにかく会ってから話す。と言う透弥の待つ駅まで、理花は行ってみた。

「久しぶり」

透弥は理花の顔を見るなり、照れたように言った。

「うん、久しぶり。元気だった?」

理花の問いかけには答えず、透弥は車に乗り込んでしまう。

中から助手席側のドアを開けてくれた。

乗れってことらしい。

理花は助手席に座ってから、再び透弥に聞いた。

「何かあった?」

「行きたいところ、あったら言って」

「……ううん、別に」

「じゃあ適当行こう」

透弥が何を考えているのか、さっぱりわからない。

聞いても無視しているのか、言いたくないのかわからないが、話をそらされる。

それ以上話すのが面倒になって、理花は黙って窓の外を眺めた。

透弥もしゃべらない。

ただあてもなく車を走らせているようだ。

窓の外の景色が、街中から暗い海へと変わってきた。

海岸沿いを走っている。

「ねえ、どこ行くの?」

何だか不安になってきた。

「さあ……わかんない」

「わかんないの?」

「うん、迷子になったかも」

なんて言い出した。

冗談じゃないよー、と思い前方の看板を見ると『岬公園』と矢印が出ていた。

いったんそこに車を止めよう、と透弥に言った。

車を止めて透弥は、車内の明かりをつけてから、道路地図を開いて見ている。

「どこにいるのか全くわかんねーし」

後ろの座席に道路地図をほおり投げた。

「ちょっと、ちゃんと調べなさいよ」

諦めが早すぎる。

「面倒臭い……」

口を尖らせてじっと理花を見ている。

理花も透弥を見た。

しっかりと目が合ってしまい、ドキンとする。

やっぱりカッコイイかも。

しばらく透弥の顔に見惚れていると、

「あのさ、ホテル行かない?」

急に透弥が口にした。

「……え……っと」

行かない? って聞かれて「行く」とは答えられない。

まっすぐ理花を見ている透弥の目から逃げるように目をそらした。

「さっき通り道にあったホテル」

「……あったっけ?」

「キレイなホテルだったよ」

「そうだっけ?」

「キレイなの、嫌い?」

「嫌いじゃないけど……」

「じゃあ、OKだよね」

「……どうしよう」

「行こう、理花。ね?」

「……うん」

理花はうなずいていた。

ドキドキする。

ドキドキが止まらない。
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