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【12】理花の気持ち

透弥は昼間、ひとりで適当に時間を潰しているらしい。

理花が滞在している寮は、部外者立ち入り禁止なので、

透弥を泊めるわけにも入れるわけにもいかない。

透弥はビジネスホテルを借りて泊まっている。

あれから、仕事の後は透弥のいる部屋で会っていた。

一緒にご飯を食べて、部屋で抱かれて別れて寮に帰る。

そんな生活を一週間ほど続けたあと、透弥は急に「明日、帰る」と言った。

「理花はいつ帰ってくる?」

寮まで送ってもらった車から降りようとした理花の背中に、透弥が問いかけた。

理花は両足を地面について、それから透弥を振り返る。

「9月1日帰ってくるよ」

「じゃあ、1日の夜に会いに行くね」

車内は薄暗くて、表情がはっきり見えないけれど笑ってるみたいに見えた。

「うん。待ってる」

手を振って別れたあと、理花は透弥の車を見送りながらあれこれ考えた。

はっきり付き合ってくれって言う告白はされていない。

でも、付き合い始めてるってことかと思えば、そう思えなくもない。

透弥のことは、たぶん好きなんだろうけれど、良くわからない。

好きじゃなくてもエッチ出来るひともいるし、透弥だって単にそれくらいにしか

理花のことを考えていないのかもしれない。

ただの暇つぶしとか、夏休みの旅行気分で気紛れに来てみたとか。

だいたい、来たときもいきなりだったけど、帰りもいきなりだ。

そもそも、あまり実感がなかった。

夢を見ているような一週間だった。

透弥の言うままに、流されていただけなように思う。

でも、嫌いなひとに抱かれたいと思わないから、嫌な思いはしてないけれど、

幸せを感じたとか、離れたくないとか、そこまでの気持ちもなかった。

いつもそう。

好きだかわからなまま、告白をされて付き合うけれど、身体も心も熱くなれない。

好きになれると思って続けると、どんどん相手の嫌なところが目についてくる。

好きって何?

好きってどんな気持ち?

このまま続けていたら、透弥のことを好きになれるのだろうか。

会いたくてたまらないとか、ひとりの時間が寂しいとか、別れ際に涙が出るとか、

メールを待って眠れない夜を過ごすとか、そんなことが自分に起こるのだろうか。

「……わかんない」

肩をすくめつつ、寮の部屋に向かった。



********************



9月になって、予定通り理花は家に帰ってきた。

久しぶりの部屋は、暑い熱気がこもっていて息苦しい。

空気を入れ替えるために、窓を開ける。

それから着ていた洋服を脱いで、ベッドに倒れこむ。

開け放した窓から風が入ってきて、気持ちが良かった。

今日は1日、家にいられる。

朝一番で帰ってきたから、まだ今日はたくさん時間が残っている。

目を閉じるとすぐに、眠気をもよおしてきた。

エアコンつけたいな、シャワーもしたい。

考えているうち、いつしか眠りに落ちていた。

どれくらい眠ったのか、目が覚めると汗びっしょりになっている。

バスルームへ行き、シャワーを浴びた。

スッキリして裸にバスタオルを巻いただけの格好で部屋に戻ると、タイミングを見計らったように、

玄関のチャイムが鳴った。

透弥が来る予定だけど、来るのは夜だと言っていたはず。

時間を見ると、もうすぐ午後三時になるところだった。

バスタオル一枚の格好だし、まだ髪も濡れているし、たぶんセールスか勧誘だろうと決め付け、

理花はしつこいチャイムの音を無視することにした。

けれどすぐ、理花のケータイが鳴り、見ると功至からで……。

「おまえ、今どこにいる?!」

出るとすぐに怒鳴りつけられる。

「家……」

「いるなら開けろ!」

ドアが叩かれた。

そこにいるのは、功至だったらしい。

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