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【14】告白と曖昧な関係と。

そろそろ行っていい? と、透弥からメールが来たのが午後5時だった。

透弥は大学の寮に住んでいるらしく、ここからは車で20分くらいの距離だそうだ。

たぶん5時半くらいにはここに着くだろうと予想した理花は、ふいに鳴った玄関の

チャイムに少々戸惑った。

まさか、また功至?

いい足りないことでもあって戻ってきたのだろうか、それとも透弥がメールをくれたとき、

すでに近くまで来ていたのだろうか。

考えながら、玄関のドアを開けた。

「あ……」

そこにいたのは、功至でも透弥でもなかった。

「今日帰って来るって言ってたじゃん。やっぱ、すぐ会いたいなーって思ってさ」

樹がスーパーの袋らしきものをぶら下げて立っていた。

「あがって、って言いたいところだけど……」

「2人きりになるのは、まずいか?」

窺うように聞く樹に、理花は曖昧な微笑で返す。

そのとき、樹の背後に透弥の姿が見えた。

「透弥くん」

理花が言うと、樹も後ろを振り向いた。

「おーーー、透弥。ちょうどいいところに来たな。今、理花んちに入れて

もらおうと思ってたらさ、2人きりはまずいって言って入れてもらえなかったんだよ。

透弥も理花が今日帰って来るって聞いて来たのか? 良かったら一緒にどうだ? 俺、

オムライス作ろうと思って、材料買ってきたしさ。みんなで食べようぜ」

「……うん」

透弥はうなずいてから理花を見た。

その目はかなり不服そうで、気まずくなって咄嗟に目をそらす。

「じゃあ、どうぞ。2人とも入って」

成り行き上、2人を部屋に入れてしまった。

中に入るとすぐ、樹はキッチンに向かった。

透弥はベッドとテーブルの間の隙間に座って、テレビのリモコンでスイッチを入れる。

この前と同じ光景である。

理花は透弥を気にしながら、樹の手伝いをした。

「透弥は実家だし、理花も出張だし、俺はバイトで忙しかったし、つまんねー夏休みだったさ」

玉ねぎを切りながら、樹がぼやいている。

その隣りで、理花は米を研ぎながら話を聞いた。

「でさ、相変わらず那絵ちゃんに付きまとわれてさ、まいったぜ」

「那絵は樹くんが好きだからね」

「俺、1回断ったんだぜ。なのに、まだ諦めきれないとか言うんだ」

「そっか。でも、何で那絵じゃダメなの?」

「理花が好きだからに決まってんだろ」

すごくサラリと樹は言った。

「ふうんそっか」

だから理花もサラリと言い流したんだけど。

「そっかって、その程度?」

「だって、言い方が軽すぎるんだもん」

「マジに言ったら照れるじゃんかよー」

言いながら、顔を真っ赤にしている。

「この一ヶ月半、会えない間にさ、結構いろいろ考えてたんだ。だんだん

深くなってるんだ、俺の理花に対する想い」

かなりマジメな顔で告白された。

「付き合ってるヤツ、いないんだよな?」

「うん……たぶん」

「だったらお試しでもいいから、俺と付き合ってみないか?」

本気の告白をされてしまったようだ。

理花は研ぎ終えた米を炊飯器にセットした。

「透弥が気になる?」

理花がチラッと透弥の様子を見たのを、樹に気づかれたようだ。

「え……う、ううん。別に」

本当はものすごく気になっていたけれど、咄嗟に首を振って否定してしまった。

「あの、樹くんの気持ちは良くわかったよ」

「じゃあ、考えといてよ。返事はすぐじゃなくてもいいし」

「わかった」

「でも、いい返事待ってるね」

笑顔で言ってから、樹は何事もなかったように料理に戻った。

再び透弥のほうをチラッと見ると、今度はばっちり目が合ってしまう。

その不機嫌そうな目は、理花に無言でこっちに来るよう、言ってるように見えた。

理花はキッチンを離れ、透弥のそばに行く。

「告白されたみたいだね」

透弥はテレビをじっと見たまま、理花に言った。

「聞いてたの?」

「聞こえた」

透弥がゆっくり視線を理花に移す。

立ったままでいる理花を、下から見上げているような格好だ。

「で、どうすんの? 樹と付き合う?」

問われて理花はキッチンにいる樹の後姿を見る。

「どうしようかなって思ってる」

「ふうん、そっか」

「あのさ、透弥くんは……あの、どう? 私が樹くんと付き合ってもいいって思ってる?」

出張先で、あんな関係になってしまったものの、はっきり告白されたわけじゃない。

それが理花の心に引っかかっていた。

お付き合いが始まったように思えたけれど、もしかしたらあの場だけの遊びだったのかもしれない。

過度に期待して、違うよって言われたらショックが大きい。

樹とは付き合うなって言葉を、透弥から聞きたかっただけだった。

「俺が、樹と理花が付き合ってもいいって思ってるかって?」

顔が、怒ってるように見えた。

睨むように理花を見る目は、とっても冷たくて怖かった。

「それってさ、付き合うなって言えってこと?」

「じゃなくて、透弥くんの気持ちが知りたくて……」

「俺の気持ちを試してる?」

「試してなんかな──」

「俺に嫉妬して欲しい? それとも、長崎でのことは、理花にとって全く

何でもなかったわけ? 誘われれば誰とでもやってんの?」

だんだん、透弥の声が大きくなる。

「樹に告白されて、考えとくとか返事して、俺にどうすればいいか決めさせようとしてるの? 

そういうことが言えるってことは、俺のこと真面目に考えてなかったってことだろ? 俺、

理花に遊ばれたの? 俺とのことはなんでもないことだったわけだよなっ!」

今まで、多くをしゃべらなかっただけに、今の透弥に理花は驚いている。

違うって言い返さなきゃいけないのに、その隙さえ与えられない。

「キスしたときとか、抱きしめたとき、理花の気持ちも俺と同じだって

思ったんだよ。なのに、樹と付き合っていいの? とか言って俺の気持ち試したりして、

バカにしてんのかよ。バカにすんなっ!」

透弥は立ち上がって、理花と対峙する。

「おい、おまえら何ケンカしてんだよ」

樹がキッチンから飛んできた。

「透弥。どうしたんだよ。そんなに取り乱して。おまえらしくねーじゃん」

「俺らしくって何だよ!」

「おい、透弥……」

「理花がいいと思うようにすればいい。俺には何も言う権利ねーんだろっ!」

「透弥、落ち着けって」

すっかり落ち着きを失くした透弥を、樹が必死でなだめている。

理花は何も言えず、何も出来ず、ただふたりを見ているしか出来なかった。
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