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クリスマスマジック ~2013

「クラゲって脳みそがないんだよ」

くりすます



ずっと仲良くしていた女友達がふと言った。

「頭で考えることがない分、本能で生きてるんだよね」

ゆらゆらと目の前の水槽で揺れているクラゲを見て、

彼女はそれきりだまりこんだ。


僕は彼女のことが実は好きで、恋愛感情を持っている。

何度か彼女に告白しようとしたけれど、この友だち関係が

壊れてしまうのが怖くて言い出せずにいた。

彼女とは友達としてでもいい、ずっとそばにいたかった。

けれど時々、彼女の横顔やうつむいた顔を盗み見るたび思うんだ。

触れたい気持ち、抱きしめたい衝動、そしてもう少し先のことも。

理性と本能が葛藤している。

煩悩に悩む夜もある。

「ずっと友達でいようね」

何年か前に彼女にそう言われたこともあるから、余計に

告白する勇気と、それと同時にこの関係が崩れる不安が

いまいち僕を弱気にさせているのだ。


いま僕たちは水族館に来ている。

彼女のほうから誘ってくれたのだ。

そして見ているのが、クラゲである。


「あのね・・・」

水槽を見つめたまま、彼女が言った。

「・・・・なに?」

「うん・・・あのね」

しばらく待ってみたが、彼女はそこで言葉を止めたまま、

まだクラゲを見ている。


結局、僕たちは何も会話がはずまないまま

水族館を後にした。

外はもううっすらと暗くなりかけている。

僕たちは横に並んで、歩きながら無言のまま駐車場に着いた。

車に乗り込み、これからどうしようと考えていたとき、

彼女が口を開いた。

「あのさ・・」

「うん・・・」

さっきから同じ言葉を繰り返しやりとりしている。

「あのさ・・・私たち・・・もう友だち・・・やめない?」

友だちを・・・やめる?

僕は言葉を失った。

友だちって一生友だちでいようねって言ったのに?

友だちってやめるものなんだろうか。

僕の思考はフリーズした。

こんなことなら、想いだけでも伝えたほうがすっきりしたのに・・・。

「嫌?」

彼女は僕のほうを見て聞いてくる。

「友だちやめるの、嫌?」

僕は少し動揺しながら、そして半ばやけくそ気味に言ってしまった。

「友だちやめるなら、付き合って、彼女になって、好きなんだっ」

あー・・・言ってしまった。

でもいいんだ、どうせ終わるなら言っただけスッキリだ。

彼女の答えはもうどうでもいいと思った。

僕は車のエンジンをかけた。

このまま彼女の家まで送っていって、そして終わりなんだ。


車を走らせている間、彼女は窓の外を見ていた。

何も話さない無言の空間だったけれど、不思議と居心地は悪くない。


彼女の家の前に車を止めた。

すぐに降りると思っていた彼女は動かない。

「・・・ついたよ」

「うん、知ってる」

「下りないの?」

「・・あのさ」

「うん」

また同じ言葉だ。

「あのさ・・・一緒に・・・おりない?」

彼女の言葉がすぐに理解できなかったけれど、

頭の中の空白を埋める前に、彼女は続けてこう言ったんだ。

「待ってたんだ、わたし」

待ってた? なにを?

「そう・・・言ってくれる日。待ってた」

僕は何を言ったんだっけ・・・。

しばらく記憶を思い返すと、さっき勢いで言った言葉だと

理解できた。

「わたし、ずっと一緒にいたかった。ずっと・・・そばにいたい」

「それって・・・」

友だちをやめると言うことは、つまり・・・つまり・・・。

「わたしも、好き。私の・・・彼になってください」

暗くて見えないけれど、彼女はうつむいている。

顔が少し、ぽっと赤くなっているようにも感じた。


友だちをやめて、つまり付き合うと言うことなんだと

そう理解できたのは、彼女と一緒に車をおりて、

彼女の部屋に初めて招かれて、そして彼女をそのまま

抱きしめたとき、やっと実感できたんだ。


「どうせ一緒にいるなら、付き合っても一生一緒だもんね」

世間はクリスマス。

クリスマスにおきた奇跡。

クリスマスマジックだ。


毎年クリスマスは一緒だった。

友だちとしてのクリスマスは去年までで、

いまこの瞬間から始まった、僕たちの恋人としての

クリスマスは、きっと子供たちが信じているのと同じくらい

サンタのプレゼントを信じていると思った。


ハッピークリスマス。

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