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優しい居場所①

~明里side~


ベランダにに出ると、早瀬明里(はやせあかり)は柵に寄りかかり、空を見上げた。

こんなにいい天気なのに、何の予定もないなんて退屈だ。

日曜日の午後、明里はひとりで暇を持て余していた。

明里は専門学校に通う19歳。

学校ではデザインの勉強をしている。

友だちに電話をしてみるが、みんな先約があった。

明里は男の子にモテるから、男の子たちなら

喜んでデートしてくれるのは分かっていた。

軽くウエーブしたロングヘアは、少し茶色に染めていて、

動くたびにふわりと揺れる。

目もパッチリと大きく、色白な肌は透き通るようにキレイだ。

その上、スタイルだってよいとなれば、

男の子の視線を釘付けにするには十分すぎるだろう。


そう。

小さい頃から、明里はいつもモテていた。

けれど、どんなに言い寄られても、明里はその気になれなかった。

自分から好きにならないと心が動かない。

誘われてデートをしたことはあるけれど、いつも退屈だった。

でも、今は別の理由がある。

このアパートへ引越してきてから、明里は片想いをしているのだ。

隣に住んでいる長沢啓太(ながさわけいた)。

彼を好きになってからは、他の男なんて目にも入らないのだ。

「はあ・・・・・」

明里はため息をつくと、何気なく1回の庭を見下ろした。

「あ、あのTシャツ・・・」

庭に落ちていた1枚のTシャツは、見覚えのあるものだった。

明里は思わずベランダから身を乗り出した。




~美波side~



雲ひとつない青空。

空気はまだ冬の冷たさを含んでいるけれど、洗濯するには絶好の天気だ。

本城美波(ほんじょうみなみ)は布団を干してから、

洗濯物を洗濯機にほおりこんだ。

スイッチを入れれば後は洗濯機が勝手に洗ってくれる。


リビングに戻りソファーに座ると、美波は大きな欠伸をした。

今日は日曜日で、世間一般では休日と言われる日だけれど、

今の美波は毎日が休日だ。

リストラされて2週間になる。

上司の言うことに納得できず、反論したのが原因だと思われる

不本意なリストラだった。

部下が思い通りに動かないと機嫌の悪い男。

その上、自分の買った私物までも会社の経費でおとすような公私混同な男だった。

そういう上司を軽蔑していた美波は、あの日頼まれた嘘の帳簿作成を断った。

それから3日後のいきなりのリストラで、会社の経営難のため、

やむを得ず人員削減をしなければならなくなって申し訳ないなどと理由を告げられた

のだが、すぐには納得できなかった。

けれど、あんな上司のもとで働き続け、自分も嘘つき人間になってしまうよりずっとい

い、と無理矢理言い聞かせ退職を受け入れた。

まだ22歳。いくらでもやり直せるはずだ。


カーテン越しに差し込む暖かな陽射しが心地よくて、

いつの間にか美波は眠りに落ちていた。

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