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約束~本能との葛藤

久しぶりに会った佐代ちゃんは、相変わらず小さくてかわいかった。


僕が泊まっているホテルに、こうも簡単に着いてきてくれるとは

思っていなかったけれど、こうして目の前にいる佐代ちゃんを見ていると、

僕と同じ気持ちでいてくれているのかもしれないと少しだけ……

いや、かなり期待してしまう。

「狭い部屋だね」

にこにこ笑いながら佐代ちゃんは、きついことを言う。

「それになんか暗いしー」

予算の都合上、おしゃれとは程遠いビジネスホテルしか予約できなかったのだ。

リゾート地でもない、リバーサイドでもない、

ましてや夜景など見えない街中にあるホテルである。

だって目的は佐代ちゃんに会うことで、交通費だけでもバカにならないのだ。

ホテルを予約したのも、佐代ちゃんに喜んでもらうためじゃなく、

少しでも長く一緒にいたいだけのためだったし、

寝に帰るだけだと思っていたから値段が安いというだけで決めたのだ。

佐代ちゃんがここにきてくれるというのは、妄想の中だけで

実現することまで予測していなかったのだからしょうがないのだ。

「清二くん、キレイなホテルだって言ってたくせに」

期待して損しちゃったよ、と佐代ちゃんは言いながら、

バッグの中から何故だか携帯を取り出している。

「あ、やっぱり着信あった」

「誰から?」

「お父さん」

「えっ!!」

何故かドキンとしてしまうのは、こんな場所に娘を連れ込みやがって、

と言う佐代ちゃんのお父さんの顔が浮かんだからだ。

「ちょっとかけなおすね」

待っててね、と言いながら佐代ちゃんは電話を始めた。

「あ、お父さん?」

聞かないようにしたほうがいいのか、けれどこの狭い部屋では

聞こうと思わずして聞こえてしまう。

「うん、いまね、清二くんの泊まってるホテルにいるの」

「さ……」

思わず叫びそうになった。

何も正直に父親に言うことはないだろうと思う。

だけど、佐代ちゃんの家庭はオープンだから、

何でも話せるんだよって言っていたので当然僕たちの関係も

知られているに違いない。

「え……。うん、うん。そう」

佐代ちゃんの言葉が気になる。顔も心なしか真剣だ。

「うん。ビジネスホテル。えっと、うん、たぶん。でも、わかんない……。うん、そ」

話の全容はわからないけれど、あまり楽しそうな話題ではなさそうだ。

それから間もなく、佐代ちゃんは電話を終えて携帯を閉じた。

「なんかぁ、お父さんにいろいろ言われちゃったー」

「いろいろって……なに?」

「んー、いろいろって、いろいろだよ。でも、清二くんのことも関係あるよ」

「僕の、こと?」

そりゃそうだろう。僕とここにいることを佐代ちゃんはしゃべったんだ。

何となくだけど、あんまりいい話ではなさそうだ。

こういうことは、あまり親に言うもんじゃねーよ……。

などと心の中だけで愚痴を言っていると、佐代ちゃんが急に前かがみになった。

どうやらハンカチを床に落としたようだが、僕の目はハンカチよりも

少し上の佐代ちゃんの胸元で止まった。

洋服の中身がモロに見えた。

心臓がドキッとなる。

こんな密室で、ベッドがそばにあって、部屋は薄暗くて

雰囲気はいまいちだけど……。

僕は座っていた椅子から立ち上がった。

下半身も立ち上がりかけていたが、そこに佐代ちゃんの視線が行く前に

僕は佐代ちゃんの視界を塞ごうと近づきかけたのだが……。

「だめーーーっ!」

思い切り両手で佐代ちゃんに突き飛ばされてしまった。

佐代ちゃんは僕の目の前で両手をバタバタさせながら、

首まで横にぶんぶん振っている。

「こんなことしちゃダメなんだよ、お父さんがダメって言ったんだもん!」

佐代ちゃんは僕に向かってさらに続ける。

「お父さんがさっき言ったの。エッチするのはまだ早いって」

「そ、そんなこと言われた……わけ?」

「うん」

佐代ちゃんはバタバタするのをやめて、こくんとうなずいた。

「お父さんはね、まだ早いって言ったの。清二くんの気持ちもわかるけど、

まだ責任とれる年齢じゃないでしょ、だから我慢してもらわなくちゃって。

私のことが大事だって清二くんが思っているなら

我慢してくれるはずだって言ったの」

そんなの、改めて聞かれなくても大事に決まっている。

大事だけど大好きだから、抱きしめたいと思うんだけど、それもまだ早いのか。

「男の子は……止まらない」

「え……」

「お父さんがなんか、そんな歌を歌ってて、」

「歌????」

「なんかね、止まらなくなるんだって。えとね、き、、キスだけのつもりでも

男の子は暴走族になるんだって」

「う……」

「あ。違った。暴走族じゃなかった、暴走しちゃうんだった。ごめんね」

そこの訂正は大きな問題じゃないのでどうでもいいが、

とにかく佐代ちゃんの父親に今日のことはバレバレで、

そしてもっと大きな問題は、佐代ちゃんにその気はないということだ。

ホテルの部屋までついてきたんだから、当然その気があったんだろうとは思う。

だけど父親からの電話であっさりそれを守ってしまうのだから、

素直と言うか、無邪気というか。

ただ、やる気も下半身もしぼんでしまったけれど、

佐代ちゃんへの愛情はそのままだ。

そして壊したいとも思わない。

大事にしたいから、無理やりするつもりもなかった。

まだまだ先は長いのだ。

僕はもう高校生になったんだからって思いがあったけれど、

大人たちから見ればまだまだ責任もとれない子供である。

周りの友達には、もう普通にやってるやつらもいるし、

責任を問われるような最悪な事態にもなった話も聞かない。

だから、僕たちだってそろそろいいんじゃないかと思っていたけれど、

僕たちは僕たちだ。

周りに合わせる必要はない。

そう、佐代ちゃんがその気になるまで待つんだ。

そうして自然にそうなったときが僕たちの時期。

「夜ご飯、食べに行こうか」

「うん、とろろそばが食べたいー」

無理やり自分をきれいな言葉で納得させた。
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