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僕と悠の未来図【番外編】

今回、ちょっと視点を換えて、湊の同僚である「白石さん」の気持ちを描いてみました。


******************


「佳苗(かなえ)ちゃん。だって~」
恥ずかしくてもだえながら、私は枕を抱きかかえたまま、ベッドの上でゴロゴロ転がった。
現在片想い中の同僚、春原湊(はるはらみなと23歳)にお願いして
今日、初めて名前で呼んでもらったのだ。
ずっと白石さんって名字で呼ばれてた。
だけど、それじゃあ距離を感じるし、他人みたいで嫌だった。
もちろん、実際距離はあるし、他人なんだけど少しくらい近づけたら嬉しいなんて思ってた。
それで今日の帰り、勇気を出して言ってみたのだ。

「お願いがあるんだけどっ」
「なに?」
憎らしいくらい爽やかに微笑んで私を見るんだから、しばらく見惚れちゃって、すぐには言葉が出てこなかった。
実は、湊と初めて会った瞬間に、恋におちた。
ひと目ぼれだった。
ひと目ぼれって、だんだん相手を知るうちにマイナス部分が見えてきたり、違うって思ったりするものだと思っていた。
だけど、私のひと目ぼれには狂いがなかった。
会うたびに、話すたびにマイナスどころかプラスされていって、今じゃ大好きすぎて何パーセントなのかわからないくらい好きになってしまった。



彼は、結婚している。だけど奥さんとはずっと別居中だ。
たぶん、話し合いさえ進めば離婚するだろう。
彼には子供もいる。
奥さんの連れ子で、今11歳の悠くんだ。
彼とは血のつながりはない。それなのに、大事に大事に愛して育てているのだ。
割り込む隙間がないほどに仲がいい。
だけど私は彼の悩み相談に乗ってあげる、優しい親切な頼れる同僚のフリをしつつ、湊に近づいて割り込むところまで成功した。

この前は、デートできた。
無理やり頼んで付き合ってもらったようなものだったけれど、楽しかった。
その前は、家に押しかけて無理やりハンバーグカレーを作ってあげた。
苦手な料理。
何とか作れるその二品を披露することができて、しかも美味しかったと言ってもらえた。
徐々に近づけてる。
そして今日、思い切ってお願いする。
「私、佳苗って名前なのよね」
「え? 知ってるよ」
「うん。知ってるよね。それで、その……お願いなんだけど」
上目遣いで彼を見てから、私は名前で呼んで欲しいことを伝えた。
「え、別にいいけど」
彼は言って、「じゃあ、佳苗さん」と少し照れたような顔で言ってくれた。
母性本能……。
女にはそういうものが潜んでいるらしく、私はその表情にクラクラした。
可愛い。抱きしめたい!
思わず行動してしまいそうな体と心を何とかやり過ごし、私は言った。
「私も、湊くんっていうから、佳苗ちゃんって言って」
彼の目が、一瞬丸くなった。
びっくりした? それとも引いちゃった?
ドキドキしながら失敗したかと様子を伺っていると、すぐに彼はいつものように微笑んで、そしてやっぱり照れたように言ってくれた。
「じゃあ、か……佳苗ちゃん」
汗が流れる。
身体がカーッと熱くなる。
恥ずかしいのと嬉しいのと、それから照れ臭いのと。
何もかもがいっぺんに襲ってきたかのような複雑な混乱を覚えた。
何が始まったわけでもないけれど、名前で呼ばれたことが幸せだった。
奥さんのことは、気にならないし、嫉妬もしないけれど、彼の立場や状況、悠くんの気持ちも考えなければならない。
普通の恋愛が始まるようには、すんなりと行かないのもわかっている。
いつか彼が言っていたように、周りの反対だってあるかもしれない。
だけど、それに耐えていけないと思っているならば、先に進もうとも積極的にアプローチしようと思うはずが無かった。
叶わないかもしれない夢を、見ているだけかもしれないけれど、いつか悠くんと2人で仕事から帰ってきた彼を「お帰りなさい」と言って出迎えてあげられる日が来るといいな。




★おしまい~。

白石さんの裏側でした。
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