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悠のいない夏休み

夏休みになって僕は、仕事先のメガネ店に夏休みをもらった。
5日間だけだが、少し早めのお盆休みの代わりだ。
キャンプや、プラネタリウム。それにプールや海にも行こうと計画を立てていたのに、昨日の夜にかかってきた電話のせいで、すべて計画倒れになってしまった。
『悠ちゃんを遊びに来させてちょうだいね』
現在行方不明の妻、香織の母親からだった。
悠にとっては、血のつながった祖母なのだ。
気は進まないが、僕も一緒に着いて行こうかと考えた。
今現在の状況や、香織のことを話さなければいけないと思っていた。
義母は香織が家に帰らないことを知っている。
僕が話したからだが、時々香織からの連絡があるようで、さほど気にしている様子はない。
連絡があるから大丈夫。などとのんきに笑っているが、そういう問題なのだろうか。
問題だと考える僕のほうが、おかしいのかもしれないとも思ってしまう。
価値観の違い?
『あなたは来ないわよね』
今、僕も行きますと言いかけた瞬間だった。
先手を取られ、遠まわしに来るなって言われているような気がして、
「はあ、まあ」なんて曖昧に答えてしまった。
『じゃ、土曜に迎えに行くわね』
義母は、うきうきとした様子で言うと、さっさと電話を切ってしまった。
「ばあちゃんのうち? 行かなきゃいけないの?」
事情を話したら、悠は不満げな表情で口を尖らした。
「明日迎えに来るってさ」
「しょうがないな~。はあ、じゃ、1日だけ泊まってくるよ」
1日だけと悠は言ったが、1日だけで帰してもらえないことはわかっていた。
帰ったらたくさん遊ぼうね。と約束をしてから布団に入った。
「お父さん。手をつないで寝ようよ」
甘えたように言った悠の手を、僕はぎゅっと握ってやる。
悠がこんな風に僕に甘えてくるのは、寂しいと感じているときだと決まっている。
「寝たくないな……」
悠がポツリと漏らす。
「どうして?」
「だって、眠ったら一瞬で朝になるだろ? 明日になったらお父さんと離れ離れになるじゃん」
不覚にも目の奥がじ~んとなって、涙が出そうになった。
愛おしくて、可愛くて、たまらなくなって僕は悠に腕枕をして抱きしめた。
行かせたくないな。
でも、今さら断れないしな。
やがて安心したのか、悠は僕の腕の中で、すうすうと寝息を立て始めた。
眠るのがもったいなくなって僕は夜通しずっと悠を見ていた。



 
明日からしばらく悠がいない。寂しいのは僕も同じだった。
ひとりの夏休み。どう過ごせばいいだろう。
そう考えると、ため息しか出なかった。
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