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スキンシップ過剰?-4

悠が寝ているうちに、僕は悠の時間割を確かめてやるためにランドセルを開く。
時々こうして確認してやらないと、まだ忘れ物をしてしまう年齢なのだ。
「あれ……」
ランドセルの底から、ぐしゃぐしゃになった紙が出てくる。
開いて見てみると、『花の植え替えのお手伝い募集』と書いてある。
参加できるかたは、参加用紙に記入して提出してくれと書かれてあった。
けれど日付を見ると、すでに締切りも作業の日もとっくに過ぎていた。
翌朝、悠にプリントを見せながら聞いた。
「こういう大事な提出書類は、ちゃんと見せてくれないと困るよ?」
仕事の都合上、こういう行事にはなかなか参加できないでいる僕は、
他のお母さんたちからは、非協力的と思われているんだ。
作業の日は水曜日で、僕の休日の曜日だった。これなら参加できたのに。
「だって、嫌だろ?」
悠が僕から目を逸らしたまま言った。
「え?」
「だってさ、腰痛いんだし、せっかく休みなんだしさ、しなくていいって思ったんだ」
だから隠していたんだと悠は言った。
「悠、僕のためなの?」
「いいんだよ。そーゆーのはやれる人がやればいいんだからさ。暇なオバサンが
いっぱいいるんだからいいのっ」
「悠……それは違うよ」
悠が僕のためにと思ってくれた優しさは嬉しい。だからと言って、悠の考え方は
違うと教えてやらなければいけないと思った。
「やれる人がやればいいって言うのは、全くの間違いじゃないと思うよ。どうしても
無理なものは無理してもやれないんだからさ。でも、何も出来ませんじゃ済まない。
やれることは協力しなきゃいけないと思うんだ。この日は休みで無理じゃない。それに
花の植え替えなら、僕もやれると思うんだ」
「腰が痛いくせに?」
「悠が心配してくれる気持ちはわかるし、嬉しいと思ってるよ。でも、ちゃんと
外に働きに行けるくらいなんだ。何もかも無理ですじゃ、通らないんだ。相談して欲しかったな」
「……だって」
「怒ってるんじゃないよ。悠はどう思う?」
「悠は……」
「お父さんの言うことが全部正しいとは限らないから。違うと思ったら違うって
言ってくれていいからさ、正直に思ったこと、言って?」
悠は少しの間、落ち着きなくそわそわして、泣きそうになっていたが、やがて
僕の顔をじっと見ると、
「ごめんなさい」
小さく謝った。
「謝らなくていいんだって。そりゃ、プリントを隠してたのは困るけどさ、
悪気があったわけじゃないんだし」
僕の言いたいことは、間違って悠に伝わったのかもしれない。
つくづく言葉って難しいもんだ。思ったことが思った通りに相手に伝わればいいんだけど。
「悠」
僕は悠の頭をそっと撫でた。
顔を上げた悠の目が、涙に濡れていて、ちょっと胸が痛くなる。
「これからは、学校のプリントはちゃんと全部見せて?」
「うん。わかった、見せるね。ごめん」
うなずくと同時に、悠が抱きついてくる。
小さい身体を抱きしめながら、愛おしさがこみ上げる。
どっちかと言うと、僕と悠はスキンシップ過剰だと言われる。
僕の母親なんか、良くこういうんだ。
「ホントの親子はそこまでベタベタしないよ」
そうなんだろうか。
言われてみれば、僕は母とは距離を感じていたっけ。
抱きしめられるどころか、頭を撫でられたことも、確かになかったような気がする。
だけど、学校で貰ってきたプリントに書かれてあったんだ。
スキンシップは大事だって。
無理してやっているとか、心がけてやっているんじゃなかった。
本当にそうしたいと思うから手を伸ばす。
こんなに可愛いのに、抱きしめたくならないわけがないと思うんだけどな。
でも、本当に血がつながっていたら、どうなのか。想像したってわからないのだ。
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