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普通の基準?-2

香織とはバイト先で知り合った。
二年前に離婚して、当時六才の悠と二人で暮らしていると言っていた。
四つ年上の香織の、必死で子供を育てている姿に惹かれた。
子供だったんだよな、僕も。
僕が香織と悠を、幸せにしてやれると思ってしまったんだ。
周囲の反対はかなりなものだったけれど、僕達は結婚した。
幸せに、楽しくやっていたはずだった。
たった一年でこうなってしまったんだ。
周囲の反対に逆らわなければ良かったかな、と時々思う。
けれどそれはすぐに違うと首を振る。
悠の寝顔を見るたびに、僕は間違っていなかったと何度も思い返すんだ。
香織と結婚していなかったら、悠はここにはいない。




夏休みも終わりに近づき、僕の腰は全快傾向にあった。
通い慣れ、まるで常連のように病院スタッフとも仲良くなってしまった。
「プールに、行ってもいいでしょうか」
治療中、杉浦先生に聞いてみた。
「子供がうるさいんです。連れて行けって」
「春原さん、子供さんいらっしゃったんですか」
杉浦先生は、ちょっと驚いた様子だった。
「10歳なんです」
僕の年はカルテに書いてある。先生が驚くのも無理はない。
10歳の子供に22歳の父親なんて、普通は有り得ないだろう。
ずいぶん打ち解けていたせいか、僕は先生に事情を話してしまった。
「そうだったんですか、頑張ってらっしゃるんですね」
その目が同情されているように見えて、帰り道で僕は、言わなきゃ良かったな、
と後悔した。いくら打ち解けていたからって、ここまで個人的な話をする仲ではない。
昼休みを抜けて病院に行っていた僕は、
そのままファミレスでランチを食べてから、仕事に戻った。




「春原さん、さっきお客様が来られて、レンズの色が違うってクレームついていたわよ」
同僚の女の子、白石さんが、メガネを差し出した。
僕はずっと、このメガネ店で働いている。
メガネを加工するのが主な仕事だけれど、もちろん接客も検眼もやっている。
「ピンクが薄すぎるんだって」
「これ以上濃くすると、すごい色になっちゃうんだけどな」
手渡されたメガネのレンズは、見本色よりもかなり濃い目に染まっている。
これのどこが薄いんだ。
「でも、お客様の要望だから……」
白石さんも同じ事を思ってくれているようで、苦笑いで肩をすくめる。
「わかった。濃くしよう」
ピンクが濃く染まったレンズのメガネを受け取りに来たお客様は、
その色に満足したらしく、喜んで帰って行った。

こっちが「これが最適」と思うことでも、人によって感じ方が違うんだなぁと思った時、
僕が良かれと思った事で、香織がそうは思わなかった事がきっとあったんだろうかと、不意に思った。

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