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常識ってなんだろう-1

夏休みの間、ずっと実家に世話になっている。
夏休みには、海やプールにキャンプに連れて行けと、ひとり息子の悠からねだられていた。
なのに何だ。
夏休みが間近に迫っていると言うのに、僕は腰痛に倒れたのだ。
「しばらく安静に。痛みが治まったらストレッチを始めましょう」
昔から腰痛持ちだった僕は、かかりつけの整形外科があったけれど
倒れたのが日曜日だった。とにかく痛みがひどくてたまらず、日曜も診療していると
噂の病院に駆け込んだ。
臨床整復科と言う耳慣れない科に案内された僕は、多少の不安はあったけれど、
担当の杉浦先生の、優しい笑顔に解消された。
今まで受けていた腰痛治療とは異なり、薬や注射は一切使わず、
杉浦先生の腕一本での治療に最初は戸惑っていたが、いやすごい。
一週間もすれば痛みがすーっと治まって来たのだ。
「油断は禁物ですよ」
痛みが治まったからと言って、完治したわけではないので、治療は続けましょう、
と言われ、そうかと納得した僕は、今も病院に通い続けているのだ。

「ただいまー」
「おかえり。腰、大丈夫?」
実家の玄関を開けると、悠が出てきて気遣ってくれる。
悠は今年10才になった。小学校4年生だ。
僕とは血がつながっていない。
でも僕にとっては本当の息子と何も変わらない、可愛い可愛い子供なんだ。
こんな可愛い息子を置いて、妻、香織は家を出て行った。
離婚はしていない。別居ともどこか違う。話し合いは何もしていないのだ。
何もわからないまま、香織は突然いなくなった。
一度だけつながった携帯電話の向こうで、香織は言った。
『湊(ミナト)が悪いのよ。全部あなたのせい』
僕のいったい何が悪かったのか、尋ねても香織は答えてくれなかった。
『それも分からないなんて、バカなんじゃない? おかしいわ湊。人として変よ』
僕は返す言葉がなかった。
あなたの将来が心配だわ、と香織は言って、一方的に電話は切られた。
以来三年間、電話はつながらない。
香織の言葉を、僕は何回も頭の中で考えた。

僕はおかしいのか? どこが? それが分からないのがおかしいのだろうか。
二十二年間生きてきて、おかしいなんて言われたのは初めてだった。
それなりに常識の範囲で、特に目立つこともなく暮らしてきたつもりだった。



「お父さん、宿題で分からないところがあるんだ」
教えてよと言って、悠が僕の腕を引っ張る。
「小数点の計算なんだけど、おばあちゃんは分からないって言うんだ」
「よし、分かった。どこだ?」
そう言ったものの、僕の頭は文系で、正直算数は苦手だ。
問題集を見せられて、しばし考え込む。たぶんこのやり方で合っているだろうが、
けど待てよ。万が一、間違って教えたら大変だ。
「悠、教科書見せて」
読んで、理解して、何とか教える。
まだ4年生だから何とかなるが、そろそろ限界かもしれないな、と思う。
「先生の話を良く聞いて、遅れないようについていかないと、これから大変だからな」
ちょっと責任逃れな発言をして誤魔化しながら、頑張れよ、と悠の頭をぽんっと叩いた。


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