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恋にとどくまで~梨々の恋 15step

梨々の恋~15step




 たくさん歌ってスッキリしたのは、苺花だけだったようだ。

 無理やり呼び出され、つき合わされ、しかもお金まで割り勘にさせられた大和は、

やっぱり可哀相だ。

「じゃあねー、梨々。ちゃんと送るのよ、大和」

 ヒラヒラと手を振って、苺花がバスに乗って行った。

「苺花、創樹さんと別れたらしいよ」

 大和と並んで歩きながら、梨々は大和に教えた。

「知ってる。創樹さんが言ってたもんな。ひっでー言葉で別れを告げられたらしくって、

創樹さん落ち込んでる」

「ひどい言葉って、どんな?」

「……下手くそなんだって」

「ああ、そう言えばそんなこと、苺花が言ってたっけ」

「苺花って、毒舌だよな」

「ハッキリしてるよね」

「自由人だよな」

「そうだね」

「俺じゃあ、相手にされないよなって最近思う」

「まだ苺花を想ってんの?」

「……まあ…。そういう梨々こそどうなってんの」

 梨々は、ありのままを大和に話した。

「そっか。複雑」

 そうやって話しながら歩いているうちに、梨々の家に辿り着く。

「寄って行く?」

 誘ったら大和がうなずいた。

 玄関に入ると、そこに父の靴があった。

 今日は平日で、まだ5時なのに何でいるの?

「大和、先に部屋に行ってて」

 梨々は大和を行かせると、父の部屋を覗いた。

「お父さん、何してるの」

「ああ、梨々」

 父は旅行バッグに荷物を詰めている。傍にはダンボールに詰まった洋服があった。

「急に福岡に転勤が決まったんだ。とりあえず身の回りのものだけ持って行く」

「長いの?」

「5年したら戻ってくる」

「……梨々は?」

「一緒に行くか?」

 父が梨々をじっと見ている。

 こんな風にちゃんと顔を見たのは久しぶりだ。

「行かない。行ったって友達いないし、お父さんは忙しいでしょ? 一人ぼっちに

なるのは目に見えてるもん。ここにいる」

 今までだって、一人暮らしのようなものだった。

 友達がいる分、ここにいたほうがマシだ。

「そう言うと思ったよ。雅人には頼んである」

 だから何?

 雅人に頼んだって、それで済ませるの?

「友達来てるから、部屋行くね」

 父は、明日発つとか、連絡がどうとか言っていたけれど、知らない。

 イロイロ言われたって行くのは決定なんだし、梨々を置いて行くのも勝手に決めていたんだ。

 勝手に早く行っちゃえばいい。

 今まで通り、多すぎるお小遣いだけくれていればいいもん。

「あ、梨々。もういいのか? お父さん何だった?」

 部屋に入ると大和が振り返る。

 手にはコントローラー。テレビ画面にはドラクエが映っている。

「それ、梨々のゲームなのに、何で勝手にやってるの?」

「あ、ごめん。ヒマだったからさ、レベル上げしたら梨々が喜ぶかと思って。先には

進んでないから大丈夫……」

「もうゲームなんかしないっ」

 梨々はゲームのコンセントを抜いた。

「おい、壊れるって」

「いいのっ」

 梨々はベッドに倒れこんだ。

「お父さんと、何かあった?」

 大和が心配そうな声をかけてくれる。

「福岡に転勤だって。5年も」

「転勤?」

「明日行っちゃうんだって。梨々置き去りなんだよ」

「なんだそれ。梨々まだ未成年じゃん。普通、置いて行く?」

「そう言うひとだもん。梨々のこと雅人さんに頼んだって。けど、雅人さんとは

気まずいんだよ。仕事だって忙しいし、梨々だって頼まれたくない」

 大和が黙って梨々の頭を撫でてくれた。

 慰めてくれているんだろう。

「大和は、梨々のこと可哀想って思うの?」

「一人になるんだし、淋しいだろうし、心細いんじゃないかな」

「別に淋しいってわけじゃないよ。お父さんが梨々のことを持て余したり、

素っ気なくされたりして、愛を感じないのが悔しいだけだもん。お母さんだって、

梨々より男を選んで梨々を捨てた。あんな親たちならいらないんだ。一人のほうが気楽」

 梨々の思っていることが、ちゃんと大和に伝わっているのかわからない。

「俺がいるじゃん、梨々」

「……うん」

「俺なんかいつもヒマだし、いつでも遊べるよ」

「ありがとう、大和」

 胸がじんわり温かくなった。

「あのさ、どうせなら……その、梨々と、その……」

 大和が何か言いたげに、梨々をチラチラ見ながら言葉を濁している。

「俺……苺花が好きだって言ったじゃん? 実はあれさ……」

「あ、そうよ。苺花もフリーになったことだし、大和、告白のチャンスだよ」

 雅人を紹介してとか言っていたけど、梨々は大和の味方だから紹介してあげないつもりだ。

 大和に苺花は手に余るかもしれないけれど、大和が幸せになれるなら協力を惜しまない。

「苺花に告白しなよ」

「……そうだな。うん、そうだよな」

 自信がないのか、大和の元気がなくなった。

 それから大和は帰るまで、何故だか何度も深いため息ばかりついていた。




 
★16stepに続きます。
  
      ~大和ったら、タイミングが……。
  


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