スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【19】慣れない彼氏

チャペルの後ろの席に座って、透弥がウエディングショーを見学している。

昨夜、透弥は理花の部屋に泊まった。そして今朝、ここまで送って来てくれた。

何だか実感が全く湧かないけれど、透弥と付き合うことになった。

見学してもいいよ、と言ったものの、知り合いに見られていると言うのは、

照れ臭さ倍増になるものらしい。

透弥の視線が気になって、ショーに集中できないまま、何とか1日の仕事をやり終えた。

私服に着替えて、透弥が待っているはずの教会の入口まで行くと、いつも

写真を撮ってくれるカメラマンの木田さんが、透弥と何かしゃべっていた。

「木田さん、何やってるの?」

声をかけるとすぐに木田さんは振り返った。

「理花ちゃん、今日も良かったよー、きれいに撮れた」

「そう? 木田さん、腕がいいからだよ」

いつものように笑い合っていると、透弥が間に割り込むようにして言った。

「理花、早く帰ろう」

「あ、うん」

透弥が理花の手をつかむ。

それが思いがけず強い力だったのに、ドキンとする。

「あ、君。さっきの話だけど」

木田さんが、後ろから引き止めてきた。

そういえば、二人は何か話していたっけ。

「さっきの話ってなに?」

聞いたけど透弥は答えてくれない。

しょうがなく木田さんに視線を向けると、木田さんが理花に聞いた。

「彼、理花ちゃんの彼氏?」

「……うん、そう」

ちょっと間が空いてしまった。まだ彼氏、と言う響きに慣れない。

「そうかそうか。理花ちゃんの彼氏か」

木田さんは、嬉しそうな表情で透弥を眺めながら続けた。

「実はね、さっきスカウトしたんだけど、断られちゃったんだよ。

理花ちゃんからも勧めてくれないかな」

「スカウトって?」

「うん。次回企画の冬物ファッションのモデルにって思って──」

「俺、嫌だからな」

透弥は素っ気なく言うと、理花からも木田さんからも顔を背けた。

「ですって。残念だね、木田さん」

「そうか? ほんとに嫌かな?」

「嫌だね」

怒ったように透弥は言うと、理花を引っ張るようにして教会を後にした。

振り向くと、木田さんが困ったような苦笑いでこっちに手を振っていた。

お疲れ様の挨拶もまともに出来なかった。

「ちょっと失礼な態度だったかも」

透弥の車の助手席に座りながら、理花は言った。

独り言だと思われたのか、透弥は何も言わない。

「ねえ、怒ってるの?」

口をぎゅっと結んだまま、理花と目も合わせない透弥は、

どう見ても怒っているようにしか見えない。

「後で、木田さんに謝っておこう」

「何で謝るんだよ。やるもやらないも自由だろ?」

あ、反応した。

「それは自由だけど」

「だったらいいじゃん」

「うん、でも……」

もうちょっと言い方ってものがあるんじゃないかなって思ったことは、言えなかった。

透弥の車の発進のさせかたが、心の中を表しているように乱暴だったからだ。

これ以上言ったら、もっと透弥の機嫌を損ねてしまいそうで、言えないまま、言葉を飲み込んだ。




続く~。。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。