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宇宙いっぱいの愛 第4話


第4話





 涼から呼ばれて、咲良は涼と近所の公園で会った。

 昨日、陸とちょっと気まずくなったことが気になっていて、涼の言葉が頭に入ってこない。

「だからさ、嫌だってこと」

「……あ、ごめん。もう一回言ってくれる?」

 タバコを吸いに外へ出て行った陸を、咲良は迎えに外に出た。

 けれど陸は目を背けたままだった。

 咲良について部屋に入ってくれたものの、話もしないまま寝てしまって、そして朝も陸は黙ったままだ

った。咲良から話しかければ答えてくれたのかもしれないが、話しかけられる雰囲気じゃなかった。

 ──今日帰ったら、いつもの陸に戻ってるといいな。

「って、聞いてんのかよっ、咲良!」

「あ……」

 ダメだ。

 涼の話が全く聞けない。

「ごめん。ちょっと悩みが……」

「悩み? どうしたんだよ、悩みがあるなら聞くよ」

「ううん。お……女の秘密の悩みだから、涼くんには言えない」

 咄嗟についた嘘だけど、涼は「そっか」なんてうなずいて納得してくれた。

 咲良は気を取り直して、涼に言った。

「もう一回言って?」

「ああ」

 二人で並んでベンチに座っていた。

 咲良の右手を、涼がそっと握る。

 咲良もチラッと涼の横顔をうかがった。

「だから、嫌なんだ。咲良が男と住んでるの」

「うん……」

 その話だよね、やっぱり。

「嫌なんだけど、咲良が同居を解消するならオレと別れるって言ったじゃん? だから、別れられるくら

いならオレ…ガマンする。せっかく付き合えたのに、簡単には手放せない」

「いいの?」

「いいよ。あいつとは何でもないんだろ? ただの同居人ってだけだろ?」

 涼が咲良の顔を覗き込む。

 そこまでして自分と付き合っていたいんだろうか。と咲良は思った。涼のことを好きだとまだ思ってい

ないのに、それでもいいのだろうか。

「一緒にいたいんだ、咲良と」

 真摯な目で訴えられる。

「私……中途半端な気持ちで、涼くんの告白に応じた。取り敢えずでいいって言ったから、うなずいたん

だよね」

 土下座なんかされたから、しょうがなく。

「こんな形だけでいいの?」

「いいんだよっ」

 涼は、咲良を繋ぎ止めようと必死になっている。

 涼の気持ちはわかる。

「友達だって、一緒に遊んだり過ごしたり出来るんじゃない? 一緒にいて、私が涼くんを好きって思え

たら改めて付き合おうよ」

「ヤダよっ!」

 涼は子供のように大きく首を横に振って、唇をぎゅっと噛んで咲良を凝視する。

「友達なんか言ってたら、咲良他に彼氏出来るかもしんねーじゃん。陸ってヤツと一緒に住んでるんだ

し、アイツのほうが好きになる可能性だってあると思う。そしたらオレの入るスキなんかなくなる。一緒

に住んでるヤツに勝てる自信ねーよ。嫌だからな、別れない。絶対に別れないんだからなっ!」

 涼は一気に自分の気持ちを告白してしまうと、脱力したようにうな垂れた。

 形だけでも恋人同士でいたいんだろうか。

 付き合っている相手がいたって、他の人に心が奪われることだってあるのに。

「咲良、本気で好きなんだよ? 咲良がファミレスにバイトに来た瞬間から。やっとここまで来れたの

に、簡単にオレのこと捨てるなよ」

 懇願するように言われると、涼に流されそうになる。

「他に好きなヤツがいないなら。もう少し傍にいさせて欲しいんだ。オレ、頑張るからさ。咲良の理想の

男になるから、だから……」

 涼にだってプライドがあるだろうって思う。なのに、情けないくらい咲良に縋ってくる。

「うん。わかった」

 また断れなかった。

 また流されるように、咲良は涼と続けることを約束した。

「オレさ、ダメなとこばっかりかもしれないけど、頑張るからなっ」

 出来るだけ、涼を見てあげようと思った。涼のいいところをたくさん見つけていれば、きっと好きにな

れる。






「あれ? 陸、いないの?」

 帰った部屋は、真っ暗だ。

 遅くなるとは聞いていない。と言うより何も話していないんだった。

 帰りに夕食の買い物をしてきた。

 スーパーの袋をテーブルの上に置くと、咲良は中から買ってきた品物を取り出す。

 今日のメニューは、ちらし寿司と茶碗蒸しだ。

「まずは茶碗蒸しのダシをとるか」

 咲良は食品棚から椎茸を取り出し、水を入れたボウルに入れる。

 米を研いで、炊飯器にセットしてから錦糸卵を焼いた。

 そうしているうちに、陸が電話をかけてきた。

『悪い。バイトの仲間に誘われてさ、今日、飲み会になった』

「ええーっ、もう用意してるのに! もうせっかく……」

『しょうがねーじゃん。ちゃんと連絡したからな』

「もうっ、り──」

 陸は咲良の言葉を遮るようにして、電話を切ってしまった。

「なによ。電話するなら、もっと早くして欲しいよ」

 でも、連絡くれるだけ、いいのかもしれないと思った。

 それでも作りかけた夕食は、自分のためだけには、もう作る気がしなくなった。

 作りかけの料理をそのままにして、咲良はベッドに潜った。

 目をつぶっていたら、いつのまにか眠ってしまったらしく、玄関のドアが開く音で目が覚めた。

「たらいま~って。もう寝てるって」

 酔いの回った口調で陸は言うと、咲良の寝ているベッドに入ってきた。

「ちょっと陸! 陸はあっちでしょー」

「いいじゃん一緒に寝よ」

「陸!」

 酔っ払った陸を見るのは初めてじゃないけれど、こんな風に絡んでくることは今までなかった。

「咲良ちゃん……」

 陸に体を抱きしめられる。

「や……陸、放してっ」

 両手でぐいっと押し退けたら、陸がベッドから落ちた。

「う~ん……」

 落ちたままの体勢で、陸は眠ってしまったようだった。

「もう。しょうがないなー」

 咲良は陸のふとんを敷いてから、陸を運んだ。

「あーん。重いっ」

 引きずるようにしてやっと陸を寝かせると、そのままにしていた作りかけの料理を片付けた。





 翌朝、咲良は朝食を作らなかった。

「咲良、あの、ごめん」

 朝食の用意されていないテーブルを見ながら、陸が謝った。

 咲良が怒っていると思ったんだろう。

 怒っているわけではなかったけれど、素直に許すのも癪に障る。

「怒ってるんだよな? 昨日のこと」

「ふーんだ。知らない」

 咲良は陸と目を合わせずに、ふんっと顔をそむける。

「ホント悪かったよ。機嫌直せよ…な?」

「酔っ払って抱きついてきたくせに!」

「ええっ、嘘だろ。覚えてない。けど、それだけだろ? まさかそれ以上のことは……」

「さあね。早く学校行きなさいよ!」

 怒っていると言うより、ちょっとした反抗心。照れ隠しだ。

「咲良は?」

「今日はお休みするのよ。陸のせいで寝不足なの。頭が痛いんだもん」

 咲良は言って、ベッドに直行した。

 きっと陸は「大丈夫か?」って心配してくれるはず。

「そっか。じゃあ俺行くな。ホントごめんな?」

 なのに陸は、咲良の期待を裏切って学校へ行ってしまった。

「もう!」

 咲良は携帯を開き、陸にメールを送ってやった。

『陸のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ

バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ……』


 画面いっぱいに「バカ」が並んだところで、送信した。

 こんなことをやって、子供っぽいと思われるだろうけど、それでも良かった。

「はー。学校行こう」

 本当は頭なんか痛くなかった。

 陸に心配して欲しかっただけだ。

 なのに、陸は逃げるように学校へ行ってしまったんだ。

 学校で陸をつかまえて、メールの反応を確かめたいと思った咲良は、陸を追いかける

ようにして家を出た。

 






第5話に続く
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