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宇宙いっぱいの愛 第7話


第7話



「あれ、竜輝先輩だけですか?」

 てっきり陸がいるものだと思っていたのに、珍しく竜輝がひとりで座っている。

「おー、咲良ちゃん。久しぶり」

「こんにちは」

「今までなにやってたんだよ」

「彼氏と……ちょと修羅場になってて。でも結果、別れましたけどね」

 咲良は正直に、笑顔を作って竜輝に知らせた。

「そうか、別れたのか。陸も咲良ちゃんがサークルに来なくなって心配してたぜ」

「心配かけちゃったんですね。悪かったな」

「今、俺さあ、陸と一緒に住んでるだろ? 何かアイツ落ち込んでるみたいだからさ、こうして俺もサー

クル活動をやってやってるわけだ」

「陸のためですか?」

「そうそう。もともとアイツに無理やり勧誘されたようなもんだろ? 宇宙って正直あんまり

興味ないんだ」

 そうなんだ。

「陸ならもうすぐ戻ってくるだろ。ジュース買いに行ってるだけだから」

「会うの久しぶりだから緊張しちゃいますね」

「ふーん。あ、そうだ。隠れて脅かしてやれば? 陸のこと」

 竜輝は悪戯っぽく笑うと、咲良の返事も聞かずに、教室の隅にある掃除道具入れに咲良を押し込んだ。

「やだ、先輩。こんなところに……」

「いいからいいから。あ、帰ってきたっ」

 教室のドアが開くのと同時に、竜輝が掃除道具入れのドアを閉めた。

「やっぱ、今日も誰も来ないんだな」

 陸の声がした。

「そうだな。サークル活動の意味ないよ。陸は個人的にいろいろ研究してるけどさ、一人じゃ孤独だよ

な、やっぱ咲良ちゃんも一緒がいいだろ」

「咲良?」

「そうそう。最近彼女、来ねーよなー」

 ここにいることを知っているくせに、竜輝はとぼけている。

「星の研究なんかより、彼氏と遊ぶほうが楽しいんだろ」

 そっけなく陸が言った。

「気になってるくせに。そんな何でもない風を装うな」

「何言ってんだ。変だぞ、今日の竜輝」

 咲良は出てゆくタイミングをつかめないまま、二人の会話を黙って聞いていた。

「俺さぁ、陸の正直な気持ちが知りたいんだよな」

「正直な気持ちってなんだよ」

 明らかに不審そうな陸の口調。

「実はさ、そろそろハッキリしたいんだよな」

「ハッキリって……何だよ」

「陸にも誰にも秘密だったんだけど、俺、咲良ちゃんが好きなんだ」

「は……今、何て言った?」

「だから、俺は咲良ちゃんが好きだって言ったんだ」

 咲良は驚いた。

 思わず声を出しそうになって、慌てて口を手で塞ぐ。

「好きって……おまえ本気なのか?」

「本当だ。だから気になるんだよ。陸が咲良ちゃんを好きだったら、俺も考えるしな」

「あいつ、彼氏いるぞ」

「ああ、それなら大丈夫。もう別れたって聞いたから。だから告白しようかなって思ったんだ。失恋して

落ち込んでる咲良ちゃんの心のスキマにつけこむつもり」

「なっ……」

「けど、陸の立場もあるし、一応了解取るべきかなって思ったもんだから。で、本心はどうなんだ?」

 俺と陸はライバルなのか? と、竜輝は言った。

「……なんだよ、勝手に告白すればいいだろ」

 陸の言葉に、咲良は胸が痛んだ。

 陸は自分のことを、どうでもいいと思ってる。

 竜輝と付き合ったって、別にどうってことないんだって、思い知らされた気がした。

「そっか。わかった。じゃあ、勝手にさせてもらう」

 竜輝の声が近づいて来たかと思ったら、いきなりドアが開けられた。

「聞いていたとおりだ。咲良ちゃんの気持ちを聞かせてもらおうかな」

 目を上げると、咲良を見下ろす竜輝とバッチリ目が合った。

「好きなんだ、咲良ちゃん」

 声は真剣だけど、目が笑ってる。

 もしかして、冗談? 演技だろうか。

「さ、出ておいで」

 竜輝に腕を引っ張られて、咲良は掃除道具入れから外に出る。

 狭いところにずっといたし、掃除道具の匂いに参っていたから、外の空気が新鮮に感じる。

 ふと見ると、陸が唖然とした顔をして、こっちを見ていた。

「陸……」

「な、何でいるんだよっ!」

「ごめん。まさか、こんな展開になるなんて……」

「俺が隠れてろって言ったんだよ」

 竜輝が咲良の言葉を引き継いだ。

「おまっ、知ってて俺に気持ちを言わせようとしてっ」

 陸は動揺しているようだ。

「そうだよ。けど陸は俺に勝手に告白すればいいって言った。その言葉、撤回するなら告白は待ってやっ

てもいいけど?」

「撤回……って……」

 陸は唇をぎゅっと噛んだ。

「いいのか? 陸は俺と咲良ちゃんを応援してくれんの? 咲良ちゃんが誰と付き合おうが、どうでもい

いわけ?」

 竜輝は、陸を煽っているようだ。

 でも、陸は黙ったままで、何も言ってはくれない。

 ヤケクソで竜輝の告白を受けてしまおうかと思った。けれど、ダメだ。

 もし、竜輝が真剣に思ってくれているなら、軽々しく受けてはいけない。

 すでに涼を傷つけてしまっているんだ。

 相手に気持ちがない以上、簡単に応じてしまってはいけないのだ。

「咲良ちゃん、陸は何も言わないようだよ。どうする? 俺と付き合う?」

「あの、ごめんなさい」

 咲良は頭を深く下げた。

「好きな人がいるんです。彼とダメになったのもその人が忘れられないからなんですっ」

 しばらくの間、誰も言葉を発しなかった。

 ゆっくり顔を上げてみると、笑顔の竜輝が咲良を見下ろしていた。

「竜輝先輩……」

「いいよ。知ってたから」

 竜輝はサラリと言うと、咲良の頭を軽く撫でた。

「じゃ、今度は咲良ちゃんがそいつに告白する番だな。大丈夫、きっとうまくいくよ」

 じゃあ頑張って、と竜輝は言い残して教室を出て行った。

 咲良は、ゆっくり陸を振り返る。

「あ、ああ、俺も帰ろうかな」

 頭をぐしゃぐしゃかき混ぜながら、陸も出て行った。

 教室にひとり取り残された咲良は、深いため息を落とす。

 他に好きな人がいるなんて言ったことを後悔していた。

 アレじゃあ陸が誤解してしまう。

 ちゃんと、陸が好きだって、どうして言わなかったんだろう。

 でも、言ったところでどうにもならないだろう。陸は竜輝の告白を止めなかった。

 咲良に構いもせず、自分も出て行ったんだ。

 せっかく涼と別れたのに、そんなことは何も関係なかったってことだ。

 告(い)わなくて良かったのかもしれない。

「はあ……」

 咲良はもうひとつため息をつくと、帰るために教室を出た。

 中庭を抜けると、竜輝と出会った。

「あれ? 咲良ちゃんひとり?」

 不思議そうに竜輝に聞かれた。

「陸は?」

「帰りました。竜輝先輩が出てった後すぐに」

「そっか。じゃあ、告白しなかったんだ?」

「え……」

「咲良ちゃんが好きなのって、陸だろ?」

 いつ、気持ちがバレたんだろう。

「どうして……」

「そんなの最初からわかってたよ。咲良ちゃんの陸を見る目は、恋する目だった」

「嘘、最初からだなんてそんな……」

 そんなはずはないと思う。自分の気持ちに気付いたのは最近のことだ。最初からなんて、絶対違う。

「嫌いな男と同居しないだろ? 嫌いな男のあんな話、熱心に聞かないだろ」

 それは、陸がいい人だと思ったからだ。それに宇宙の話は咲良も興味があった。

「ま、いつからなんて、この際どうでもいいよな。でもなー、陸のやつ、逃げるなんて根性なしだな」

「あの、先輩」

 咲良は言いにくそうに口を開く。

「竜輝先輩は……私のこと」

「ああ、それ、嘘。ごめん、陸を煽りたかっただけなんだ。本気にしたならごめん、謝る」

 嘘で良かった。と、咲良はホッとした。

「俺さ、陸も咲良ちゃんが好きなんだと思ってたんだよな。けど、あいつ俺の芝居に乗ってこなかった。

芝居がかってたのがバレたのか、それとも俺の思い違い? 陸は……」

「いえ、いいんです、もう」

 咲良は大きく首を振って、竜輝の言葉を遮った。

「陸が私をなんとも思ってないって分かって、スッキリしました」

「ホント?」

 竜輝に顔を覗き込まれる。

「ホントって言うか……。もういいんです」

 竜輝は困ったような顔をして話し始めた。

「陸とは友達だし、サークル仲間でもある。陸と咲良ちゃんが同居始めてさ、これで二人がうまくいくな

ら友達として嬉しいことだと思ってた。なのに、咲良ちゃんに彼氏が出来たって聞かされただろ? 陸と

の同居も解消になった。どういうことかなって、陸を観察してたんだ」

 竜輝に「座ろうか」と、ベンチに誘われた。

 横並びで座ると、竜輝は話をまだ続ける。

「咲良ちゃんは、彼氏と付き合ったけど別れた。その原因が陸だったわけだろ? 陸が好きで忘れられな

いから別れた。なのに簡単に諦めるなよ」

 ちゃんと告白しろ、と竜輝は咲良に詰め寄った。

「でも、振られるのわかって……」

「言わないと後悔するぞ? 誰と付き合っても、あの時どうして陸に気持ちを伝えなかったんだろうっ

て、絶対後悔するんだからな。当たって砕けろってことわざあるだろ?」

「砕けろってことですか?」

 口をとがらせて竜輝に抗議する。

「無駄な告白になりますっ」

「ならないよ。言わずにウジウジ悩んでるより、潔く砕け散ったほうが、ずっとスッキリ

するってもんだよ?」

「そうなんでしょうか……」

 咲良は考えた。

 咲良がお気に入りのバラエティ番組で、好きな相手に告白して、一緒に日本に帰るってヤツがある。

 みんな告白して、振られてもいつもスッキリしてるな。

「上手く行けば、一緒に日本に帰れるんですよね」

「え……日本?」

 あ、しまった。違った。

「まあ、上手くいく可能性もゼロじゃないと思うよ」

 竜輝は言った。

「俺の読みが正しければ、陸はさっきいきなりで躊躇(とまど)ってただけだ。もう一回、咲良ちゃんが

真剣に言えば、聞いてくれるよ。なんなら実力行使すれば?」

「実力行使?」

「そう。アイツさ、咲良ちゃんと住んでても手が出せないヘタレなヤツなんだよ。だからここは咲良ちゃ

んのほうから陸を押し倒せ!」

 竜輝はそう言って笑った。


第8話に続く
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