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恋にとどくまで~梨々の恋 19step

19step



 家に帰ると、玄関の前に大和が座り込んでいた。

「大和、梨々を待ってたの?」

 声をかけると、大和が顔を上げて梨々を見た。

「うん。待ってた」

 大和は言って、立ち上がりながらジーンズについた砂埃をはたく。

 チラリと視線を移すと、大和が乗ってきたらしい自転車が止めてあった。

 すでに私服だし、1回帰ってから自転車で来たのだろうとわかる。

「ドラクエ……。魔法のじゅうたんがどこにあるか、わかんねーって梨々が言ってたじゃんか。教えてや

ろうと思ったんだ」

「ありがとう。そうなの、見つからなくて困ってた」

 笑って大和を部屋にいれようとしたが。

「あのさ、梨々」

「どうしたの、大和。早く入りなよ」

 玄関先で靴も脱がないまま、大和が梨々をじっと見つめる。

「俺と付き合って、梨々」

「……え?」

 大和の言った言葉の意味が、すぐには理解出来ず、梨々は固まっちゃった。

「好きなんだっ。彼女になって、梨々」

「え……あっ」

 腕をぐいっと引っ張られたかと思うと、梨々の顔と大和の身体がぶつかった。

 背中に大和の腕が回って、梨々は大和に抱きしめられたって気付いた。

「ウソなんだ」

「え……え??」

 何が何だか混乱してた。

「苺花をスキって言ったの。あれ、嘘だったんだ。ホントは梨々が好きだったんだけど、梨々は涼ってや

つのことしか眼中になかっただろ。俺の気持ちなんかちっともわかってない。そんなのに、梨々が好きな

んか言えなくて、つい照れ隠しだったんだ。苺花は好きじゃない。梨々の友達だから話はするけど、そう

じゃなかったら苦手なタイプだし話しもしてないよ」

 一気に大和に告白……だよね。告白されちゃった?

 いくら鈍感な女の子でも、こんなに抱きしめられて好きって言われれば、大和の気持ちに気付くよ。



 ……ん?



 鈍感な女の子?



 苺花が言ってた。



 ……大和。


「あ……」

 苺花が言ってた……大和の気持ちに気付かない……鈍感な女の子って……。

「梨々だったのっ?」

 気がついて、びっくりして梨々は大和の身体を両手でぐいーっと押した。

 そして目の前で梨々を見下ろしている大和をじっと見つめる。

「大変だよ、大和」

「え……大変?」

 大和が首をかしげる。

「そうだよ、苺花は大和が好きなのよ」

「へ……?」

「良かったじゃん、苺花と両想い……って、あれ?」

 梨々、再び混乱した。

「あの、何言ってんの、梨々」

 大和に怪訝そうな目で見られる。

「……そっか。そうだったんだ」

 頭の中で、整理した。

 苺花が好きなのが、大和。

 大和が好きなのが、梨々。

 梨々が好きなのが、涼。

 涼が好きなのは、……?

「あれ?」

 再び、梨々はパニックになった。

「梨々、涼が好きなのが誰かわからないの」

「……なんだよそれ。意味わかんねー。それより梨々、俺さー今、梨々に告白したつもりなんだけど、届

いてない?」

 梨々から時々視線を外すような仕草で、大和は怒ったような表情で続ける。

「苺花の話とか、涼の話は今どうでも良くね? 俺の話をもっと真面目に受け取って欲しいんだけど、無

理?」

「うん。それはそうなんだけど」

「俺の告白なんか、考えるまでもないってこと? それよりもっと大事なこと、梨々は考えてる。そりゃ

そうだよな。俺にとってはずっと考えていた気持ちだけど、告われた梨々にしてみればいきなりだし、俺

は苺花を好きだと思われていたんだし、驚くのも無理ないし……」

 大和がイロイロ説明している言葉が、梨々の耳を通り抜ける。

 ちっとも理解出来ないくらい、梨々は混乱していた。

「で、結局のところ俺は梨々に告ったものの、砕けるんだろ、涼が好きなんだし、それは承知の上だっ

た。言わずにいるの、苦しくなったんだ。友達のままでこうして遊んでるのも楽しいけどさ、辛いんだ。

だからいっそ、当たって砕けろって気持ちだった。だからいいよ。言ってすっきりしたし。梨々に俺を好

きになってもらえる確率、ゼロに等しいってわかったし」

「……大和、梨々は……」

「涼ってやつの返事、もうすぐもらえるんだろ? いい返事だといいな」

 大和は泣きそうに一瞬顔を歪めたけれど、無理やり笑顔を作ると、じゃあなって言って自転車に乗って

帰ってしまった。

 大和の姿が見えなくなると、何だか寂しくなった。

 梨々って鈍感。

「梨々」

 梨々の心の声と、誰かの言葉が重なった。

 声のしたほうに顔を向ける。

「涼……」

 一ヶ月ぶりに見る涼の顔。

 梨々の目の前に、梨々の好きな涼がいる。

「悪い。声かけられなかった。なんか、大事な話をしていたようだったから」

「いつからいたの?」

「梨々が帰ってくる前から、そこに」

 涼が指した方向に、涼の車が止まっている。

「声は聞こえなかったけど、抱き合ってたのは見えた」

 ずっと見られていたんだ。

「見ないでよ」

「見えたんだよ。車に気付けよ」

「気付く前に教えてよ」

「邪魔しちゃ悪いって思って、遠慮したんだ。あれが大和?」

「大和だよ」

「付き合ってんの? 俺が待てなくて付き合っちゃった?」

 涼がそう思うのも無理はない。

 だって、大和に抱きしめられていたんだ。

「付き合ってないよ。大和が勝手に抱きしめただけだもん。梨々のことが好きなんだって。でもね、梨々

は涼が好きだからちゃんと断ったんだからね」

 梨々は、涼が口を挟むスキがないくらいに一気に捲くし立てた。

「いいじゃん、もう断ったんだし。それより涼、梨々に会いにきたんでしょ、返事でしょ、早く言いなさ

いよ」

「会っていきなり言えって? 梨々ちゃん、意外に気が短いね」

「だって、こんなに待たせておいて……その上まだ待たせるなんて、……何とかの生殺しってゆーのよ」

 なんだっけ。

「そうだね。ごめんね、一ヶ月も保留にしてて」

「そうよ!」

 何の生殺しだっけ。

「ちょっと軽くドライブしない?」

「……いいけど」

 嬉しい。涼とドライブなんて。

 大和の告白に驚いたし、大和が帰ってしまってちょっとだけ悲しかったけれど、感傷に浸る間もなく涼

に会えてしまったから、大和のことを考える余裕がなくなってしまった。

 ごめんね、大和。

 大和の気持ちは嬉しかったけど、梨々はやっぱり涼がいいんだ。







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★あ~あ、大和砕けちゃった。
 何とも思っていない男に対して、女の子は時にひどく残酷なのでした。

 次回は最終話。 時間延長(字数延長?)でお送りいたします。

 たぶん大丈夫と思いますが、文字数オーバーになったらもう一話?
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