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【20】彼氏の意味

仕事が終わったあと、理花はぼんやりしていた。

今日は予定がない。

違う、今日もだ。昨日もその前も、この10日間何もなかった。

10日前、透弥と付き合い始めたけれど、それきりだ。

付き合うって、こんなもの?

理花は携帯電話を開いたり閉じたりして、考えていた。

メール送ってみようか、それとも電話しようか。

だけど、何て書けばいいんだろう。

『何してるの?』

『元気?』

それくらいしか思いつかない。

文字を打っては消し、打っては消し、繰り返していたが、急に嫌になってきた。

こんなくだらない内容のメールなんか、無視されちゃうかもしれない。

うるさいなって思われるかもしれない。

透弥は、メールなんか面倒臭いって思ってるのかもしれない。

男のひとって、メールが苦手だって紗夜が言ってた。いかに返信をもらうか、

メール内容を考えるのは大変だって言っていたのだ。

透弥が、メールをよこさないのがいい証拠。

用がないから連絡がないわけで、用があれば連絡が来るはずで……。

だけど、それじゃあ付き合う意味がないように思える。

ただの知り合いレベルだ。

好きなひとには、何でもなくても声が聞きたいとか、一目でも会いたいって思うものよって、

那絵が頬を染めながら話していた表情が印象的だった。

これまで、理花はその感覚が良くわからなかった。

たぶん、これまで付き合ってきた相手が、そんなに好きじゃなかったのだと思う。だからいま、

透弥からの連絡がないことが気になっていると言うことは、透弥のことが好きだと

言うことになるのではないか。

「でも、単に連絡よこさない透弥くんに、イライラしてるだけかもー」

好きを認めるのが何だか不安で、自分の気持ちを声に出して打ち消した。

恋は盲目だとか、恋に溺れるとか、そんなことになったら、どうすればいいのか。

そうなったときの自分は、自分じゃなくなるような気がして、理花は怖かった。




結局、メールも電話も出来ないまま、理花は家に帰ってきた。

アパートに着くと、ドアの前に功至がいた。

「何してるの? 何か用?」

階段を上り、功至の前に立ってから聞いた。

「ああ、急に悪いな。ちょっと聞きたいことがある」

悪いな、と言いながら功至は、ちっとも悪いと思ってないような口調で、理花に言った。

「おまえ、透弥のことなんだと思ってるわけ?」

「何って……」

「付き合うことになったんだろ? 『彼氏』って答えらんねーのかよ」

「だって……」

「だってじゃねーよ。会ってないんだろ? 全然会ってないって透弥が言ってた。メール

ひとつ送ってこないって、どうしたらいいかわからないって悩んでたんだ」

「そ……」

「はっきりじゃべれよ。誤魔化してんじゃねーよ」

答える前に功至がどんどん問いかけてくるから、答える隙を逃してしまう。

何で会ってくれないのか、理花のほうが聞きたいと思っていたのだ。

上から見下ろされ、怒鳴りつけられ、正直怖かった。

こんなところで、大声を出されたら近所の目だって気になる。

だからと言って、部屋の中に入れるわけにはいかない。

透弥とも約束したのだ。

理花は俺の彼女になったんだから、もう他の男を部屋に入れたらダメだよって。

さっさと話を終わらせて、帰って欲しい。

「おまえさ、素っ気ないって透弥が気にしてた」

それは透弥にだって、言えることだと思う。

「あいつ、今まで常に受け身でさ、特に女に関して受け身。けど、おまえに関しては

かなり頑張ってたんだぜ。だから俺も応援しようと思ってるわけだ。なのに、何か上手く

いかねーって落ち込んでる。どうしたらいいかわかんねーって相談受けたんだ。だから、

俺がちょっと間に入ってだな、上手くやってやろうと思った。俺のお節介なんだけど、透弥を頼むよ」

功至の言葉を聞いて、急に理花は心が揺らいだ。

何だか違う。

こういうことって、友達に言ってもらうことなのだろうか。

相談するのはいい。

だけど、それから先は透弥が自分で動くことではないのか。

功至くんに頼まれてもね、と言おう思ったけれど、逆らうと功至に怒られそうなので、

素直にうなずいておいた。

とりあえず、この場を終わらせたい。

「わかった。電話してみる」

納得いかないままだったけれど、功至は「じゃあ、悪いな」と言葉を残し、引いてくれた。

階段を下りてゆく功至を見送りもせず、理花は逃げるように部屋のドアを開けた。

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