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恋にとどくまで~梨々の恋 ファイナルstep

20step



 都市高速に乗って、西の海岸へたどり着いた。

 夜になるとライトアップされるタワーが近くに建っている。

 車を駐車場に止めてから、涼が言った。

「俺ってさ、付き合ったら違ったって言われるんだ。なんか俺、クールなイメージあるみたいなんだけ

ど、実際違うから。軽く付き合えそうとか、遊び相手程度に扱われるんだ。いつも俺のほうがはまって、

本気になったら捨てられる」

 そう言うの、嫌だからさ、と涼は前置きするように梨々に言った。

 前置きはいいから、早く付き合うかどうするかを言って欲しいのに。

 ちょっとイライラしながら、涼の言葉の続きを待った。

「さっき、大和といるのを見たときに、ああ、とっくに大和と出来てたんだって思ったよ。やっぱり一ヶ

月は長かったのかなって、少し後悔して……」

「後悔役立たずなんだから、後悔するくらいならさっさと言えばいいのよ」

 梨々は頬を膨らます。

「後悔……そうだよね。確かに役立たずかも」

 涼は笑って、ホントは先にだけどね、と良くわからないことを言った。

「梨々はちゃんと待ってるのよ。今だって、涼に生殺しなのに、待ってるの。早く言って欲しいのよ」

「待っててくれたんだ、梨々ちゃん」

 うなずくと涼は、車の窓を開けた。

 外の冷たい空気がすーっと入ってきて、わずかにぶるっと震える。

「あ、ごめん、寒かったね」

 再び涼は車の窓を閉める。そして、窓越しにそこに見えるタワーを指差して見上げた。

「あそこの展望台で、結婚式できるんだ」

「結婚式?」

 急に何なの?

 戸惑う梨々に、涼は微笑みかけてくれる。

「あそこで、結婚したいって前に付き合った彼女に言ったんだ」

「……涼が、言ったの?」

「そう。そうしたら鼻で笑われた。夢見すぎだって」

 思い出したのか、涼は遠い目をして苦笑いをする。

 梨々はタワーを見上げた。

 まだ夜と言うには少々明るいが、夜になるとライトアップされるタワーのキレイなことは、見たことが

あるから知っている。

「梨々はどう言う? バカみたいだって笑う?」

「笑わないよ。梨々だって、あんな高いところから夜景を見下ろしながら結婚式なんて、いいなって思う

もん」

「そっか。じゃあ梨々と一緒に俺の夢、叶えようかな」

「へ?」

 梨々は涼の顔を、首をかしげつつ見つめてしまった。

「言ったじゃん、梨々。俺と結婚しようって」

「ええっ」

「驚くなよ。自分のセリフだろ。それともあれは、その場の思いつき? 嘘だった?」

「そそそ……そんなことないっ」

 梨々は大きく左右に首を振る。

「永遠に、俺が好きって言った梨々の声が、あっち行ってる間ずっと頭の中で何度も繰り返し聞こえるん

だ。うるさいくらい」

 涼は、シートベルトを外すと、左手を助手席の背もたれ部分に回してきた。梨々の背中に触れそうで触

れない距離に、涼の温度を感じてしまう。

「ずっと何度もシュミレーションしてた。梨々と付き合ったらどうなのかなって。ずっと考えたよ」

 涼の指が、梨々の髪に触れる。身体がゾクッとする。

 心臓が、飛び出しそうに高鳴っている。

「クリスマスに、俺が彼女に振られて。梨々が遊びにきてくれた。思えばあのときすでに意識し始めてい

たんだろうなって。大晦日の夜に迎えに行ったのだって、物産展のとき、カフェで待ち合わせたのだっ

て、会いたいと思ったからなんだろうなって、今になって思うんだ」

 なのに、そらしてばかりでごめんね、と涼は申し訳なさそうに謝ってくれた。

「自信がなかったんだ。いや、自信って言うより、勇気かな? 次の恋に踏み出す勇気。それから、梨々

を信じきれていなかった。言い方は悪いけれど、この一ヶ月間、試したってことになるのかもしれない。

梨々ちゃんの気持ちも。そして俺自身の気持ちも」

 梨々から見れば、大人に見えて、何でも余裕でこなしているようにしか思えなかった。カッコ良くてカ

ッコイイ涼にも、こんな一面があったなんて。

「もう一回、確認していい?」

 涼の目が、じっと梨々の目を捉える。

「大和とはなんでもないんだな?」

「ないっ」

 大きくうなずいた。

「俺が、一番?」

「そうだよ、涼が梨々の一番っ」

「ずっと?」

「ずっとずっと永遠に一番だって、い、言ったじゃん」

 涼の顔が、梨々に近くなる。

 ぐっと抱き寄せられ、少しでも顔を動かせば涼に食べられてしまいそうな距離だ。

「梨々、俺……束縛するよ?」

「い……いいよ。ひ、紐でぐるぐる巻きにして縛ってもいいよ」

 声がメチャクチャうわずってしまう。

「いつも会いたいって言うよ? ウザイって言われるくらいしつこくても平気?」

「平気だよ、涼」

「ホントに、一番……だよな?」

「一番!」

 しつこく確認され、梨々もそれにちゃんと答えた。

「じゃあ、梨々。約束しよう。あのタワーで俺と梨々、結婚式しよう」

「け……結婚っ? ほんとなの?」

 涼からプロポーズだよ。何これ。夢?

「これ、交換じゃなく改めて買ったんだ」

 梨々の指に、涼が指輪をはめてくれた。

 クリスマスにもらいそこねたネックレス。それがこんなカタチで返ってくるなんて。

「いつだって、付き合うときは真剣なんだ。結婚したいって考える。なのに、いつだって、叶わないまま

振られ続けてきたんだ。もう嫌なんだ、そういうの。梨々も本気じゃないなら断るのは早めにしろよ。じ

ゃなきゃ、俺、放さないよ?」

 涼の左手が梨々の後頭部を引き寄せる。と同時に右手も背中に触れた。

 涼の腕の中に梨々……入ってる。

「梨々、答えは?」


「あ……有難く受けて立つに決まってるじゃん。梨々の本気なんか、涼よりもっとずっとすっごい大きい

んだから。涼こそ、梨々に束縛されて逃げられなくなって、後悔しないようにしなさいよねっ」

「わかった。梨々の本気、全部もらうね」

 涼が、梨々の頭ごと抱きしめてくれた。

 てっきりキスしてもらえるかと思っていたのに、外れちゃった。

でも、梨々の耳から聞こえてくる涼の規則正しい鼓動が、ちょっとだけ早いと感じて、何だかとっても幸

せな気分になった。

「あのね、涼。梨々……」

 涼の胸に抱かれたまま、梨々は涼に伝えた。

「進路調査票……書かなきゃいけなくて。それで、梨々……」

「進路?」

 涼に、身体を離されてしまった。不審げに見つめられる。

「進学するの、やめたくなった。梨々……それに涼って書こうかな」

 こんなことを言えば、笑われるか呆れられるかのどちらかだと思うのに、涼はそのどちらとも違う反応

で返してくれた。

「いいよ。俺に永久就職って、書いとけ」

 冗談ぽく涼が笑う。




 両親に放任されて、ずっと寂しかった。



 だけど、もうひとりじゃない。



 ずっと憧れていた涼の腕の中で、梨々は幸せな気持ちでいっぱいに満たされていた。

 涼の全部を独り占め出来るんだ。

 これからずっと、一生涼を見ていても怒られないんだ。

 こんな幸せなことが、夢みたいなことが現実になった。

「梨々の恋、涼に届いちゃったね」

 梨々が言うと、涼は俺の恋だってそうだよって笑ってくれる。

「これからが大事なんだよな。想いが通じ合うことばかりにとらわれてたけど、これから、どう続けてい

くか。長く一緒にいると、嫌なことにもきっと突き当たる。それをどう乗り越えるかが大事なんだよな」

 物語だと、ここでハッピーエンドなんだけど。

梨々と涼は、ここからもちゃんと続編が待っているのだ。
 
たいてい、続編は何らかの事件が起こるんだ。だけど、たいてい、それを乗り越えて、より深いつなが

りがもてるんだ。


 そんな風になりたいと思う。


 そしていつか、梨々はきっと、幸せな家庭を作る。


 涼と一緒に。


 ふたりだったら、きっと幸せにも届くだろう。




 涼がくれた指輪が、幸せな未来を約束するよって言っているように、梨々の薬指でキラリと光った。




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