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恋にとどくまで~苺花と大和(1)

恋にとどかなかった大和の続きになります。
今回は苺花視点ですが、大和視点と交互に書いていこうと思っています。


苺花



タクシー待ちの列に大和を並ばせて、私は駅前広場に設置されているベンチに座って待っていた。

 携帯で遊んでいる振りをしながら、じっと大和の背中を盗み見ていた。

 親友の梨々が好きで、私が見ていることに全然気がつかない鈍感な男。

 梨々に失恋し、結婚したっていうのにまだ気持ちを引きずっている未練がましい男。

 優しいだけが取り柄みたいな、そんな大和だけどずっとずっと大好きなんだ。

 携帯の待ちうけ画面に目を戻した私は、小さく呟く。

「こっちなんか、ちっとも見てくれないんだもん」

 言い寄ってくる男はたくさんいた。可愛いと言われ、ちやほやされる。

 なのに私は、ちやほやの「ち」さえもしてくれない大和が気になった。気になってずっと見ていたら、

いつの間にか自然に探すようになっていて、そして大和の視線の先にいつも梨々がいることに気付いた。

 その瞬間、大和が好きだと自覚した。

 3年間の片想い。

 叶うときは来るんだろうか。

「苺花?」

 自分を呼ぶ声に顔をあげると同時に、携帯を閉じた。

「帰ったんじゃなかったのか」

 二次会の帰りらしい雅人だ。

「大和が落ち込んでたから、カラオケ行ってたんだよ」

 嘘じゃない。本当に落ち込んでいる大和を励ましてやりたかった。

「今、タクシー待ちしてるんだ」

 言って、大和を指差した。

「そうか。飲んでるのか?」

「少しだよ。少しだけしか飲んでない」

 雅人は、未成年の私がお酒を飲むと、いい顔をしない。

 雅人は、少し顔をしかめると、大和のほうに向かって歩き出す。

 私も後をついて大和のそばまで行った。

「遅くまで苺花が引っ張りまわして悪かったね」

 雅人は、私のせいにして大和に謝る。

「ありがとう。苺花は僕が連れて帰るから」

「あ、じゃあお願いします」

「大和くんにお願いされるのは、変だけどね」

 せっかく頭まで下げている大和に向かって、雅人が笑いながらそう言った。

 大和に別れを告げると、雅人は電話でタクシーを呼んだ。

 手馴れた風にタクシーを呼ぶ雅人を、無性に嫌だと感じた。





 一緒にタクシーに乗ってからしばらくすると、雅人の説教が始まった。

「今までは梨々と3人だったから許したけどね、2人きりで大和くんと会うのはやめて欲しいな」

 それって、嫉妬だろうか。

「大和は遊び友達だもん。これからも遊びたい」

「遊びたいって、子供みたいな……」

「子供みたいな遊びしかしないよ。雅人は、大和といつ間違いが起こるかって心配してるんでしょ? 平

気だよ、大和だから何にも起こらない」

「ふうん。随分信用があるんだな、大和くんは」

「あるよ、あいつヘタレだもん。女の子に指一本だって触れられないくらいなんだからさ」

「今はそうでも、いつ……」

「強制しないでよ。束縛されるのは嫌」

 雅人は私の行動を干渉しない。干渉しないで自由にさせてくれる。そう言うところが楽だったのに、何

を今さら言ってるんだろう。

「ずっと気付かない振りをしようと思ったんだが」

 雅人が窓の景色を見つめたまま、言葉を続ける。

「苺花、僕と付き合っている間、何回浮気した?」

「浮気? してないよ、そんなの」

 どきんとした。ばれていないかと思っていたのに、コイツ気付いていたんだ。

「僕を騙せると思ってた?」

 ああ、嫌だな。

 今まで黙認してたなら、今さら言わないで欲しいよ。

「苺花?」

 きつく唇を結んで首を振る。

 言わない言わない。浮気なんてやってないんだ。

 そうこうしているうちに、タクシーが止まった。

「着いたよ、降りなさい」

「ええ、ここ私のうちじゃないじゃん」

 勝手に雅人のマンションに連れてこられた。

「いいから、降りろ」

「もう、怒んないでよ。ハゲちゃうよ」

 私の冗談にも笑えないくらい、雅人は怒っているらしかった。

 しぶしぶ降りて、マンションの部屋に入る。

「苺花が一年以上も僕と付き合ってるのが、すごいねって梨々が言ったんだ」

 いきなり雅人はそんなことを言い出す。

「苺花は冷めやすいのに、雅人さんすごいねって。僕がどんな気持ちでそれを聞いていたかわかるか?」

「知らないよ。言ってくれない気持ちなんかわかりませんよ」

 ふふんっとそっぽを向いた。

「苺花が、他の男と浮気しているのを見逃してやっていたから続いてたんだろ。ずっとガマンしてたん

だ。梨々は、僕が苺花に愛されているんだと思っている。どんなに虚しいか、わかるか?」

 だから、わからないって言ってんじゃん。

「気付いてたなら、早く言えばいいでしょ? 今さら何よ」

「言ったら一ヶ月で終わってたよ。僕は真面目に付き合って行きたかったから何も言わずにいたんだ。な

のに、その後も全然落ち着いてくれない。何が不満なんだ? 言いたいことがあるならちゃんと言ってく

れよ」

 そっちこそ、言いたいことがあったなら、早く言えよって感じ。

 雅人は適当に遊ばせてくれるから、とりあえずキープだったけど、こんな風に責めたてられるんだっ

たら終わりにしたい。

「別に嫌なところも不満もなかったよ」

「大和くんじゃないからだろ」

「え……」

 雅人と目が合う。言い逃れは許さないって目つきだ。

「携帯の待ち受け、見たんだ」

「もう。勝手に見ないでよ!」

 信じられない。

 きっと私の通話記録もメール内容もチェックされていたんだ。

 待ち受け画面には、大和の姿を登録してある。

 こっそり盗み撮りした大和は、私とは目が合うことはないけれど、どうしても消せないんだ。

「見たくて見たわけじゃない。偶然見えたんだよ」

「偶然なわけないよ。携帯は開かなきゃ見えないでしょ」

「見たとか見ないの問題じゃない」

「へ理屈で責め立てようって魂胆ね。見たんでしょう?」

 持っていた引き出物の入った袋を、雅人目がけて投げつけた。
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