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【21】彼の友達

納得してないと、なかなか行動に移せないものらしいことに、

今さらながら理花は気づいた。

どうして私から連絡取らなきゃいけないのよ。

考えてみれば、理花も常に受け身だった。

男が好きだと告白してきて、付き合いが始まる。

中には、俺のこと好きじゃなくてもいいから、とりあえず付き合ってみようと言われて

始まったこともあった。

好きじゃないのに付き合うのもどうかと思うけれど、相手がどうしてもと言うし、

暇つぶしでもいいと言うから応じてただけなのに、だんだん相手の要求が大きくなる。

そうなると束縛や干渉がうっとおしくなって、メールの返事をするのも面倒になる。

もう俺が嫌いになった? なんて聞かれたらもうダメだ。

最初から好きじゃない、とも言えなくて「ごめんね」と言って終わりにする。

そんなことの繰り返し。

男なんか面倒なのだ。

面倒だから、いらないって思うのに……。

「ああ、イライラする!」

理花は立って冷蔵庫を開けた。

そこには週末に飲む予定の赤ワインが入っている。

今日はまだ週末ではないし、明日もウエディングショーが入ってるけれど、飲まずにはいられない気分。

コルクを空けて、ワイングラスにワインを注ぐ。

キレイな赤色、おいしそうな香り。

それだけでも心が落ち着いてくるのがわかった。

ワインを飲み始めてすぐ、来なくていいのに樹が来た。

「なんか用?」

思い切り不機嫌な顔で言ってやったら、樹はひるんだ様子を見せた。

けれど、それは一瞬のことで、樹は笑顔を作りながら手に持ったいつものスーパーの袋を理花に見せた。

「ヤケ酒飲まねー?」

「ヤケ酒? 誰がヤケになってるって言うのよ!」

確かに不機嫌だけど、何で樹にバレているんだろう。

「いいからいいから。ワイン好きだろ? あ、もう飲んでるのか?」

部屋の中を覗くようにして、樹は強引に部屋に入ろうとする。

「入っちゃダメ。入っていいなんて言ってないんだからね」

「気にすんな。俺と理花の仲じゃん。いまさら遠慮すんなよ」

「そこまで気を許してるわけじゃないし」

「そんな口尖らせてると、キスするぞ」

「え……」

「あ、ごめん。今のは冗談。引いたよな。悪い悪い」

悪いと言いながら、全く悪びれた素振りも見せず、樹は理花に近づいて来る。

「ダメだってば! わたしの唇は高いんだからね」

樹の身体を手で押しのけながら、理花は顔を背けた。

「高いってどれくらい? 身体で払うよ。って、いくら何でも悪乗りし過ぎ?」

笑いながら言う樹は、どうやら本当に冗談で言ったりやったりしているらしいと思えた。

なので、理花も少し警戒を緩めて、冗談に付き合ってみる。

「ふん、その身体じゃ無理ね」

「あ、言ったな? この身体の良さを知らないくせに。後でおつりあげるわって言われても

受け取らねーからな」

「借金してもムリムリ、高級品なのよ、わたしは」

「そうか、じゃあ物は試しにやってみようか」

樹がいきなりTシャツを脱いだ。

急に目の前に樹の裸を見てしまい、かなり驚いた。

しばらくの間、その身体を凝視してしまう。

見惚れていたのとは、違う。

文字通り、理花は固まってしまっていた。

「はは、マジに驚いてやがる。冗談だよ、冗談。彼氏のいる女に誰が本気で手を出すかって」

あはは、と笑って樹は脱いだTシャツを頭から被る。

「そ、そんなのわかってるよ。誰が本気にするもんですか」

言いながら、心の中ではかなりドキドキしていた。

「そっか? 結構本気にしてたっぽかったけどな。顔赤くなってるし」

からかわれたようで、腹が立つ。

「バカにしないでよ。もう、帰ってよー」

勝手に玄関の中にまで入って来ていた樹を追い出そうと、手を上げた。

けれどそれは、すぐに樹につかまれる。

「放しなさいよ」

「理花さ、マジで隙ありすぎ」

「樹くん、冗談だって言ったじゃない。手を出さないって言ったでしょ」

「そんな言葉、信じるなよ」

「ウソなの? 手を出すの?」

少しだけ真面目な顔をした樹に、理花は安易に信じた自分を悔やんだ。

「そりゃあさ、出していいって言うなら俺も男だし、下心ありまくりだし、こんな目の前に

好きな理花ちゃんがいたらさ、我慢にも限度はあるよ。でも、この前みたいに殴られたら痛いから、

やめとくけどよ」

樹は手を放してくれた。

でも、目はまだまっすぐ理花を見ている。


「わたし、透弥くんと付き合ったんだよ」

「知ってる。だから諦めようと思ってる。けどさ、功至にも聞いたんだけど、おまえら

上手くいってねーって言うじゃん? 透弥だって、自分から行けねーとか言って、理花からの

メール待ってるばかりだしさ、そんなの本気で好きって言えるのかな。これからもそんなんじゃ

うまくいかねーって。別れちゃえよ、透弥と」

樹は本気だ、と思った。

まだ諦めてくれてないのだ。

好きとか、別れろとか、そんなこと押し付けられても困る。

「だからって、透弥くんと別れたからって、樹くんのこと好きになるか保証できないよ」

「いいよそんなの。わかってるよ。急に好きって言われるほうが信じらんねーよ。俺、

待ってるからさ。理花が好きになってくれるまで待つ。まあ、待ってても叶うか

わかんねーけどさ。でも、先のことなんかわかんねーだろ? 理花が気の迷いで俺を

好きになってくれる可能性だって、ゼロじゃねーって思うし。思ってるだけで可能性ゼロかも

しんねーけどな。でもさ、一番近くにいさせてくれないかな。一番の友達でもいいし、側にいたいんだ」

かなり真面目な告白なんだろうけれど、言葉が頭の中を素通りしてゆく。

申し訳ないけど、まったく心に響かない。

好きじゃないんだ。

これからもきっと、樹のことは好きになれないと、理花は思った。

「今日は帰るけどさ、また来るね。また来てもいい?」

「……うん。いいけど」

可能性がないなら、この場ではっきり断ったほうがいいのではなかっただろうか。

でも、この状況で「もう来ないで」とも言いにくい。

これって、状況に流されていると言うことだろうか。

「なんか困ったことがあった時はさ、いつでも言えよな。おれはずっと理花の味方でいたいし、

遠慮なんかしなくていつでも呼んでいいしな」

「うん、ありがとう」

樹は、持ってきたワインを置いて帰った。

ひとりで飲んでてって言われたけれど、飲んだらいけないような気が、なんとなくしていた。

スーパーにある1000円もしない安物ワインだけれど……。

これまでにも樹は、スーパーに寄っては買い物をしてきて、ここでご飯を作ってくれた。

今日のように、ワインを持ってくることもあった。

樹の好意に甘えていたけれど、かなりの金額を使ってきたのではないだろうか。

自分で貧乏だと言っていた樹は、壊れそうなアパートに住んでいる。

気にしないようにしてたけど、洋服も同じものを着てくることが多いと思う。

車だって、お父さんのお下がりって言っていた。

理花の世話を焼いてる余裕は、ないはずなのに。

好きでしてくれてることだろうし、気にしなくてもいいのだろうけれど、

改めて考えると、やっぱり気になる。

それに引き換え、透弥と言えば、何もしてもらってない。

これでは、どっちが彼氏かわからない状況みたいだ。

理花は、携帯を手に取り、透弥に電話をかけた。
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