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恋にとどくまで~苺花と大和(3)

苺花



 自転車の後ろに乗って、大和の身体に腕を回す。

 背中から伝わる温もり、そして大和の匂いにうっとり陶酔する。
 
 あんな状況で何もしないなんて、やっぱり大和は誰とも違う。

 ますます好きが、大きくなった。

「ねえ、大和」

「んだよっ」

「男はみんな獣だと思ってたのよ」

「ああ、そうですか」

 かなり大和のご機嫌は斜めになっているようだ。

「大和、何もしなかったよね」

「……不満かよ」

「違うよ。男性観変わったよ。大和みたいなヘタレな男もいるってわかった」

 ぎゃー、私ったら、そこは褒めるところなのに、落としてどうするっ!

「ヘタレで結構。付き合ってもいない女とやるのがヘタレじゃない証拠だったら、

俺は一生ヘタレでいいですよ」

「ハハッ、一生ヘタレ大和ー」

「いいよいいよ。一生言ってろ」

「一生、言うよ」

 大和の背中に頬を押し付ける。身体に回した腕に力をこめた。

 一生、大和のそばで言い続けてやるんだ。

 たとえ、この気持ちが大和に届かなくても、友達でいいからずっと付きまとって、

そばで言い続けてやる。

「また遊ぼうね、大和」

 家の前で自転車を降りてから、大和に手を振った。

「ああ、またな」

 素っ気なく言われるが、「また」があることが嬉しい。

「またね、バイバイ」

「ま、元気そうでなにより。じゃな」

 小さくなってゆく大和の姿が見えなくなるまで見送った。

「……大和。本当はね、ずっとずっと好きなんだよ。素直に言えなくて悩んでたんだ。大和が、大好き」

 何度も言葉に出して、練習したのに、なかなか伝える勇気もチャンスもなくて……。

「はあ……ダメだな、私って」

 こんな風に切ないため息を落とすのも、もう数え切れないくらいだった。

 大和には変なところばかり見られている。 

 変な女って思われているだろう。

 どうでもいい男は簡単におとせるのに、どうしても大和はおとせない。




 10日ぶりに大和に会ったのは、梨々への結婚祝いを買うためだった。

「生活用品がいいかな。それとも……って大和どこ見てるのよ」

 大和の視線を胸元に感じて、慌てて押さえた。

「は? そんなとこ見てねーよ。自意識過剰ってゆーの。見られたくないならそんなん着てくんな」

「ってことは、やっぱり見てたんでしょう」

「見えるよ。目に付くんだよ」

 大和は視線を外しながら、目の毒。なんて言った。

「ひっどーい。毒だなんて」

 キャミソールは大好きなアイテムだし、男の人は喜ぶんだけどな。

大和にとっては目の毒にしかならないんだ。

「梨々のお祝い、エッチな下着にしようか」

 ムカつくので、からかってやることにした。

 下着売り場で、居心地悪そうにしている大和の反応が面白くてついつい調子に乗った。

「これ可愛いよね、試着してみようっと」

 淡いピンク色の小さなフリルが可愛いブラを手に取った。

「苺花のじゃねーだろ。梨々に選べよ」

「着心地とか良いほうがいいでしょ? つけてみて気持ちよかったら決めるのよ」

 大和に言って、試着室に入った。

 鏡の前でつけてみる。

「いいかも」

 さすが値段が高いだけはある。身体にぴったりだし、その感触も気持ちがいい。

「大和、見てみて」

 すきまから顔を覗かせて大和を呼んだ。

「え……」

 見る間に大和が赤くなる。

「冗談だよ」

 ふふっと笑って、カーテンの中に引っ込んでから元通りに服を着た。

 「決めた。これにしよう。可愛いし」

 梨々のサイズは、確か70のBカップ。私のと比べると、小さくて可愛い。

「自分のも買うのかよ」

 レジに並んでいると、大和が手に持った二つの下着を呆れたように見ている。

「色違いだよ、梨々のは清純の白にするの。私はピンク。今度つけたところ見せてあげるね」

「は……いいよ、そんなん見たくねーし」

 ふんっと大和はそっぽを向いた。

「ホントは見たいくせに。あ、見たいのは梨々のほうか。私じゃなかったねー」

 アハハと笑ってみせるが、大和の反応はなかった。

 呆れられちゃったか。

 支払いを済ませ、梨々のはプレゼント用にリボンをつけてもらった。

「持って」

 紙袋に入った梨々のプレゼントを大和に持たせた。

「涼には何にする? ネクタイとかでいいか」

 男の人って、何をもらったら嬉しいんだろう。

 プレゼントはもらうばかりで、あげたことがないからわからない。

 例えば大和だったら、何が欲しいかな。

「ネクタイでいいんじゃねーの?」

 どうでもいいって口ぶりだ。

 そうだよね、大好きな梨々をとられたわけだし、涼を好意的に見られないのもしょうがないことだ。

「じゃ、ネクタイ売り場に行くぞ」

 大和が先に歩いてゆくのを、慌てて追いかける。

「あっ……」

 急に走ったせいで、そこにいた人にぶつかり転んでしまった。

「大丈夫か」

 大和が気付いて手を差し出してくれる。

 つかまっていいの? 大和の手に。

 迷う暇なく、大和に引っ張られる。

「あ……」

 大和の手が意外に大きくて、力強くてドキンとする。

「あれ? 苺花、何かテレてるねー」

 顔を覗きこまれ、さらにドキンとする。

「テレてないよ、バカッ」

 咄嗟に大和の頬を、叩いてしまう。

「イキナリ叩くなよ」

 大和が驚いたような、ムカついたような、そんな反応をした。

「大和がからかうからだよ」

「からかったかもしんねーけど、苺花だってからかっただろ」

「からかってないもん」

「下着姿、見せようとして反応楽しんでただろ」

「見せてないじゃない。なによ、見せなかったから怒ってんの?」

「誰がっ……ってゆーか、またからかって」

 とうとう大和は、バカにすんな、と言って私に背を向けてしまう。

 またやっちゃったよ。

 ダメだ、このままじゃケンカ別れになる。

「ごめんなさい、もうしません」

 頭を下げて、素直に大和に謝った。

「なんだよ、もういいよ。もうっ……行くぞっ」

 先に立って歩き出した大和を追いかけながら、許してもらえたことにホッとする。

 ちゃんと素直にいろんなことが言えれば、きっと大和は見捨てないでくれるだろう。

 いくら照れ隠しで言った冗談でも、真面目な大和には通じないことが多いから、私は頑張って努力して

行きたいと思う。

 そう。思うんだけど行動が伴わないんだよね。


 
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