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恋にとどくまで~大和と苺花(4)

大和


 土曜の11時に梨々の家に直接行くと言う約束をして、苺花と別れた。

 苺花に夕食を一緒にって誘われたけれど、俺は断った。

 今からバイトに行くのだ。

 やっと自動車の普通免許がとれた。

 いつも苺花に自転車だとバカにされるからだ。

 いや、それだけの理由じゃないけれど……。

 自分の車を買うために、バイトを始めた。

 頭金くらいは現金で払いたいと思って、この居酒屋で働き始めた。

「ショッピングセンターで見たよ。彼女?」

 更衣室で着替えをしていると、バイト仲間の椎名(しいな)ってやつが声をかけてきた。

「見てたのかよ。声くらいかけろよ」

「邪魔するわけに行かないだろ。それよりすっごい可愛い子だったね。今度紹介してよ」

 苺花、可愛いからな。それは素直に認めるが、もう目をつけられたってわけ?

「紹介してやろっか? 俺の彼女ってわけじゃねーし」

 椎名に言ったら、苦笑いで返された。

「や、紹介しろとは言ったけどさ、大和の彼女として紹介しろって意味だったんであって、別に僕の彼女

にって紹介してもらうつもりはなくてさ、アハハ」

 弁解しつつ、顔がにやにやと笑っている。

 椎名は俺と同じ年だ。バイトに入った初日から仲良くしているが、なかなかいい奴だ。

 カッコイイより可愛い雰囲気のやつだ。

 苺花も気に入るかもしれない。




 そして土曜日。梨々は手料理をでもてなしてくれた。

 いなくていいのに、涼も仕事が休みだからと言って、そこにいた。

「元気ないのね、苺花」

 可愛いエプロンをつけた梨々が、不機嫌そうな苺花の顔を心配そうに見つめている。

「無理ないよ。雅人さんと別れたばかりだから」

 涼が梨々に説明している。

「雅人のことなんか、とっくにふっきれてるよ。元気なく見えるのは、梨々と涼の幸せぶりに

ちょっとムカつくからだよ」

「なんだ、そっか」

 梨々は、苺花の毒舌に慣れているらしく、さらりと笑って流しているが、隣にいる涼は、

少々戸惑い気味だ。

「そうだよ。イチャつくのは二人だけのときにしてよ」

 ね? と言って苺花は俺に同意を求める。

「あ、ああ。ハハッ」

 曖昧に笑って誤魔化した。

 だけど、それからずっと二人を観察していたが、俺と苺花がいるのもお構いなしに、ラブラブっぷりを

披露してくれていた。

 苺花が選んだプレゼントの包みを開けた瞬間など、そのピークに達していて、梨々も涼もピンクオーラ

が漂っていた。

 ──やってられない、見てられない。

「そろそろ帰ろう」

 苺花が言ってくれて、俺はホッとした。

「食べるもの食べたし、プレゼントも渡したし、お邪魔だから帰ろうっと」

「もう帰るの? ゆっくりしていけばいいのに」

 とりあえず一旦は梨々に引き止められたけれど、

「後は二人でごゆっくり」

 と言った苺花の言葉に、梨々は頬を染め、涼が梨々を愛おしそうに見つめていた。

 苺花と外へ出た瞬間、一気に疲れが出てしまう。

「大丈夫? 大和」

 苺花が心配そうに聞いてくれる。

「顔がずっと引きつってたからさ」

「ああ。気をつけてたつもりだったんだけどな。ダメだな、あいつら見てると辛いかも……」

「梨々たちはお互いしか見てなかったから、大和のことは気にしてなかったと思うよ。私でも呆れる、

あのバカップルぶりには」

「はあ。独り身同士には辛いよな」

「一人が嫌なら、付き合おうか」

 またまた苺花が冗談を言った。

「大和と付き合いたいなー」

「冗談ばっか言うなよ。いい加減にしろ」

 ヘラヘラ笑って言われたって、誰がまともに受け取るか。

 からかうのもいい加減にして欲しいって言うのが、正直な感想だった。

「ね、今からカラオケ行かない?」

「行かない。バイトなんだ」

「今日もなの?」

「今日もなんだよ」

「ふーん、そんなに働いてどうするの? あ、私に貢いでくれるのね。わーい、嬉しいなー」

 横で手を叩いて喜ぶ振りをしている苺花を、冷ややかにしか見れなかった。

「それじゃあ送ってって、大和」

「無理だよ。すぐ行かなきゃ遅刻なんだ」

「え~~っ! 私を一人で帰すってゆーの?」

 苺花は、ひどーいとか、冷たーいとか騒いでいるが、一人で来たのだから一人で帰れるはずだし、まだ

外は明るいのだ。彼女でもないくせに、苺花は要求が多すぎて困る。

「じゃな、俺マジで急ぐから」

 不満げな苺花にヒラヒラと手を振って、俺はバイトへ行った。

 俺だって、いつもいつも苺花の言いなりってわけじゃないんだ。

 こうやってちゃんと断ることだって出来るんだ。




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