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恋にとどくまで~苺花と大和(7)

苺花




「ごめんね、椎名くんが誘ってくれるのは、とっても嬉しいのよ。だけど私、大和が好きなんだ」

 きっぱり断って、ついでに携帯の待ちうけ画面も見せてやったら、椎名は納得したのか、それ以上しつ

こく誘っては来なかった。

「片想いなんだよね」

 しんみりと椎名に漏らす。

「あいつ、知ってんの?」

「知らないよ。私なんか恋愛対象外だもん。大和は私の親友が好きなの。結婚しちゃった彼女のこと、ま

だ吹っ切れてないのよ。私の気持ちは、永遠にとどかないかもしれないな」

 つい、ため息を落としてしまった。

「気持ちは伝えなきゃ伝わらないよ。大和って、そういうの鈍そうだし、言わなきゃホントに伝わらない

と思うな」

 男はみんな、私の話なんかまともに聞いてくれないと思ってたのに、この椎名ってやつは、真面目に聞

いてくれるし、アドバイスもくれる。

 しつこくしないところもちょっとだけ好感が持てた。

 出会ってすぐに、男は私の顔を見る。そしてすぐに視線が胸に下りて行くんだ。

「言っても、無理だよ。私は軽い子だって思われてるから……」

 さっきから椎名の目は、ずっと私の目を見ている。

 下がらない。胸を見ない。

 直感的に、悪い人じゃなさそう、なんて思ってしまった。

 それから、とりとめのない世間話をしていたんだけど、なかなか大和が戻って来ないことが気になり始

め、落ち着かなくなってきた。

「大和、遅いな。トイレで倒れてるんじゃない?」

「そうだね、僕ちょっと見てくるよ」

 待ってて、と椎名は言って席を立った。

 ひとりになって私は、大和の飲みかけのグラスについ、手を伸ばす。

 口をつけて、間接キスでもいいから、したい衝動にかられた。

「……危なすぎだよ、私」

 どうにか理性を保ち、グラスをテーブルに戻した。

「大和、いなかった」

 椎名が困ったような表情で私に告げる。

「いなかった? トイレに流されちゃったのかな」

「アハハ、だったら驚くよね。あいつ、帰っちゃったのかな」

 私の冗談を軽く流して、椎名は椅子に座る。

「どうしようか。大和に連絡取ってみようか」

 携帯を取り出した椎名を、私はぼんやり見ていた。

 すぐに大和につながったらしく、椎名は話し始めた。

 大和が生きていることに、ホッとする。

「なんだよ大和。余計なお節介だって。苺花ちゃんは……。って、もしもしっ」

 椎名は携帯を閉じてから私の顔を見て、申し訳なさそうに言った。

「あいつ、何にもわかってないよ。僕と苺花ちゃんがどうにかなればいいとか思ってるんだ。そんなんじ

ゃないのにね」

 椎名はため息混じりに言うと、伝票を持って立ち上がる。

「出ようか。あ、支払いはいいよ。僕が出しておくから」

 私は小さく、ありがとうと言ってから、椎名の後について店を出た。

「送ってく、と言いたいところだけど飲んじゃったし運転できないから。どうしよう、一人で帰れる?」

「帰れるよ。まだ電車動いてる時間だもん。それより椎名くん、車持ってんの?」

 駅まで送ってもらいながら、椎名と話をした。

「中古の軽だけどね。それでもローン組んじゃったから、バイト頑張って返済中なんだ」

「ふーん、そうなんだ」

 大変だね、って言おうとしたけどやめた。

 大変じゃないかもしれないからだ。

「そうそう。大和もだよね。車を買うために頭金貯めてるんだって。バイト頑張ってるよ、あいつ」

「大和が……車を買うの?」

 免許が取れたことは聞いていた。早く車を買いなさいよって言ったのは私だけど、まさか私に言われた

から買おうとしているんじゃ……ないよね。それは自惚れすぎ。

「そう言ってたよ。偉いと思うよ。頭金貯めてからなんて、計画性があってすごいよ。僕なんかとにかく

早く車が欲しくて全額ローン組んじゃって。後のこと何も考えてなかった」

 ダメだよなーって苦笑いする椎名だけど、ちゃんと支払いしてるんだからいいじゃんって思った。

 大和の計画性は高く評価できるかもしれないけど、大和は慎重過ぎると思う。

 考えて行動するのは悪いことじゃないけれど、もっと本能で突っ走ればいいのにって思うことは多いん

だよね。

 特に恋愛において、大和は考えすぎて、結局タイミングを逃してしまって梨々を逃しちゃったんだ。

 私のことも、もっと考えてくれればいいのにな。

「じゃ、気をつけてね」

 駅に着いて、切符を買うまで椎名はいてくれた。

「椎名くんもね。ありがとう」

「大和と頑張れよ。応援する」

「ありがとう。じゃあね」

 手を振って背を向けて、改札口を抜けた。

 少し歩いてチラッと振り返ると、笑顔で椎名がまだ見送ってくれていた。

 もう一度手を振ってから、私はホームへの階段を駆け上がった。

 今までの私だったら、きっと帰らないって言って、椎名といたかもしれない。

「可愛い男の子だもんね」

 どちらかと言えば、好みの顔だったし、性格も悪くなさそうだった。

 今までの私だったら、絶対誘ってただろうな。

 でも、今までとは違うんだ。

 もう、よそ見はしない。

 大和しか見ない。

 一生、気持ちが伝わることがないかもしれなくたって、大和のそばで大和を見て行きたいんだから。

 電車を待っている間、携帯を開き、待ち受けの大和をじっと見ていると、大和に会いたくなった。

  呼んだら大和は来てくれるだろうか。

 ホームに電車が入ってくる。

 最終電車だ。

 これに乗り遅れたら、家に帰る方法は、タクシーしかない。

 電車が止まり、扉が開く。

 乗り込んで行く人たちを、私は眺めていた。

 扉が閉まるアナウンスが聞こえた瞬間、私はくるりと方向転換をして、ホームの階段を駆け下りた。

 駅員に乗り遅れたので、と告げて切符を払い戻してもらってから、改札を抜けた






続きます~~♪


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