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恋にとどくまで~大和と苺花(8)

大和


 もうすぐ家に帰り着くって時に、苺花から電話がかかった。

『大和っ……助けて』

 助けて?

「苺花? 何だよ、どうした? どこいんの?」

『こう……こうえ、んっ』

 しゃくりあげるほどに泣いている苺花が、俺をからかっているのではないことは明白で、そのただなら

ぬ状況に、俺の心臓がドキドキ鳴った。

「公園って、どこのだよ。苺花? しっかりしろよ」

 椎名と一緒じゃなかったのか?

 まさか、椎名が苺花に何かやった?

 二人で残してきたのは間違いだったんだろうか。

 何とか場所を聞き出した俺は、すぐに自転車を引っ張り出し、苺花の言った公園へ急いだ。

「苺花っ」

 公園の片隅にあるベンチに、苺花は座っていた。

 俺の声に顔を上げ、すぐに立ち上がろうとしてその場にへたり込む。

 慌てて側に駆け寄り、苺花の身体を支えながら訊ねる。

「なんだよ……何があったんだよ」

「怖かったよっ……大和ー」

 苺花はパニック状態に陥っているらしく、話すのもままならない様子だ。

 俺の胸に顔を埋め、しがみつくようにして泣いている。

 とりあえず苺花をそこにあるベンチに座らせ、自販機でペットボトルのジュースを買って渡した。

「開かない……」

 苺花の手は小刻みに震えていて、蓋を開けるのもままならない様子。

 苺花の手からジュースを取ると、蓋を開けてもう一度手渡す。

「ありがと……」

 ジュースを飲んで、しばらくすると少し苺花の様子が落ち着いてくる。

「どうしたんだよ、何が……。椎名はどうした? 一緒じゃなかったのか?」

 改めて事情を苺花に聞いてみる。

「バチが当たったんだよ。大和……」

「バチ? わかるように話せよ」

「わざと……終電に乗り遅れたの。椎名くんはちゃんと駅まで送ってくれたよ。でも、どうしても大和に

迎えに来て欲しくって、電車に乗らなかった。そしたら……」

 言葉を止め、苺花は数回、深呼吸を繰り返した。

「大丈夫か? 無理して話さなくても……」

 聞きたいし、知りたいけど。

 とりあえず見た感じ、外傷があるわけではなさそうだ。

 気持ちが混乱しているならば、もう少し落ち着いてから改めて聞いても良さそうだ。

 そう思ってとにかく苺花を送って行こうと思い、立ち上がりかけたとき、苺花が言った。

「強姦されそうになった」

「え……」

 強姦? それって……。

「声……かけられた。駅前で、大和に電話しようとしてたら。車で送って行こうって……知らないオヤジ

が言うの」

 俺は苺花の隣に座りなおし、苺花の顔をのぞきこむ。

「……いいですって断ったら、車から降りてきて……腕を掴まれたの。人は周りに少しいたけど、誰も助

けてくれない。嫌だって騒いだら……体……抱きしめられて……」

「い、苺花。大丈夫だったんだろ? み、未遂だよなっ?」

 情けないことに、声が震える。

 そうであって欲しいと願いながら、苺花の答えを待った。

「車に、押し込められて……身体、触られて……。でも、絶対それ以上は嫌だって思ったから思い切り爪

立ててやったよ」

 ほら、見て。と苺花が自分の爪を俺に見せた。

 うっすらと赤く染まっているのは、もしかして血?

「おかげで車から逃げられた。それから走って……。信号も無視して走って……」

 途中で車に轢かれそうになったけど、と苺花はぼんやりとした表情で告げる。

 車に轢かれていないのも、とりあえす無事だったのも目の前にいる苺花を見ればわかるんだけど、心の

中の状態は、あきらかに安定していないのも、見ればわかった。

「ミュール……失くしちゃった」

「ミュール?」

 言われて苺花の足元を見ると、靴が片方しかないのに今さら気付いた。

「苺花……あの……」 

 こんなとき、どうやって慰めてやればいいんだろう。

「送ってく。……今日も自転車なんだけどさ」

 こんな気の利かない言葉しか言えないのが情けない。

「いい。自転車がいい。車は……怖い」

 やはりいつもの苺花じゃない。

「大和……」

 自転車の後ろに苺花を乗せようとしたとき、苺花が縋るような目で俺に言った。

「一緒にいたい。帰りたくない」

 一瞬、迷った。

 いつものふざけたノリじゃないし、一緒にいたいってことは、どういうことだと瞬時に思い巡らせた。

「俺んち……家族いるけどそれでいいなら」

「うん。ごめんね」

 うちでいいらしい。

 うちに誘ったものの、親に何て言おう。

 でも、ホテルなんかよりその方がいいんじゃないかと、何となくだけどそう思ったんだ。




★続く
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