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恋にとどくまで~苺花と大和(9)

苺花






 大和の親と会うのは初めてだ。

 初めてなのに、こんな夜中なのに、大和の両親は、大和の話を聞くと快く私を迎えてくれた。

 その上、私の家にも連絡をしてくれたんだ。

 布団の用意が出来るまで、大和の部屋で待つことになった。

「ちょっと散らかってるけど」

 苦笑いで、その辺に散らばった雑誌や洋服を必死で片付ける大和を、いつもよりカッコイイなんて思っ

て見ていた。

「ごめんね。迷惑かけて。けど、頼れるの大和しかいない」

「気にすんな。いいってば。迷惑なら迎えに行かねーよ」

「そっか」

 軽く流したけど、迷惑じゃないって言葉がメチャクチャ嬉しい。本心だろうか。

 たぶん、違うと思う。

 こんな状態のときだからきっと、大和はそう言ってくれたんだろう。

 怖かった。

 本気で怖かった。

 今まで散々、いろんな男とやってたくせにって思われるだろうけれど、少なくとも相手は選んでいた

し、少しは好きだなって思わなきゃ無理だった。

 あんなこと、初めてだった。

 山の奥に連れて行かれなくて良かったと思った反面、あんな場所でいきなり襲い掛かられたのは、逃げ

出すためには良かったんだろうと思う。

 不幸中の幸いってヤツだ。

 失くしたミュールは惜しいけど、また買えばいいんだ。

「ごめん、大和。こんなとき、本当は親を呼ぶんだろうけど、迎えに来させてごめんね」

「もういいって言ってんだろっ」

「良くないよ。ごめんね、今度からもう私にかかわらなくていいよ。私も大和にこれ以上迷惑かけられ

な……」

「そんなこと言わなくていいんだよっ。混乱してんのかもしんねーけどさ、そんなの苺花らしくないって

ゆーか。いつもの苺花でいいじゃん。俺でよかったらいつでも頼っていいよ」

 大和の言葉を、そのまま素直に受け取れない自分が悲しい。

 いつもみたいに、軽く言えばいいんだ。

 じゃあ、頼るよって笑って言えれば……いいのに。

「同情なんでしょ? 大和、優しいから嫌って言えないだけだよね」

 大和は答えてくれない。

 何か言いたげにはしているようだけど、何を言えばいいか迷っているって顔だ。

 きっと私を傷つけないような言葉を探してくれているんだ。

 考えて言われた言葉は、本心とは微妙なズレがあるんじゃないかと思う。

「嫌じゃねーよ、苺花」

「……嘘だよ。私があんな目に合ったから……」

「苺花、今日はもう寝たほうがいいって。そろそろ布団も用意できただろうし、見てくるよ」

「ここでもいいのに」

「え?」

 部屋を出ようとしていた大和が、私を振り返った。

「大和と同じベッドでいいのにって、言ったのよ」

「やっといつもの苺花になった」

 驚くでもなく、大和は私を見てホッとしたように笑った。




 好きだから、付き合いたいと思う。

 だけど気持ちが一方通行なのはわかっているから、付き合えないのも知っているから、それが辛いし、

悲しい。

 大和はいい人だから、いい人とめぐり合って幸せになって欲しいと思う。

 それが私だったらとても嬉しいけれど、私はいい人じゃない。

 気持ちを伝えたいけれど、伝えたらこの関係も終わってしまうようで、怖くて怖くて、とても伝えられ

ない。

 大和が私にこうして優しくしてくれるのは、私に対する同情だけど、それがたとえ同情であっても、大

和の目に触れる場所にいられることが、とても幸せだと感じてしまう。

 私が今日のように落ち込んでいたり、素直になろうとしたりすると、いつもの私じゃないって思われて

大和が心配する。

 大和に頼りたいし、守って欲しいと思う反面、やっぱり同情でされることに不満はあって……。

「はあ……なんだか思考回路、メチャクチャだな」

 大和のお母さんが敷いてくれた布団の中で、天井をじっと見つめながら考えた。 

 たぶん、この上が大和の部屋で、あのベッドに大和は眠っているはずで、私のようにこうやって、あれ

これ考えて悩んで眠れないということはなく、きっともうぐっすり眠っているんだろう。

「人の気も知らないで」

 言ってないんだから、私の気持ちが伝わっているはずはない。


 だけど少しくらい、気付いてくれたっていいんじゃないかと思ったんだ。






★続く。。。
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