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【23】彼だと誤解された彼

「あ、理花……大丈夫か?」

ベッド脇に、何故か樹がいた。

「な、何でいるの!」

びっくりして理花は飛び起きた。

掛けられたタオルケットを引っ張って、体全部をガードする。

「すごい反応」

 声のするほうを見ると、さっきまで一緒に飲んでいた涼もいた。

「高浜さん、飲みすぎだよ。ちょっと加減したほうがいいね。あんな風になるなんて」

苦笑いで涼が言う。

「あんな風?……」

あんな風とは、どんな風なのだ。

「誰でも酒が入れば理性のガードは緩むんだろうけど」

「わたし、何かした?」

「何かされても文句は言えないこと……言ってたかな」

「何言った?」

「うーん、抱いてもいいのよって」

お酒が入って、ガードが緩んで、ヤケクソだったし、そういう気持ちになったとしても

おかしくないかもしれない。

「正直なところ、禁欲生活中だし、浮気してるわけじゃないし、やばかったかな」

「ごめんなさい!」

恥ずかしくて顔から火が出そう。

理花は頭からタオルケットを被って隠れた。

「でも、何とか落ち着かせて玄関まで連れてきたらさ、彼がいたわけだ」

樹を指して涼が苦笑いした。

「じゃ、後は彼から事情を聞くといいよ」

ちゃんと仲直りしなよ。と言い残し、涼は帰って行った。

残された樹は、困ったような表情のまま、黙っている。

「……あの」

おそるおそる、理花は聞いた。

「なんで……いるの?」

「うん、透弥とケンカしたって功至に聞いて。で、原因は俺だって責められるから。一応

誤解は解いてきたつもりだけど、あんま信じてもらえなかった。理花も落ち込んでるかもって

思って謝るつもりで来てみたんだけど、そしたら理花とさっきの男が一緒に帰ってきたんだ」

事情はわかった。

だけど、今こうして部屋にいる事実。また透弥に知られたら誤解されるのではないか。

それに、誤解が解けてるとすれば、透弥から連絡があっても良さそうなものだ。

それがないと言うことは、まだ樹のことは誤解されたままだし、

理花のことも許してくれているわけではなさそうだ。

「ごめん、さっきのヤツに誤解された。俺が理花の彼氏だって思ってたみたい」

「……そっか」

こんな夜中に理花の家の前で待っていれば、そう思われても不思議ではない。

「しかも俺、彼氏だって誤解されたまま、説教された」

「涼が樹くんにお説教したの?」

彼氏だと誤解されたのもおかしいけど、素直に説教をされている樹を想像しても、ちょっと笑えた。

「ケンカするのはいいけど、理花がヤケになる前に何とかしろって言われた。俺が相手だったから

良かったものの、男はそう甘いもんじゃないよ、結局そういう事態になって傷つくのは女の子のほうだ、

しっかり守ってやらなきゃダメだぞってさ。そんな風に言われた」

「それ、大人しく聞いてたの?」

「彼氏じゃないって否定するスキなく説教された。ホントは、透弥が責められなきゃいけない

ことだから納得いかなかったけどさ、言ってることは間違ってないことだし、大人の男の

考えを吸収するのも悪くないよなって思って」

「大人の男ねー……」

出会ったときの涼って、今みたいじゃなかった。

もっと余裕なくて、言うことやること空回りしているような雰囲気があった。

何か物足りないような、大人なんだろうけど子供っぽいような。

でも、今の奥さんと知り合ってから、だんだん頼もしくなってきたような気がする。

涼は、奥さんを守るために頑張ったんだろうな、と思った。

「で、いいもの吸収できた?」

「うん。出来たと思う。俺、目先のことばっか考えてた。どうしたら理花の気持ちをつかめるかなって、

そればっか考えてた。でも、その前に自分を見つめ直す必要があるって感じた。今のままじゃダメだ。

頼もしい大人の男になる」

涼が樹に何をどれくらい説教したのか知らないけれど、樹に気合が入っているのがわかる。

「だからさ、見ててくれよなっ。理花に認めてもらえるまで頑張るからな」

夢は諦めたらそこで終わりだ。

と、樹は言った。

まだ、諦めないつもりらしい。

だけど、そんな風に頑張ろうと思う樹のことは、悪くないかもしれないと、

理花はほんの少しだけ思った。
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