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恋にとどくまで~苺花と大和(11)

苺花


「痛いよ、大沢」

 さっき大和につかまれた腕を、大沢にゴシゴシ洗われていた。

「飲みに行くんじゃなかった、苺花」

「痛い……」

 強くタオルでこすられて、腕が赤くなっている。

 ほんの数日前、暇つぶしに入ったゲームセンターに、大沢はいた。

 三人の男に絡まれてしまった私を、助けてくれたのが彼だった。

 同級生だって言うのは、嘘だ。

 大和が知らないのは当然だし、私自身この大沢って男のことは何も知らない。

 助けてもらったお礼に、付き合ってくれっていきなり言われた。

 一目惚れだと言われたことは初めてじゃないし、驚くほどのことでもないし、嬉しいとも思わなかった

けれど、大和が私に対して同情の気持ち以上を抱いてくれないとわかってしまったから、もうなんだかど

うでも良くなった。

 今までの私が、私らしくて、大和が安心するなら。そうすることが最善ならば、そうしているほうがい

いんじゃないかって思った。

「好きだ、苺花」

 抱きしめられても何も感じないし、好きだって言われて心も動かないけれど……。

「会って間もないのに、どうしてこんなに好きになったんだろう」

 一瞬、ひどい嫌悪感が湧きあがった。

「嫌……」

 小さな抵抗は、軽く封じられる。

 大沢の手が私の頬を撫で、徐々に下へ下がってゆき、胸元を探られるうち、大沢の息があがってくる。

「はあ……苺花……:」

 気持ちが悪かった。

 逃げ出したかった。

 私がこんなことをされている間、大和はきっと笑いながらテレビに夢中になっているんだ。

 気付いて欲しいけれど、気付いてもらえるはずはない。

 助けて欲しいけれど、助けて欲しいなんて言ったらまた大和に迷惑がかかってしまうんだ。

 諦めなければいけないんだと思う。

 そう思うのに心は何故か言うことを聞いてくれない。

 大沢に抱かれながら、私の心はまだ大和を想っていた。




 徐々に、大沢の束縛がひどくなり、ついに大和を待ち受け画面にしている携帯にも気付かれた。

「ふざけんなっ」

 目の前で携帯を二つに折られたときは、怒りよりも悲しさが上回ってしまい、何も言葉を発することも

出来なかった。

「信じられない……」

 床に叩きつけられた携帯を拾い、涙と一緒に言葉を落とす。

「新しい携帯、買ってやる」

 カッとなって悪かったと、大沢がすぐに謝ってくれたけれど、新しい携帯じゃ代わりにならない。

 そこに、入学式の大和はきっと映らないんだから。

「もう、終わりだよ……」

 大沢と出会って、2週間目。

 やっぱり大和の代わりにはならない。

 同じ間違いを何度も繰り返し、やっと素直になろうと決めたものの、大和には気持ちが伝えられなかっ

た。

 そしてまた同じことをやった。

「もう嫌だ。別れる」

 携帯を握りしめて、大沢の目を見ずに言った。

「え……。あ、怒った? 怒ったんだろ? 悪かったよ、マジで。もうしないから、な……」

「もう遅いよ! 大事な携帯だったのにっ。ひどいよ、こんなにしやがってっ!」

 携帯を持ったままの手で、大沢の頬を殴った。

「いっ……」

 大沢がひるんだ隙に部屋を飛び出す。

 走って走って、追いつかれないようにわき道に逃げながら走り続けた。

 もう二度と会いたいとは思わなかった。

 始めから好きじゃなかった。

 好きになるつもりもなかった。

 ただの現実逃避だ。


 きっと、これだけで終わらないだろうってことも、漠然とながら感じていた。

 家には帰れない。

 大沢に家は知られているんだし、押しかけられたら家族に迷惑がかかる。

 もちろん、大和に迎えに来て欲しいなんて言えるはずがなかった。

「どうしよう……」

 誰に連絡を取ろうにも携帯のデーターは消えている。

 壊れてしまったんだ。


「あ……そうだ」

 バッグの中を探ると、この前飲みに行ったときにもらった紙切れが出てきた。

 椎名が予備に、と笑って書いてくれた携帯の番号が書かれた紙。

 ……連絡したら、どうなっちゃうだろう。

 椎名に迷惑がかかってしまうことは必至だ。

「迷惑に……ならなきゃいいんだよね」

 ふと湧き上がった気持ち。

 そうだよ。

 

 冷静なときに考えれば、バカなことをまたやろうとしているのはわかったはずだけど、その時の私は、

そうすることしか思いつかなかった。




 紙を手に、公衆電話を探す……なんてことを。




★苺花ちゃん……。続く。



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