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恋にとどくまで~苺花と大和(12)

話の都合上、もう一回苺花編でお届けします。

苺花




つながった電話の向こうで、事情を話した私の願いを困ったように聞いていた椎名だったけれど、大和

がいつも言うようにわかったよって言って迎えにきてくれた。

「とにかく……入って」

 すごく散らかってるけど、と言いながら椎名が部屋に入れてくれた。

 一人で住んでいるというアパートは、高校のときから住んでいる部屋で、かなり古い外観をしていたけ

れど、部屋の中は外から感じるほど古くはなかった。

「本当に散らかってる」

 素直な感想を口にしてしまった。

「明日、片付けようと思ってたんだってば」

 椎名は言い訳をしながら、冷蔵庫の中から冷えた缶ビールを出して渡してくれた。

「適当に座って……って、座れるのベッドしかないか。ちょっと待ってね、片付ける」

 床に散らばった服や雑誌類を拾い上げ、隅のほうにほおり投げている。

「ごめんね。急に呼んじゃったから。いいよ、ベッドに座る」

 言いながら私は、ベッドに腰掛けた。

「そこはダメだって。ダメダメ。危ない場所なんだから」

 冗談っぽく軽く笑っているけれど、ちょっとだけ態度が挙動不審に見える。

「危なくていいもん。椎名くん。しようか」

「……は? ハハハ、何言ってんの」

「椎名くんのこと、けっこう好きだし。迷惑かけちゃったし、迷惑料がわりに抱いてもいいよ」

 椎名をじっと見つめたまま、私は誘いの言葉をかける。

 ほぼ99%の確率で、男は私を押し倒すんだ。

 そうしない1%は、もちろん大和だけ。

「苺花ちゃん、大和はどうしたんだよ。大和が好きだって、言ってたじゃん。携帯だって見せてくれた

し、一途なんだなって思ったら応援したくなったのに。どうしちゃった訳?」

 警戒しているのか、椎名は部屋の隅に立ったまま、近づいてこようとはしなかった。

「どうもこうもないよ。あの日の私がおかしかっただけで、これが本当の私なのよ。誰でもいいの。椎名

くん、最初に私に言ってくれたよね、可愛いねって。付き合ってみようって言ったよ。付き合おうよ、私

も椎名くん好きだよ」

 あまりにスラスラと好きだとか、付き合おうと言う言葉が出てくるのに、内心驚いていた。

 こんな風に同じように、大和には言えない。

「大和に、気持ち伝えられないから言ってるだけだろ? 大沢とか言うやつのことにしたって、投げやり

になって適当に近づいた結果、こうなってんだろ? 落ち着きなよ」

 椎名と大和がちょっとだけ重なる。

 最初は軽く誘いをかけてきたから、その辺の男と同じだって思ったけれど、話が通じる人みたいだって

わかった。

 一瞬、椎名だったら大和を忘れさせてくれるんじゃないかと思ってしまった。

「落ち着いてるよ。ただ、もう……大和のことは忘れようかなって思ってるだけ」

「忘れる? 気持ちを伝えてもないのに?」

「壊れちゃったんだもん、携帯。ずっと想ってたって大和に言ったところで証拠も消えちゃったんだよ。

何言ってんだって笑われるよ。信じてもらえるはずないよ」

 椎名から視線を外して、足元に目を落とした。

「一緒に言ってやるよ。僕がちゃんと見たって言う。僕が苺花ちゃんの証拠になるからさ、言おうよ。大

和に気持ちを伝えようよ」

「椎名くん……」

 私はもう一度顔を上げ、椎名を見た。

「自暴自棄になったらダメなんだってば。女の子なんだし、自分を安売りしちゃダメだ。苺花ちゃんの純

粋に大和を想う気持ちは、あの日ちゃんと感じたしさ、大事にして欲しいと思った。大和は苺花ちゃんの

ことをちょっと……いや、かなり誤解してるようだけど、そうじゃないんだし。素直になろうよ。女の子

はそのほうが絶対いいんだって、幸せになれるんだってば」

 真面目な顔をして、必死になって私を説得しようとしてくれる椎名を見ていたら、ちょっとだけだけど

告白してみようかな、と思える勇気が……少し湧いてきてしまった。

「ダメだったら、どうしよう」

 弱気な気持ちを、椎名に素直に言ってみた。

「玉砕覚悟だっていいじゃん。ずっとこのままでいるよりスッキリすると思うよ。同じところでぐるぐる

悩んでるより、行動しなきゃ。抜け出そうよ」

「……玉砕したら、慰めてくれる?」

 冗談交じりにお願いしてみた。

「玉砕しないから、慰められないと思うよ」

 そう言って笑ってくれた椎名を見ていたら、本当に大丈夫そうな気持ちが大きくなった。




♪続く♪
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