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恋にとどくまで~大和と苺花(13)

大和



バイトが終わり着替えをしていた更衣室で、椎名の視線を背後に感じで俺は振り向いた。

「なんだよ、そんなに見るなよ」

俺と目が合うと、椎名はびくんとして慌てたように目をそらした。

明らかに何かを隠しているように見える。

そして、そのことを言おうかどうしようか迷っているという様子だ。

わかりやすい奴だ。

きっと嘘や隠し事が出来ないタイプなんだろう。

「話?それとも何か悩みでもあんの?」

俺がストレートに聞いた事に対して、椎名もあっさりとうなずいた。

「話…ある」

だけどここでは話せないと椎名が言うので、俺は誘われるまま椎名のアパートに寄ることになった。

「あのさ、いきなり会うときっと驚くから、先に言うから驚くなよ」

部屋のドアの前で、ドアを背にした椎名は俺をじっと見つめる。

何を言おうとしているのか、何を言われるのか、椎名がなかなか口を開かないのでドキドキしてきた。

「何だよ、脅かすなよな」

 やけに真剣な眼差しの椎名に、たじろいでしまう。

「うん。いや、実はさ……苺花ちゃんのことなんだ」

「苺花の? 何?」

 また苺花が何かやらかしたのだろうか。椎名に何かやった?

「苺花ちゃんの携帯、見たことないだろ?」

「……何それ」

 何を言い出すかと思ったら、携帯?

「待ち受け画面に、大和がいた。大和を待ち受けにしてるんだ。いや、してた。入学式の大和だって言っ

てたんだ。この意味わかるか?」

 椎名は一気に俺に言うと、今度は俺に質問をぶつける。

「わかるかって聞いてんだ。大和、答えろよ」

「入学式の……俺を待ちうけ? 何で?」

 良く意味がわからなかった。

「そんなの、大和が好きだからに決まってんだろっ」

 椎名が熱くなっている。肩で息をしているって感じだ。

「なんだよ、驚かないの? 驚けよ。それとも本当は知ってたのか?」

「いや、知らねー。ってゆーか、何? 何か話が良く見えないんだけど」

 椎名が言っている言葉の意味はわかる。

 苺花の携帯の待ち受けに、俺の入学式の写真が登録されているってことだろ?

 で、どうしてかっていうと、苺花が俺を好きだから。

「え……苺花が俺を好き?」

「やっと理解したか、大和。そういう事だ。だから今からこの部屋にいる苺花ちゃんの話を聞いてやれ

よ。それで──」

「ちょっと待てよ椎名。苺花が部屋にって……。え? なんで? 何それ……」

 やっぱり良く意味がわからない。

「いいからっ! 僕はその辺で時間潰してるからさ、話がすんだら携帯鳴らしてよね」

「ちょっと、おい、椎名」

「じゃあねー」

 逃げるように椎名は、俺を残してどこかへ走り去ってしまった。

「なんなんだ?」

 椎名の説明が下手なのか、俺が理解出来ないのが悪いのか。

 いまひとつ良くわからないんだが、とにかくここに苺花がいて、苺花と話せってことだよな。

 とにかくこのままここに立っていてもしょうがないようなので、俺は椎名の部屋のドアをノックした。

「……大和?」

 あらかじめ、俺が来ることを苺花も了解していたのだろう。

 普通にドアが開いて、見慣れた苺花の顔がのぞいた。

「椎名が、苺花と話せって言うから来たんだけど。なんでここに苺花がいるんだよ。ここで何してん

の?」

「……私……」

「椎名に聞いたんだけど、携帯の話。待ちうけがどうこう言ってた。どういうこと?」

「それは……」

 苺花は言葉を曖昧に濁し、しかも俺のほうを見ずに目をそらしたままだ。

 何をやらかしたんだろう。

 そういえば、例の大沢とか言う男とはどうなったんだろう。

 椎名の部屋にまで上がりこんでいるってことは、大沢とはもう別れて、椎名に乗り換えたんだろうか。

「苺花」

「……なに?」

「椎名と付き合ったのか?」

「え……」

 やっと苺花が顔を上げた。

 大きな目をいっぱいに開けて、俺を見上げている。

「大和、椎名くんから……携帯のこと、聞いたって言ったよね」

「ああ。聞いたけど」

「なのに、どうしてそういう発想になるわけ? 私は……」

 苺花が言葉を途切らせた。

 ぎゅっと唇を噛んで、俺を睨んでいる。

「椎名が言ってた。苺花って、俺が……その、す……」

「好きじゃないもんっ! 何を自惚れてんのか知らないけどっ! 壊れちゃったのよ、私の携帯。終わり

なの、もういいの。大和のことなんか……大嫌いなんだから」

 すごい剣幕で怒鳴ったかと思うと、両手で思い切り突き飛ばされた。

「いいよ、もう。どう言ったって大和は私のことなんか、どうも想ってないってわかってる。椎名くんが

せっかく協力してくれようとしてくれたけど、大和の気持ちがそれだったら、何をどうしたって上手くい

くわけがないよ。いいよ、私、椎名くんと付き合うもんっ! 邪魔しないでよね、大和」

 話し合いも何もあったもんじゃなかった。

 目の前で思い切り閉められたドアを、ぼう然と見ていた。

「俺が……悪い?」

 苺花が怒ったのは、俺が何も理解していなかったのが原因だろうか。

 苺花は俺と何の話があったんだろうか。

 椎名が言った携帯の話。それに協力とか言ってたっけ。

「さっぱりわかんねー。意味不明」

 急に怒り出すし、話になんないじゃん。


とりあえず俺は、椎名に電話をかけた。
 



★作戦しっぱいなのだ。
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