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恋にとどくまで~苺花と大和(14)

苺花





 何をやっているんだろう。

 乱暴に閉めてしまったドアを前に、私は脱力していた。

 椎名が協力してくれると言ってくれたことに対して、自分ではこれ以上どうすることも出来ないと思っ

ていた私は、ものすごくホッとしたんだ。

 誰かの力を借りてでも、大和に気持ちが伝えられるかもしれないチャンスだって思った。

 なのにそのせっかくのチャンスを、私は自らの手で逃してしまった。

 椎名と付き合うって、大和に言ってしまった。

 しかも、大和のこと、大嫌いって言ってしまった。

 情けなすぎて、涙も出ない。

 自分のバカさ加減にうんざりする。呆れる。

 椎名もきっと、こんな結果になるとは思ってなかっただろう。

 大和と両想いになればもちろん良かったけれど、ならないとしても私の気持ちを伝えることは、出来た

と思うに違いない。

 こんな風に、何も告げることができないまま、まるで一方的に喧嘩を売ってしまったようなことになる

とは、想像もつかなかったんじゃないかな。

「はあ……」

 ため息混じりに部屋の中に戻った。

 ベッドに倒れるようにして、寝転んだ。

 大和は私を何とも想っていないことだけが、はっきりしたようなものだ。

「諦めなきゃ……なのかなぁ」

 もう一度、ため息とともに呟いたとき、椎名が帰ってきた。

「苺花ちゃん」

 呼ばれたけど、顔を上げる気持ちにはなれない。

 椎名のマクラに顔を埋めたまま、私は黙っていた。

「わけわかんねーって、大和……怒ってた。聞いてもわかんねーって言うだけだったんだ。うまく、伝え

られなかった?」

「うん……」

 声にならない声で返した。

「そっか。ダメだったか」

 椎名が言った「ダメ」と言う一言が、ぐっさり胸に突き刺さった。

 やっぱりもう、ダメなんだ。

 大和とは、ダメなんだってことだよね。

「あのさ、苺花ちゃ……」

「慰めてくれる約束だよ、椎名くん」

 両手をついて、ベッドから身体を起こした。

 椎名の顔をじっと見た。

 困ったような表情。

 それはそうだよね。困るよ。

 私は、いろんな人に迷惑をかけてきた。そしてそれは今も続いている。

 椎名にも迷惑を、かけてしまう。

 一時的に慰められたって、悩みは解消されない。

 そんなの逃避でしかない。

 誰かに頼ってはいけない。自分で、ちゃんと解決しなきゃならない。気持ちの整理をつけなきゃ……。

「これ、使いなよ」

 目の前にタオルが差し出された。

「え……」

顔をあげると、やっぱり困ったような顔で椎名が見ていた。

「泣いてもいいけど、垂れ流しじゃかっこ悪いじゃん」

 私は泣いている。

 そうか、泣いているんだ。

 なんか、息が苦しいと思ったら、泣いてたんだね。

「ありがと……」

 椎名の手からタオルを受け取り、顔いっぱいに覆った。

 椎名は、慰めるような言葉は何も言わなかった。

 私の身体に触れて、慰めるような素振りをすることもなかった。

 泣いているなんて、気付いてもいないように、そっとしておいてくれていた。



 どれくらい時間がたったのか、ようやく気持ちが落ち着いてきた。

「本当だったら、うまくいったよって椎名くんに笑って言うはずだったのに。こんなことになっちゃっ

て、ごめんね」

「大和も大和だよ。僕の説明不足だとしたって、もう少し苺花ちゃんの身になって考えればすぐに気付く

ことなのに。鈍感ってゆーか……鈍感、だよな。それしかないよ」

「鈍感じゃないと思う。わかってるんだと思う。私の気持ちに大和は気付いてる。だけど、迷惑だからわ

ざとそらしてるの」

大和はまだ梨々が好き。梨々意外は受け入れられないんだ。

「もう、諦めようかな」

 ベッドからおりて、洗面所へ行き鏡に顔を映す。

アイラインもマスカラも綺麗さっぱり涙と一緒に流れちゃったようだ。

「苺花ちゃん。これから、どうすんの?」

 背後に立った椎名が鏡越しに聞いてきた。

「帰るよ。ここにいたら椎名くんに迷惑かかるし、帰る」

 振り向いて精一杯の笑顔を作って言った。

「帰るってさ、大沢ってやつが来るかもしれないから帰れないって言ってなかったっけ?」

「そうだけど。もういいよ」

 もう、どうでもいい。大沢がやってきて、殴られたっていいやって気分になっていた。

 それにもう来ないかもしれないんだし。

「ヤケクソ? だったらそういうの、後悔することになると思う。もっと大事にしなきゃダメだってば」

「だったら、椎名くんが大事にしてくれる? 私のこと守ってよ」

「……だから、それもヤケクソなんだって……」

「そうよ、誰でもいいの。椎名くんも私にかかわってると不幸になるよ。だからバイバイ。今までいろい

ろありがとね」

 椎名を押しのけるようにして部屋に戻ると、ほおり投げてあったバックを手に、私は椎名の部屋を飛び

出した。

 後ろから私を呼ぶ声が聞こえた気がしたけど、無視してそのまま逃げるように走った。




★ちゃんと家に帰るかな???
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