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恋にとどくまで~大和と苺花(15)

大和




椎名が言っていた言葉がずっと心に引っかかっていた。

『苺花ちゃんは大和のことを最初から好きなんだ』

 苺花から聞いたから確実だって、椎名は言う。

 本当は、苺花の口から言うべきことで、僕が言うことじゃないけど、と言いにくそうに椎名は続けた。

 椎名の話を俺は、物語を聞くような感覚で聞いていた。

 大沢に壊されて証拠はないけど、確かに携帯のその待ち受け画面が俺の写真だったって言うこと。

 高校の入学当初から好きでいてくれたこと。

 俺はだけど梨々を見ていたから、素直じゃない苺花は気持ちを言えなかったんだって言うこと。

 椎名の口からそれを聞くのは、何とも形容し難い気持ちで、椎名に言えるのにどうして直接言わないん

だと、何だか自分勝手ながら、ムカついていた。

 苺花の口から聞かなきゃ信じられないとは、思わなかった。

 不器用だから。

 知っているから。

 苺花ならあり得ると思える。

 ちゃんと、真面目に受け止めて考えようと思った。

 苺花のことは苦手だと思っているが、呼ばれれば出かけていってしまうし、ヤバイことに巻き込まれた

ときには、本気で心配したし、頼って欲しいと思ったこともあった。

 ほおっておくと、何をしでかすかわかったもんじゃないし、俺でやれることなら、やってやろうかと思

ったこともあった。

 それはたぶん、好きだからと言う感情よりも、同情的なものに近い感情だと認識している。

「バカすぎて……ほっとけない」

 どこかで誰かが言ってたような言葉だけど、妙に今の自分の気持ちとぴったり合った。

 すんなり話し合えるとは思わない。

 苺花が素直に認めるとも思えない。

 簡単に話がまとまるなら、とっくにまとまっているはずで、こんなに他人を巻き込んで、ややこしくな

ってはいないだろう。

 だけど、俺は苺花に会おうと思った。

 会って、話を聞きたい。

 苺花は逃げるかもしれないけど、椎名が言うように、苺花が俺のことをずっと想ってくれていて、その

せいで前に進めず、バカなことばかりしているとしたら、やはり知らない振りは出来ない。しちゃいけな

いような気がした。

 責任を感じる、なんて言うと傲慢かもしれない、自惚れかもしれないけれど、まったく無関係ではない

はずだ。



 友情、同情。

 その延長線のような感情。

 保護者的感覚なのかもしれない。


 そんなことを考えていた矢先、梨々から急に電話がかかってきた。

 久しぶりだったから、ドキドキしてしまった。

 まだ、ちょっと意識しているらしい俺。

 『あのね、大和。実は相談っていうか、聞いて欲しいことがあるのよ』

 いい? と聞いてきた梨々の声は、以前と何も変わらない。

「俺で良ければ何でも言っていいよ」

 あの頃のようなノリで返した。

『ありがと。じゃあ、言うね』

 そう言って続けた梨々の言葉を、俺は問い返した。

「は? 苺花が……浮気?」

 そうみたいなの、と言うと梨々は電話の向こうで涙ぐんでいるらしく、ぐすんと鼻をすするような音が

聞こえた。

『梨々、苺花が信じられない。涼だってそうよ。あっさり苺花に騙されちゃって……。梨々、どうしよ

う。どうしたらいい?』

 俺だって信じられない。

 まさか苺花が梨々のダンナである涼と不倫だなんて。

 涼だってそうだ。

 あんなに梨々を大事にしていたじゃないか。

 それほどまでに苺花が魅力的に映るのか、苺花の誘惑が上手いのかわからないが、そんなことは今、ど

うだっていい。

「梨々、大丈夫か? それ、本当のこと? ちゃんと証拠があるんだろうな」

『梨々、見ちゃったの。涼が……苺花をぎゅって抱きしめてるところ。間違いないよ』

「抱きしめて……そしてどうした?」

『……梨々に気付いて、はっとして放れた。苺花はそのまま走って帰っちゃったけど、涼は梨々に弁解す

るの。何もないなんて嘘つくのよ』

 ちょっとだけ、力が抜けた。

 抱きしめただけ? 弁解?

 それって、本当にそれだけなんじゃないだろうか。

『涼が信じられなくなっちゃった』

 ますます苺花に会って、確かめなきゃいけない気がした。




★短いけど続く
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