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恋にとどくまで~苺花と大和(17)

苺花



大和が幸せになる方法を考えたとき、梨々のことが思い浮かぶ。

大和は、梨々とじゃなきゃ幸せになれない。

梨々は、涼と結婚したらいけなかったんだ。

別れさせなきゃ……。

そんなことを思って、私は梨々と涼の住むマンションに出かけた。

マンションのエントランスに備え付けのベンチに腰掛け、涼が仕事から帰ってくるのを待ち伏せていた。

「あれ、苺花ちゃん?」

 帰ってきたばかりの涼に、気付かれ、声をかけられるのも計算の上のこと。

「何してるの。梨々に用事?」

「別にっ。私もう帰るし。何でもないですから」

 泣き真似だって、出来る。

 心配して涼が追いかけてくるかどうかは、計算できなかったけれど、

涼は私の思い通りに動いてくれた。

「苺花ちゃん、どうし……」

「ほっといいてよ!」

 取り乱し、暴れて、泣き崩れる素振りをすれば、大抵の男は私の身体に手を伸ばし、

抱きしめて慰める。

 面白かった。

 面白いように、涼が思うままに動くんだから。

「私……」

 涼の胸に飛び込むようにして、そこに顔を埋める。

 涼の手が背中に回る。

 撫でられる手に、落ち着きを取り戻した振りで顔を上げ、じっと見つめて相談を

持ちかける予定だった。

「何してるのよ!」

 驚いて、涼から放れた。

 計算外に、梨々が現れたのに私はひどく戸惑ったけれど、これって都合が良すぎる展開じゃないかと内

心、笑っていた。

 二人の前から、逃げるように走り去りながら考えた。

 浮気現場を梨々に見つかってしまった涼。

 少しずつ、涼の気を惹く作戦だったのに、以外に早く引き離せるかもしれない。

 梨々のことだから、涼を責めて泣いて……。

 すぐに涼に連絡を取って、謝ることを口実に会ってもらおうと考えた。



 私の計画は、面白いように思い通りに進んでいった。

 これで、うまくいけば梨々と涼は離婚になって、傷心の梨々を大和が慰めて、上手く行くの。

「大和の幸せのためよね」

 楽しかった。

 たとえ自分が幸せになれなくても、大好きな大和が幸せに笑う顔が見られれば

それで幸せだと思っていた。


 どうせ、大和とは付き合えない。


 そのときの私は、自分では気付いていなかった。


 何かがおかしいと、全く気付いてなかった。


 壊れてたんだと思う。
 

 そんな私を救えるのは、大和だけだったってこと。

 それに目を背けていたんだってことを、気付かずに動いていた。



 私の呼び出しに応じて、涼が来てくれた。

「この前はごめんなさい。梨々、怒ってたでしょ」

 申し訳なさそうに謝ってみたものの、涼の反応は意外なほどあっさりとしていた。

「あれくらいどうってことないよ。気にしなくていい」

 ハハハと軽く笑われ、何事もなかったようにさっき買った缶コーヒーを口にしていた。

 涼の車のサイドシート。

 梨々の指定席であるだろう場所にも、どうってことなく座らせてもらえた。

 愛する妻の友達。

 それ以上にもそれ以下にも思われていない。

 涼にとって、私は気にもとめられない存在なんだろう。

「海が……」

「え? 海?」

 ポツリと呟いた私の言葉を、涼が繰り返す。

「海浜公園。行きたい」

 涼の顔を窺うように見て言った。

「連れてって? お願い」

 懇願するようにじっと見つめて言った。

 大抵の男は、こうやって見つめると、顔を近づけてくるかさっと目をそらすかのどちらかの行為をして

くれる。

「いいよ」

 軽く笑って、逆にじっと見つめられた。

しばらく見つめ合うような格好だったけれど、先に目をそらしたのは私のほうだった。



★次回も苺花編で。
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