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恋にとどくまで~大和と苺花(19)

大和



 いきなり「なんか用?」と聞いてきた苺花からの電話を受けて、かけてきたほうが用事あるんだろうと

言いかけ、口をつぐんだ。

 そうだ。俺が連絡して欲しいと頼んでおいたんだ。

「話があるんだ」

「何の話?」

「電話じゃ言えない。会えないかな」

「会いたいの? 忙しいんだけどね」

 素っ気ない口調で苺花は言う。

 一瞬、忙しいならいいよ、と言いそうになったけれど、そこはぐっと我慢をして、低姿勢で言った。

「忙しいのに悪いけど、大事な話なんだ」

 どうして俺は、こんなに気を使わなければならないんだ。

 そうだ、他のひとに苺花が迷惑をかけるのがいけないんだ。

 それを俺が食い止めなければいけないんだ。

 梨々のため、涼のためでもある。

 ……なのかな?

「いつ?」

「いつにしようか」

 連絡を待ってはいたものの、いつになるのかわからなかった。

 いきなり、じゃあ今から? って言うのは気が早いだろうか。だけど早く解決したい気もするし。

「じゃあ今から会おうか」

 迷うヒマもなく、苺花のほうから言ってきた。

 俺は、忙しいのに悪いね、ともう一度言ってから、苺花の家まで迎えに行くことになった。

 夜なんだし、女の子に出て来させるのは危ないからなんだ。

 決して「じゃあ、迎えに来なさいよ」と命令されたからじゃない。




 苺花の家のチャイムを鳴らすと、出てきた苺花の母親が俺を家の中へ入るように誘った。

「どうぞ。苺花の部屋は2階に上がって左側よ。右側はお兄ちゃんの部屋だから、間違わないようにね」

 そう言うと、母親はさっさと奥に引っ込んでしまった。

 玄関先でじっとしていても、どうしようもないので、俺は小声で「お邪魔します」と呟き、

靴を脱いだ。

 階段をあがり、間違わないように左のドアの前に立つ。

 ノックをすると、中で苺花が動く気配がした。

「苺花……俺だけど」

 ドアに顔を寄せ、声をかけてみる。

「俺って誰?」

 ドア越しに苺花が答える。

 誰って、声でわかるだろう。と思ったが俺はちゃんと名乗った。

「大和だけど」

「大和が何の用事かしらね~」

 苺花はドアを開けてはくれず、からかうような口調で言った。

 一瞬、ムッとしそうになるが、ぎゅっと手を握りつつ、怒りを抑える。

「話があるって言っただろ。さっき電話で苺花が迎えに来いって言っただろ。だから……うわあっ」

 いきなりドアが開き、ドアに限りなく近づいていた俺は、危うく前に倒れそうになった。

 すぐ目の前に苺花がいて、俺をじっと見上げている。

「あの、苺花」

「外に出る? それとも中で話す?」

 唐突に聞かれ、返答に詰まった。

「いいよ。入りなさいよ」

 苺花は俺に中に入るよう、目で合図した。

「で、何の話? 説教なら間に合ってるからね」

 部屋の中に入り、苺花はまっすぐベッドに向かった。

 そこに腰掛けると、また俺のほうをじっと見つめてきた。

 あまりにじっと見つめられ、何も悪いことをしたわけでもないのに、目を合わせていられない気まずさ

があった。

 視線を外して部屋をチラリと見る。

 カーテンは、苺の模様だった。

 そういえば、苺花が座っているベッドカバーも同じ模様がついている。お揃いなんだ、とどうでもいい

ようなことを考えた。

 そして、ふと苺の香りが鼻をかすめる。

 視覚的なものだろうか、錯覚? いや、匂いだからこの場合……錯臭?

 って、そんなのないか。

「涼のこと、説教しにきたんでしょ? 梨々に頼まれた? それで、私に言いにきたんでしょう。梨々を

不幸にすんなって。涼を誘惑するのはやめろって。そう言いにきたんだ?」

 苺花に目を戻すと、いつもの苺花の悪戯っぽい笑みとぶつかる。

「涼を……誘惑したのか、苺花」

「したよ。涼が梨々と別れればいいって思ったんだもん。そうしたら大和、梨々と付き合えるでしょ? 

大和のためなんだから、大和は喜ばなきゃいけないのよ」

 まるで悪いなんて思っていないような口ぶりに、俺は戸惑った。

 そういうことを、本気で考えて実行しようとしたことに対し、涼を誘惑した理由がわかったこと以上

に、苺花の精神面が心配になった。

「苺花は、俺のために……してくれようとしたってこと?」

「そうよ。大和には幸せになって欲しいんだから」

「それは……。そう思ってくれることは、嬉しいけど。だけど涼はどうかな。梨々が好きなのに、別れた

ら悲しいんじゃないかな。それに梨々だって、好きなのは涼なんだから、別れたって俺と付き合うわけで

もないだろうし……」

 上手く伝わっているだろうか。

 伝わってないかもしれない。

 だけど、これ以上苺花がバカなことを続けるのはやめさせなければならないと思う。

 本当は、大声で怒鳴り散らしたい気分だった。

 バカなことするなって、言ってやりたかった。

 だけど、カッとなったら、きっとまた苺花も反撃してくるだろう。そうなるともう、話し合いどころで

はなくなってしまうのは、何度も経験しているからわかる。

 ものすごく自分を抑えながら、俺は苺花に優しく言い聞かせようと試みた。
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