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恋にとどくまで~大和と苺花(20)

大和



「苺花が、俺の幸せを願ってくれるのは、どうして?」

「そんなの簡単よ。友達だからだよ」

 あっさりと苺花は答える。

 梨々や椎名が言っていたことが本当ならば、苺花は俺が好きであり、俺の幸せを第一に考えようとして

くれているってことだ。

「友達ってだけじゃない気がするんだ」

 苺花に、本当の気持ちを確かめたい。

 苺花は俺をあっさりと納得させてしまうほどの言い訳なんかいくらでも言えると思う。

理屈で自分の気持ちに蓋をして、誰にも明かさずにいるつもりなのだろうか。

「大和、痛い……」

 知らず知らずのうちに、俺は苺花の腕をきつく握り締めていたらしい。

困ったような表情で、苺花は俺を上目遣いで見ている。

 言葉で言わせようと思ったって、苺花は言わない。だったら身体に聞いてみるのはどうだろう。

 でも、言わせてどうする? もし、苺花が白状したら、その後どうするつもりなんだ。ごめんって言う

のか? 無理やり言わせておいて、ごめんと言って断るのか?

「痛いよ、大和」

 顔を歪めた苺花を、気付いたら抱きしめていた。

「大和、どうしたの。大丈夫?」

 騒ぎもせず、苺花は大人しく俺の腕の中にいる。

「どうもしねーよ」

「じゃあ、放してよ」

「苺花が正直に白状したら、解放してやる」

「正直って?」

「苺花、俺が好きだろ?」

 苺花の体が、動揺したように一瞬震えた。

「……友達だからね」

「そういう意味じゃねーよ」

「変だよ、大和」

「うるせーんだよ。素直に吐けば解放してやる」

「……何のこと? 何を素直に言えばいいわけ?」

 やっぱり俺の思い違いだろうか。

 俺だけじゃない。

 梨々も椎名も、苺花の気持ちを勝手に誤解している。

 苺花が俺を好きなのは、あくまで友達としてであって、それ以上でもそれ以下でもない。

「……大和」

 苺花が両手を俺の背中に回した。

「苺花……」

「大和を……困らせたくない」

 苺花の身体が小刻みに震える。

 背中に回した指が、ぎゅっと俺の服をつかんだ。

「だから、言わない。何も言わない。私は大和の……一番の友達でいたいの。永遠にずっと友達とし

て……ずっと大和の幸せを見てる」

 もしも俺がすっげー鈍感な男だったとしても、苺花の言葉に隠された気持ちに気付かない程ではないと

思う。

 はっきり言わないことで、どうにでも解釈してもいいと、俺に負担をかけないように、言っているんだ

と思った。

 それとも本当は気付いて欲しい?

「大和、身体を……放して」

 苺花が俺の背中から手を放す。そしてそっと押しのけるように、俺の身体を押した。

「苺花……」

 俺を見上げた苺花の目が、涙で濡れて潤んでいた。

 そして、瞬きをひとつした習慣に落ちた涙の粒を見たとき、俺はとんでもないことをしでかしたんだと

気付いた。

「ガマン……してたのに」

 泣くつもりはなかったんだと、苺花が言ってうつむいた。

「大和は、ずっとずっと梨々が好きで、梨々しか見てなくて、私が見てたことも、他の女子が見てたこと

も全然気がつかないくらい梨々しか見えてなかった……」

 足元に視線を落としたまま、苺花が涙混じりの声で自分の気持ちを話し始める。

 いつもの冗談じゃない。

苺花が、真面目に本当のことを話してくれようとしている。

不覚にも心臓がドキドキと音を立て始める。

からかわれるのも嫌だけど、こんなふうにマジなのも、どうしていいかわからなくなるものなんだな。

言葉を途切れさせたまま、苺花は黙り込んだ。

続きを待っているべきか、それとも何か言ったほうがいいのか。

シンとした気まずい空気に感じるのは、考えすぎだろうか。

 目の前の苺花を見つめたまま、苺花がもし好きだと言ってくれたらどう答えようか考えた。

 自分の気持ちがわからない。

 苺花のことは気になるし、ほっとけないとも思うし、頼られて悪い気もしない。

 嫌いと言うわけではなく、どっちかというと好きなんだろうけれど、それが恋愛感情ではないとは漠然

と感じている。

 友達としての好き、なんだろうと思う。

 梨々に対して感じていた気持ちとは、違った。

 だけど──。





続くのでした。。。
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