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恋にとどくまで~大和と苺花(21)

大和


「あのさ……苺──」

 言いかけたとき、ちょうど俺の声と重なるように、苺花の母親がドアをノックした。

「ホットケーキが焼けたのよ。食べに降りてきなさいよ」

 返事をする前にドアが開き、俺と苺花を交互に見ている。

 その表情から、何かを疑われているようで、ちょっと気まずい。

「行こう、大和」

 苺花が立ち上がり、先にドアに向かう。

 母親の体を押すようにしながら、一緒に階段をおりてゆく。

 その後を追って下におりると、リビングには父親の姿もあった。

「あ、こんばんは。お、お邪魔してます」

 咄嗟のことで緊張し、中途半端な挨拶になってしまった。

「君が噂の大和くんかー」

 苺花の父親は、さっきの母親と同じく、興味津々な目つきで俺を上から下までジロジロ眺め回した。

 ものすごく居心地が悪い。

 逃げ出したい。

 何で噂になんかなってるわけ?

 苺花があれこれ喋っているのか?

「もう、そんなところに突っ立ってないで、座りなさい」

 苺花の母親に促され、空いている苺花の隣に腰を下ろした。

「ちょっとトイレに行ってくる」

 俺が座った途端だった。

 苺花が立ち上がり、さっさとリビングを出て行った。

 ああ、待って……。

 俺をひとりで残さないでくださいー、と言いそうになった。

 目の前に座る父母の視線が俺に注がれているのは気付いているけれど、顔が上げられなかった。

「大和くん」

 母親に呼ばれ、ドキンとして顔を上げた。

 ふたりの目が、俺をじーっと見てた。

 逸らせないほどにじーーーっと。

「苺花のこと、よろしくお願いね」

「頼んだよ、大和くん」

 ふたりともに目の前で頭を下げられた。

「え……。あ、はい」

 戸惑ったなんて生易しいものじゃなかった。

 混乱してしまった。

 よろしく? 頼んだよ?

「あの子、いろんな男の人と付き合ってたのよ」

「はあ……」

 それは良く知ってます。と思いながらうなずいた。

「苺花はね、ずーっと大和くんが好きだったの」

「そう。だけど大和くんは、苺花を友達としか思ってないんだろう? 好きな女の子がいたんだろう? 

でも、その子は結婚して──」

 今までの経緯を、苺花の両親は詳しく知っていた。

 それって、苺花が詳細に話していたってこと?

 苺花の家って、放任に見えていたけれど、実は恋愛相談も出来るほどの仲良し家族だったと

言うことだろうか。

「大和くんは、少しも苺花を好きじゃないの?」

「少しくらい好きって思っているだろう?」

「嫌いなら仲良くしてくれるわけないわよね」

「友情とか言っているが、実はもう好きになっているだろう?」

 次々に訊ねられて、正直なところ混乱はピークに達していた。

 苺花はどうしてトイレから帰ってこないんだろう。

 もしかして、最初からこうなることを計画していたのか。

 家族ぐるみで俺を陥れようとして……。

「大和を責めないでよっ」

 助かった。と言うのが正直な感想だった。

 苺花が頬を膨らましながら、リビングに入ってきた。

 ものすごく長い時間、トイレに行っていたと思っていたが、そうじゃなかったらしい。

 緊張の時間は、長く感じるものだから。

「だって、苺花……」

「無理やりじゃ嫌なの。大和が自分から好きだって思ってくれなきゃ嫌なのよ!」

 苺花の唇が震えている。

「大和にその気がなかったら、付き合っても楽しくないよ。虚しいだけだよ。同情で付き合ってくれるな

ら、付き合いたくないよっ……」

 取り乱してしまった苺花をなだめる両親。

 泣いている苺花。

 俺はどうすればいいんだろう。どんな言葉をかけてやればいいんだろう。

 口を開こうとしたけれど、言葉が何も出てきてくれなかった。

そして、何も言ってやれなかった俺は、苺花に強引に追い返された。




──やっぱり大和は、私のことなんか何とも思ってくれていないんだ。

心配はしてくれるけれど、それは同情でしかない。恋にはならない。

私の気持ちは大和に届かないんだ。



 泣きながら苺花が言った言葉が、耳から頭から離れない。

 苺花の家の前で、閉じられた玄関の扉を、ただ恨みがましく見つめているしか出来なかった。

 どうしたらいいのか、考えがまとまらない。

 同情じゃないとは言い切れなかった。

 苺花を、好きだと言って受け入れてやれなかった自分が悲しかった。





♪続きます♪
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