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恋にとどくまで~苺花と大和(23)

苺花




9時半ごろ大和から電話があり、カラオケに行くことになった。

「今日、バイト代が入ったんだ。おごるよ」

 家まで迎えにきてくれた大和は、今までと何の変わりもない調子で私に言った。

「泊まるなら、連絡するのよー」

母が笑いながら私たちに言った。

 普通の親だったら、こんな時間に男の子と出かけることを許すわけがないよね。

 大和は信頼されているんだ。

 一週間前、あんな風に追い出すような形で別れてしまったけれど、大和のほうから

ちゃんと両親に謝りの電話が入ったと聞いている。そういうところが高ポイントなんだろうと思う。

 私には、何もなかったけどさ……。

 だけど今日こうして普通どおり会えた。

 会って、態度が変だったり上手く喋れなかったりするんじゃないかと思っていたけれど

杞憂に終わってほっとした。

「じゃあ大和くん、よろしくね」

 いってらっしゃい、と手を振る母に、大和は笑顔で会釈していた。





 歌いまくるはずだったのに、私も大和も、いつものようなノリがなかった。

 余計にストレスが溜まったような気分のうちに、二時間が過ぎた。

「バイト代、入ったって言ったよね」

 歌い終わって支払いを済ませてくれた大和に、私は言った。

「泊まって行こうか。高級ホテル」

「高級ホテル?」

 いつもなら、アハハと冗談で流すはずなのに、今日の大和は戸惑ったような表情を浮かべた。

「お母さんが、泊まってきてもいいって言ったじゃん」

 ふざけた調子で大和の顔を覗き込みつつ、ふふっと笑って見せると、やっと大和は冗談を

察してくれたらしく、ホッとしたように答えてくれた。

「親子で冗談好きだよなー」

「本気だよー、冗談なんか言わないもん」

「そっか。じゃあ行こうか」

「うんうん。行こう行こう~」

 わざとらしく腕を組んでみる。

 内心、ドキドキだった。

 大和の腕から伝わってくる温もりに、クラクラする。

 心臓の音が、大和に聞こえないかとか、鼓動が腕を伝わってばれてしまうんじゃないかとか、

そんな心配が湧いてきた。

「希望のホテルって、あるの?」

 歩きながら大和が私に聞いたから、

「夜景が綺麗に見えるホテルがいいなー」

 軽く笑って答えた。

「歩いていける?」

「行けないよー、遠いもん」

「じゃ、タクシー拾おうか」

 大通りのほうに目を向ける大和の横顔を、私は見つめた。

「あ、ちょうど来た。あれ止めよう」

 手を上げた大和に、ドキンと心臓が反応する。

 まさか、本気でホテルに行くつもりなんだろうか。

 目の前で止まったタクシーのドアが開く。

「苺花、先に乗る?」

 大和の手が、背中に触れた。

 そっと押されるようにして、先にタクシーに乗せられる。

 すぐに大和が横に乗ってきて、ドアが閉まって、大和が行き先を告げる……。

 頭の中が混乱したようにぐるぐる回る感じがした。

 冗談だって、私言ったよね?

 大和も冗談好きだよなって、軽く笑ったよね?

 冗談だよね? ホテルじゃなくて、夜景を見に連れてってくれているだけよね?

 いろんな考えが一瞬のうちに頭を駆け巡った。

 膝の上に置いた手は、緊張でぎゅっと握りしめたままだ。

 大丈夫。

 もしホテルに入ったとしても、大和は無理やり何かするようなひとじゃないし、

それにホテルに入るのも初めてじゃないんだし、夜景を見てバブルバスにして遊んで、

ゆっくり楽しめばいいんだし……。

「苺花……」

 大和の声がすぐ近くで聞こえる。

 ハッとして顔をあげると、間近で大和の目と合った。

「ひゃっ」

 小さく悲鳴のような声が出てしまって、慌てて顔を背ける。

 と同時に私の握り締めた手に、大和の手が重なった。

 身体中の血液が、沸騰しそうになった。

 どういうこと、どういうこと?

 マジなの?





つづく♡
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