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恋にとどくまで~大和と苺花(25)

大和



 怒って走り去ってしまった苺花を追いかけたが、すぐに見失ってしまった。

 苺花が怒るのは、当然だと思った。

 苺花が言った「高級ホテルに行こう」というのは、冗談なんだとわかっていたし、

俺もそれに乗ったつもりだった。だけどいつの間にか苺花の中では冗談じゃなくなっていたようで、

それをわかっていながら照れ隠しに、冗談のつもりで言葉を続けてしまった。

 自分はいつも冗談で俺のこと振り回すくせに、俺が冗談を言うとマジになって急に怒り出すんだ。

「話は最後まで聞けっての」

 ため息混じりに吐き捨てる。

 だいたい、いつもそうだ。話をしようとすると茶化される。そらされるし、からかわれるんだ。

 真面目に話そうと思っても、すぐ遮るんだ。

 それはたぶん、俺の言い方が悪いせいなんだろうけど、それだけじゃないと思いたい。


 苺花を見失った場所からしばらく探し歩いていたが、苺花は見つからない。

タクシーに乗って帰ってしまったんだろうか。

 ちゃんと家に帰っていればいいけれど、苺花のことだ。

 やけになって、そのへんの男について行ったかもしれない。

「ああもう、心配ばっかりかけやがって」

 確かめなければ気が済まない。

 ちょうど走ってきたタクシーに手を上げて止めると、苺花の家の住所を運転手に告げた。

 シートにもたれ、タクシーに揺られながら考えた。

 どうも、この前苺花の家に行ってから変だ。

 苺花のことが気になってしょうがない。

 両親に頼まれたせいだろうか。それとも椎名に煽られて確信してしまったのか。

 友情でも同情でもない、愛情。

 好きかどうかわからない、なんて苺花に言ったけれど、本当はもうわかっているのかもしれない。

 さっき一緒にタクシーに乗って、隣にいる苺花の体温を少し感じて、何故だか急にドキドキした。

 苺花に触れたいって思った。

 気付いたら苺花の手を握ってた。

 冗談に乗せてでも、苺花を抱いてみたいって思ったんだ。

 それって、好きだからだよな?

 たんなる好奇心とか、欲求不満だからじゃないよな?

「わかんねー……」

 そこまで思っても、自信がなかった。

 ……そっか。

 自信がないんだ。

 苺花はいろんな男と付き合ってた。しかもみんな、わりとレベルの高い男ばかりに見えた。

 俺よりみんな年上で、エッチも上手で……。

「やっぱ、ソコだよな~」

 今まで以上に大きな深いため息が出た。

 はっきり言って、ソレには自信がない。自信以前に経験がなかった。

 好きな相手としか、やりたくなかった。ずっと梨々が好きだった。結局梨々とは付き合えなくて、梨々

が結婚した後も想いを引きずって、新しい恋も出来なかったんだ。

 言い訳みたいになってしまうけれど、しょうがないんだ。

 来るべきときのために、一応研究はした。だけど、頭でわかっているのと実践するのとでは、大きな差

があるに違いない。

 余計な知識が多いほど、うまくやれなかったときのことを考えると、不安が増してしまう。

 抱きたい、抱いてみたいと思ったものの、抱けなくて良かった、ホッとしたって思っているのも

事実なんだよな。

 経験豊富な苺花だし、エッチの良し悪しで彼氏を決めるようなヤツだし、俺なんか明らかに……。

『下手くそ』

 苺花にぐっさり言われる場面が目に浮ぶようだ。

 いっそ、そこのところはなくていいように、「清い交際」なるものを目指してみたりして。

「それで済まないよなー」

 何度目かのため息と独り言を呟いたとき、苺花の家が見えてきた。





 苺花の母親は、玄関を開けるなり、俺に言った。

「苺花なら帰って来ないわよ」

「あ、連絡ありましたか?」

「あったわよ。大和くんと会いたくないから、お友達のうちに泊まるんですって。大和くんが来たら、バ

イバイって伝えるように言われたんだけど、バイバイでいいのかしら?」

 苺花の母親が、探るような目つきで俺を見ている。

 いいのかしら? って聞かれても困る。

 たぶん、良くないからここまで来たんだし、このまま「そうですか」って引き下がるのも軽い気持ちな

んだって思われてしまうだろうし。

「友達の家、教えていただけませんか?」

「ダメよ」

「ダメ……ですか」

 あっさりと却下され、がっくりとうな垂れる。

 足元に目を落とし、どうしようと思い悩んでいると、ふいに背後から声が聞こえた。

「大和くんじゃないか」

 この声は、苺花のお父さんだ。

 振り返り、俺は頭を下げる。

「こんばんは」

「どうしたんだ。こんなところで立ってないで、中に入りなさい」

 背中を押されたが、それを母親が止める。

「ダメなのよ、あなた。苺花からダメだって言われているの。大和くんには、帰ってもらわなきゃいけな

いの。約束なのよ」

「どういうことだ?」

 苺花の両親が、俺を間に挟んだ格好のまま会話をしている。

 どうしてダメなのか、一部始終を詳細に伝える母。そしてそれを真面目な顔で聞きながら

頷いている父。

 居心地が悪いながら、こんな風にコミュニケーションが取れていることに感心してしまう。


 仲良し家族なんだなって。





続く~(≧▽≦)/
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