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【25】我慢。。。

何で急に来るんだろう、もう終わったはずではなかったのか。

それとも、何か文句でも言いたくて来たんだろうか。

今さら何よ、と思う反面、まだつながっていた透弥との関係に

理花は少しだけ心が浮き立つのを感じていた。

「さっき、駐車場で待ってるってメールがあったんです」

「ああ、カメラマンの木田さんが言ってた、モデルみたいな彼氏?」

「中原主任まで知ってるんですか?」

「どんなヤツか興味あるな」

一緒に駐車場まで歩いて行きながら、中原にからかわれる。

そして、駐車場が見えるところまで行くと、遠くからでも透弥の姿が確認できた。

「あ、もしかして彼?」

車を背にしてもたれかかるようにして立っている透弥は、

少しうつむき加減で、気だるそうにしている。

いい具合に夕日がバックにあって、すごく絵になる姿だった。

「想像以上にカッコイイね」

中原が透弥に見惚れている。

「はあ、まあ……」

「同じ男として、完敗って感じだな」

「完敗ですか? そんなことないですよ」

顔だけを見れば、そうかもしれないけれど、男としてだったら、

絶対的に中原のほうが勝ってると思う。

精神的にも人間的にも、中原の方が大人であることは間違いないだろう。

そう思ったとき、透弥がこっちに顔を向けた。

「あ、じゃあ高浜さん。おつかれさま」

中原はハッとして言うと、自分の車のほうへ歩いて行った。

「あいつ、ムカつく」

そばに行くとすぐ、透弥はそんな言葉を口にした。

「何よ急に」

「前にモデルやったやつと違うよね」

「うん、ちょっといろいろ手違いで臨時の……」

「別に理由とか、どうでもいい」

じゃあ聞くなよ、と思いつつ理花は黙っていた。

透弥に助手席に乗るように言われ、気まずさを感じつつ理花は車に乗った。

透弥はずっとふて腐れたような表情のままで、理花の家に着くまで無言だった。

話があったんじゃないのか、とか。

何で急に来たのよ、とか。

もう理花の家に着いたのに、下りてもいいのか、とか。

いろいろと聞きたいことはあったものの、気まずい空気の中、言い出せずにじっと座っていた。
「理花」

「な、何?」

急に話しかけられ、ドキンとしてどもってしまった。

「着いたんだけど、下りないの?」

「……おりる」

下りても良かったらしい。

シートベルトを外し、ドアを開ける。

地面に足を着いてから透弥を振り返ると、

透弥はハンドルを握ったまま、じっとフロントガラスを見つめている。

じゃあねって言って、車のドアを閉めたらそのまま走り去ってしまいそうな雰囲気だ。

けれどそれでは、透弥が会いにきた意味がわからない。

理花は思い切って透弥を誘った。

「透弥くんも、下りない?」

けれど透弥はまっすぐ前を向いたまま、口を尖らせた。

「怒ってるの?」

「勝手に決めつけんなよ」

言い方が怒ってる。怒ってるように見える。

「ごめんなさい」

けれど理花は謝った。

「だから、怒ってんじゃないのに、謝るなよ」

透弥がこっちを向いた。

明らかに怒ってる顔だ。

「ごめ……」

また謝りそうになったけれど、ぐっと言葉を飲み込む。

「理花が俺に謝ることがあるとすれば、樹のことだよね」

そうだ、透弥はまだ誤解していたのだ。

怒っているのは今日のことではなく、樹のことでずっと怒っていたわけだ。

「だから、何度も言ってるように、樹くんのことは誤解なんだよ。透弥くんが

思ってるようなことは何もないし、功至くんが見たのも、たまたま遊びに来てたときのことだし」

「俺が思ってるようなことってどういうこと? 俺がどう思ってたかなんか、理花にわかるわけ?」

「それはわかんないけど」

「どう思ってたと思ってたのか、言ってみろよ」

泣きたくなってきた。

「泣いて誤魔化す気?」

何で透弥は、こんなにイジワルなことを言うんだろう。

怒っているから?

樹と何かあったと思って怒っているということは、何もなかったことが証明されれば

許してもらえるんだろうか。

「透弥くんが、何を思っているかわからない。だけど、透弥くんや功至くんが、

わたしが二股してるって思ってるのは誤解で、樹くんとは何もないんだよ。樹くんにも

聞いてみてくれればわかると思う」

「樹には、聞いたよ。何もないって言ってた」

「じゃあ、誤解は解けたんだよね?」

「……どうかな」

言葉だけでは信じられない?

「どう言えば、信じてくれるの?」

「……まあ、いっか」

透弥は大きなため息とともに言った。

そしてシートベルトを外すと、車からおりて理花のそばに立った。

「何もなかったって証拠もないけど、この際しょうがないよね。

信じなきゃ終わりだし、忘れることにする」

「ありがとう」

理花は言ったものの、何だかとても腑に落ちない。

信じなきゃ終わりってことは、透弥は理花との関係を終わりにしたくないと

思っていることがわかる。だけど、それはしょうがなくなのであり、樹とのことを

信じてくれてないと言える。

「今度やったら、終わりだからな」

「うん、わかった」

しまった。

これでは、樹とやったって言ってるようなものだ。

わかった、ではなく、もっと違う言葉を探したけれど、そうすれば再び

「誤解だってば」というところから繰り返さなければならなくなる。

「今日、理花の部屋に泊まってく。いい?」

「うん」

せっかくいい雰囲気に戻ったのだから、理花が我慢すればこの場は丸く収まるのだ。

我慢我慢。

付き合って行きたいのならば、我慢することも必要なのだ。

理花は、納得行かないながら、透弥と仲直りする道を選んだ。



続く。

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