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恋にとどくまで~大和と苺花(27)

大和



 椎名の部屋のドアをノックしたとき、すぐに返事がなかったけれど、

ドア脇にあるキッチンの窓から明かりは漏れていたから、留守じゃないことはわかった。

 しばらく待ってもう一度チャイムを鳴らしてみると、今度は中から返事が聞こえた。

 それでもなかなか開かないドアに、取り込み中なのかもしれないと、咄嗟に察した。

 悪いタイミングで来てしまったのかもしれない。

 もう一度チャイムを鳴らして、出てこなかったら諦めようと思ったとき、

ドアが開いて椎名が顔を出した。

「うわあ、大和」

 大袈裟に驚いた様子の椎名は、何か隠しているようだ。

 やっぱり女、だろうか。

「来ちゃヤバかった?」

「や、いやそーゆーんじゃないけど、そーゆーんじゃ、あるかも?」

 椎名は後ろ手にドアを閉めると、外に出てきた。

 椎名の髪は濡れていた。

 ふんわり香るのは、石鹸の香りだろう。

「風呂入ってたのか?」

「うん、そう。チャイムが鳴ったとき、裸だったからさー、慌てちゃったよ」

「ひとり?」

「え、うん。そうだよ、ひとり」

 はは、と椎名が笑った瞬間にドアが開いた。

「椎名、友達か?」

 中から顔を出したのは、女じゃなかった。

 椎名と同じように、お風呂からあがったばかりらしいその男は、俺をチラッと見てから、

椎名に目を戻す。

 どう見ても同年代には見えない。

 誰だろう、父親にしては若すぎる気がした。

 その男は無言のまま一旦奥に引っ込んだ。そして出てきたときにはスーツを着ていて、

やっぱり社会人だと納得した。

「じゃあ、また来る」

 そう言って椎名の頭を撫でて、その男は帰って行ったわけなんだけど、

取り残された椎名に、俺は聞いた。

「誰? 俺、もしかして邪魔……したかな?」

「いや、大丈夫。もう帰るところだったし」

 大丈夫、と言うわりにその笑顔は引きつっている。

「お父さん?」

「えっ。あ、ああそう。お父さん。オヤジ。時々来るんだよね」

「風呂、借りに来たとか?」

「あー、えっとさ。どうせいつかばれることだから、言っちゃうけどさ」

 椎名は目を泳がせながら俺に言った。

「付き合ってるんだよね」

「へえ……」

 誰と? と聞き返すのを一瞬ためらった。

 俺の勘違いじゃなければ、さっきの男とだろう。

「あれ、驚かない? 大和、そういうの、平気?」

「さあ、どうなんだろう」

 平気? と聞かれたって平気だよって笑って済ませられるほど、そういう現実を

目の前にしたことがあるわけではない。

 むしろ、初めてだ。

「いいよ、無理しなくていいから。これで友達なくしたこと結構あるから、大和も嫌だったら、

友達やめてもいいからね」

 椎名は早口で捲くし立てるように言うと、勝手にドアを閉めようとする。

「じゃあな」

「って、おい、待てよ、椎名」

 閉じかけたドアに体を割り込ませ、中に入った。

「用事があって来たんだ。そうだよ、おまえに文句言ってやろうと思って来たんだからな」

 苺花のことが、気になっていた。

「文句?」

「そうそう。椎名が俺を煽るから、苺花と気まずくなったんだよっ」

 本気でそんな風に思っているわけではなかったけれど、椎名も話を変えてやったほうが、

気が楽かもしれないと思ったんだ。

「ああ、さっき苺花ちゃんから聞いた」

 再び俺から目を逸らしながら、椎名は言う。

「聞いたって? 苺花と会ったのか?」

「電話だよ、電話があったんだ。今から行っていいかって。いいとは言えなかったんだよね、

状況が状況だったし、取り込み中だったし」

 椎名は苺花からの電話を受け、苺花を断ったらしい。

「大和に余計なこと言ったでしょーって、怒られたさ。大和と気まずく別れたっても

言ってた。だから泊めろとか言ってたけどさ、無理だって断ったら怒って電話、切られた」

 椎名は、僕のせいなら、謝るけど。そう言って口を尖らせた。

「いや、椎名は悪くない。たぶん俺? 俺が要領悪くて……」

「それに鈍感で?」

「そうかも」

 俺の言葉を引き継いで言った椎名に同意する。

「そうだろ? ふたりのためにと思ってやってるのに、苺花ちゃんも大和もふたりがかりで

僕のこと責めるんだから」

「だから冗談だって」

 椎名の機嫌を損ねてしまったかと瞬間慌てたけれど、椎名はすぐにいつもの笑顔になって俺に言った。

「入ってよ。大和には彼を追い返した責任とってもらうんだからさ」

「ええっ、責任って……」

「はは、冗談だよ、冗談―」 

冗談っぽく冗談だよって言った椎名だったが、本当に冗談だろうかと怪しみつつ部屋に入った。







にゃん♪……(≧m≦*)ムプ……続く♪
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