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恋にとどくまで~苺花と大和(28)

苺花




あらためて私は、女友達がいないことにびっくりしている。

椎名に断られて、どうしようかと悩んだ。

親友だと思っていた梨々とも気まずいから、顔を出す気にはなれない。

男だって、結局みんな私の上を通り過ぎて行っただけだし、泊めてって言って

訪ねて行ったところで嫌な顔をされるか、やられるだけか……だろうし……。

「だから椎名を頼りに行ったのに。使えないんだからっ」

歩きながら「バカ」とつぶやいた。

ポケットに手を入れると、紙に指が触れた。破れかけたその紙片を取り出して広げる。

そこには椎名の携帯の番号が書かれている。

さっきは忙しそうだったから無理だと言われたけれど、もう用事は済んでいるかもしれない。

立ち止まって周りを見渡す。

携帯電話が普及したからだろう、公衆電話はなかなか見当たらなくなってきている。

「はあ……」

探すのも面倒くさい。いいや、直接押しかけちゃえ。

さっきは電話だったから断られたけれど、もうとっくに最終電車もない時間だ。

お願いすれば、無理には追い返されはしないだろうと勝手に結論する。

少し先に横断歩道が見えた。

そこまで歩いて信号待ちをしていたとき、私の前を通り過ぎた車が、少し先でゆっくり停車した。

ちらっと目を向けると車のドアが開き、中から男が降りてきた。

こっちに来そうな予感に、慌てて目をそらす。

「苺花?」

「え……」

名前を呼ばれて再び目を戻すと、見たことのある男が立っていた。

今、車から降りてきたばかりの男は、私の携帯を壊した男。

「大沢く……」

「久しぶり。何してんの? ナンパ待ち?」

面白くない冗談を言って、大沢はひとりで笑っている。

「帰るところなら、乗ってく? 送っていこうか?」

「ううん、いい」

腕をつかまれそうになるのを、さっとかわした。

「遠慮すんなよ。苺花とはあれきりだったし、いろいろ話もしたいしさー」

 話だけで終わるはずがないと思った。

 携帯で殴った仕返しとまではいかないとしても、タダじゃすまないのは容易にわかる。

 信号が青に変わった。

「私、行くところがあるから」

 じゃあね、と言ってそのまま青になった横断歩道を向こう側まで一気に走る。

「何だよ、バカヤロー」

 幸いなことに、それだけで大沢は追いかけては来なかった。

 執着するなら、とっくに自宅まで押しかけてきているはずだし、

それがなかったと言うことは、それほど想われていたわけでも怒っていたわけでもなかったんだと思う。

 たまたまここで再会したから、誘いをかけてきただけだ。

上手く行けばヤレるかも。くらいの軽い気持ちだったんだろう。

「誰が触らせるもんか」

 昔の私じゃないんだから。

 大和にしか触らせない。大和とやれないんだったら、一生誰ともやらなくたっていいくらいだ。

「いっそ、修道院に入ろうかしら」

 この身を神様にささげるの。

「無理だな」

 今までたくさん遊んでしまった。

 綺麗な体じゃない。神様もお断りだよね。

 くだらないことを考えながら歩いているうち、椎名の住むアパートに着いた。

 階段を上がってドアの横にあるチャイムを押す。

「あ、苺花ちゃん」

 顔を出した椎名が、目を瞬かせる。

「泊めて」

「あは」

 何故か椎名が笑った。

「ムカツク。何が可笑しいのよ」

「や、ごめんね」

 まだ苦笑いをしながら、椎名が部屋の中に入れてくれた。

「あ……」

 部屋の中には、またしても見たことのある男がいた。

 それは紛れもなく、私が愛している大和で……。

「何でいるのよっ」

 だけどどうしてなのか、攻撃的な言葉でしか話せない。

 大和も私の攻撃に応戦してきた。

「苺花こそ、何でここに来るんだよ。椎名、男だぞ。男の家におまえは軽々しく

泊めてもらいに来るような女なのかよ」

「大和が悪いんでしょ。私のこと、遊びで犯そうとしたんだから」

「犯……。そんな言葉使うなよ。そんなつもりじゃなかっ──」

「大和。これ使えよ」

 ふいに椎名が、大和に何かを投げて寄越した。

 キャッチした大和の手の中には、車の鍵。

「車使っていいから、苺花ちゃんを送るなり、どっか行くなりしてくんない? 人んちで

ケンカされるの迷惑だから」

「あ、悪い……」

「ごめん」

 大和とふたりで、同時に謝った。

「事故らないでね。それから、ガソリン満タンにして返してくれればいいから」

 半ば強引に追い出されるようにして、私と大和は外に出た。

 迷惑だなんて言ったけど、あれは椎名の優しさだ。

 それはたぶん大和も承知していることで、椎名がドアを閉める間際、小さく

「サンキュ」って言ってたのを、ちゃんと私は聞いていた。

 友情。いいなあ。

 ふいに梨々のことを思い出す。

 親友なんて言ってたくせに、大和に想われている梨々が羨ましくて嫉妬してた。

大和を振って涼と結婚した梨々を、ちょっとだけ憎んでいた。

 いつか、また梨々と今度こそ心から大事に思えるような親友同士になれるといいな、

と大和の後をついて歩きながら考えていた。

 何も話さないまま、まっすぐ歩いてゆく大和の背中。

 今度こそ、素直に気持ちが伝えられるといいのに。





続く。

もう少しでラストの予感~♪ 恋にとどくかな?
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