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【3】背の高い男

「あ、ごめん」

顔を上げると、樹が立っていた。

「ああ、理花ちゃんだ」

「樹くんだっけ。トイレ?」

「うん。あ、でもその前に良かったらケータイ番号交換しねー?」

いきなり番号交換を要求された。

「ダメ?」

顔の前に両手を合わせて、お願い。のポーズで樹は粘る。

「別に……いいけど」

ケータイの番号くらい教えても構わない。

嫌だったら着信拒否すればいいんだし。

そう思って交換に応じた。

「サンキュ。今度誘うからデートしような」

樹は言うと、トイレへ入って行った。

真面目そうなひとだと思っていたけれど、真面目そうだって言うだけで

実は軽い男なのかもしれない。

第一印象なんて、当てにならないものだ。

良く知り合ったって、相手のことが全部わかるかと言えば、そんなことは無理なんだし……。



理花が席に戻り、樹も戻ってきたところで二次会へ行こうということになった。

提案したのは暁登。それに乗って紗夜も賛成している。

「あの……私、門限があるの」

言いにくそうに言ったのは那絵だ。

那絵の家は門限がある。しかも夜の9時。

高校のときは7時の門限だったから、多少は時間が伸びたものの、

大学生になった今も門限は健在だ。

これからと言うときに、帰らなきゃいけないなんて、可哀相だよねって

いつも紗夜が言っていた。

「じゃあ、樹くん、送って行きなさいよ」

店の外に出ると、紗夜が樹の背中を那絵に向かって押した。

「俺が?」

「そう、那絵は樹くんを気に入ったんだって」

「やだ、紗夜ったら」

顔を赤くしながらも那絵は嬉しそうだ。

樹は、少々困惑しているように見える。

「だけどさー、那絵を送って行ったところを見ると、樹くんも満更ではないみたいだよねー」

2人を見送ったあと、紗夜が楽しそうに言ったが、誰も同意しなかった。

那絵の門限に遅れたらどうするのよっ! 

と、紗夜が半ば強制的に樹を脅したようにも見えたのだから。

昔から紗夜はそんな風だ。

とても強引に物事を押し付ける。

自分がこうだと思ったら、それを押し通すような感じだ。

那絵なんか、いつも紗夜の言いなりに踊らされている気がする。

「じゃーどこ行こうかー」

二次会のいい場所ないかな? と暁登が理花に聞いてきた。

「そうね……」

そのとき透弥の携帯の着信音が鳴った。

どうやらメールが届いたらしく、携帯の画面をぼーっとした顔で見ている。

その横顔さえ、絵になるのが不思議だ。

「誰から?」

暁登が透弥の携帯をのぞきこむ。

透弥はそれを隠すように閉じると、ポツリとひとこと言った。

「……功至」

「功至?」

「うん。来るって」

「あーー? 来る? ほっとけ、そんなもん。あいつおれが誘っても

来なかったくせに。今頃何言ってんだ」

暁登があからさまに不機嫌な顔をした。

「ほっといたら功至、怒るよな……」

ひとりごとのように言いながら、透弥は駅の方向へ歩き出した。

ほっとけ、と言った暁登はほっとけなかったらしく、透弥を追いかけていった。

しょうがないのでみんなで後を着いていくと、駅前のタクシー乗り場付近に

立っていた男がこっちに向かって歩いてきた。

どうやらあれが功至ってひとらしい。背が高くてわりといい男。

「なんだ、4人だったのか?」

功至の問いかけに紗夜が明るく答える。

「樹くんは那絵を送って帰っちゃったのー」

功至はたいして興味を示さず、理花に目をとめると近づいてきた。

「おまえ、誰?」

上から見下ろすようにして聞かれる。






続くのだ。

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