スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

恋にとどくまで~苺花と大和(22)

苺花




大和を追い返した日から、一週間が過ぎた。

大和からの電話もメールもない。

私からもしていない。

気になるけれど、どうしようもなかった。

大和は私を、何とも思っていないことがはっきりした。

ただそれだけ。

以前と何も変わりはない。

だけど、気持ちを知られてしまったから、恥ずかしくて、合わせる顔がない。だけど会いたかった。

振られたら死んじゃうかと思っていたけれど、死ななかった。

人間って、意外と丈夫に出来ているものだと思う。

開き直ったら、どうってことのないような気になってきた。

今まで通りでいいのかもしれない。

友達のまま、大和と遊べればいいんじゃないのかな。

大和が受け入れてくれるならばの話なんだけれど……。



私は、大和に電話をかけることにした。まだ携帯がないから、自宅の電話からだ。

受話器を上げて、耳に当てる。深呼吸をしてから大和の携帯の番号を押した。

すぐに大和の声が聞こえる。

「苺花?」

良かった。

無視されたらどうしようかと思っていたから、とりあえず出てくれたことにホッとした。

「遊ぼうよ、大和」

 平静を装って言ってみると、大和のほうも普通の調子で答えをくれた。

「ごめん苺花。今日バイト早番でさー、4時には店に行かなきゃ……」

「まだ2時だよ。あと2時間あるじゃんっ」

 めげそうになりつつ、必死で約束を取り付けようと言葉を続けた。

「大和が遊んでくれないと、つまんないっ!」

「他に誰かいねーのかよ」

「いないもん。大和がいいの。大和じゃなきゃ遊ばない」

 いつもの調子でワガママを言ってみた。

 電話の向こうの大和は、すぐに答えてくれなかった。

 やっぱり今までのようにはいかないのかな。

「会いたいな。会えない? 少しでいいから」

 今度はお願いしてみる。

 小さく、タメイキのような音が耳に届いた。

 困ってる? 困ってるよね、引いちゃったよね?

「ごめん、大和……。わがまま言ってごめんね」

「いいよ。終わってからでいいなら」

 大和の「いいよ」と言う言葉ひとつで、今まで落ち込みそうになっていた気持ちが一気に浮上する。

「いいよ」のひとことで、身体中が幸せな気持ちで満たされる。

「いいの?」

「いいよ、行くよ。9時には終われるから、とりあえず電話する」

 電話を切った後、しばらく動けなかった。

 良かった。

 まだ友達が続いてたんだ。

 まだ大和と会える。まだ続けていられる。

想いが届かなくてもいいような気がしてきた。

 付き合って、別れて、二度と会えなくなるよりは、友達のまま側にいて、ずっと仲良くしていければ、

その方がずっとずっと幸せなんだと思った。






短くてごめんなさい(><)次回のお話の都合上、ここまでの掲載になりました~。
スポンサーサイト

幸せにつながる手


周りが見えなくなるほどの悩みに壊れそうになってても

ちゃんと支えてくれるひとがいる

ひとりじゃないって思えたから 取り戻せた元気


下を向いていては気付かなかった幸せが

手を差し伸べてくれたあなたのおかげで

ちょっとだけ見えて 嬉しくなった

恋にとどくまで~大和と苺花(21)

大和


「あのさ……苺──」

 言いかけたとき、ちょうど俺の声と重なるように、苺花の母親がドアをノックした。

「ホットケーキが焼けたのよ。食べに降りてきなさいよ」

 返事をする前にドアが開き、俺と苺花を交互に見ている。

 その表情から、何かを疑われているようで、ちょっと気まずい。

「行こう、大和」

 苺花が立ち上がり、先にドアに向かう。

 母親の体を押すようにしながら、一緒に階段をおりてゆく。

 その後を追って下におりると、リビングには父親の姿もあった。

「あ、こんばんは。お、お邪魔してます」

 咄嗟のことで緊張し、中途半端な挨拶になってしまった。

「君が噂の大和くんかー」

 苺花の父親は、さっきの母親と同じく、興味津々な目つきで俺を上から下までジロジロ眺め回した。

 ものすごく居心地が悪い。

 逃げ出したい。

 何で噂になんかなってるわけ?

 苺花があれこれ喋っているのか?

「もう、そんなところに突っ立ってないで、座りなさい」

 苺花の母親に促され、空いている苺花の隣に腰を下ろした。

「ちょっとトイレに行ってくる」

 俺が座った途端だった。

 苺花が立ち上がり、さっさとリビングを出て行った。

 ああ、待って……。

 俺をひとりで残さないでくださいー、と言いそうになった。

 目の前に座る父母の視線が俺に注がれているのは気付いているけれど、顔が上げられなかった。

「大和くん」

 母親に呼ばれ、ドキンとして顔を上げた。

 ふたりの目が、俺をじーっと見てた。

 逸らせないほどにじーーーっと。

「苺花のこと、よろしくお願いね」

「頼んだよ、大和くん」

 ふたりともに目の前で頭を下げられた。

「え……。あ、はい」

 戸惑ったなんて生易しいものじゃなかった。

 混乱してしまった。

 よろしく? 頼んだよ?

「あの子、いろんな男の人と付き合ってたのよ」

「はあ……」

 それは良く知ってます。と思いながらうなずいた。

「苺花はね、ずーっと大和くんが好きだったの」

「そう。だけど大和くんは、苺花を友達としか思ってないんだろう? 好きな女の子がいたんだろう? 

でも、その子は結婚して──」

 今までの経緯を、苺花の両親は詳しく知っていた。

 それって、苺花が詳細に話していたってこと?

 苺花の家って、放任に見えていたけれど、実は恋愛相談も出来るほどの仲良し家族だったと

言うことだろうか。

「大和くんは、少しも苺花を好きじゃないの?」

「少しくらい好きって思っているだろう?」

「嫌いなら仲良くしてくれるわけないわよね」

「友情とか言っているが、実はもう好きになっているだろう?」

 次々に訊ねられて、正直なところ混乱はピークに達していた。

 苺花はどうしてトイレから帰ってこないんだろう。

 もしかして、最初からこうなることを計画していたのか。

 家族ぐるみで俺を陥れようとして……。

「大和を責めないでよっ」

 助かった。と言うのが正直な感想だった。

 苺花が頬を膨らましながら、リビングに入ってきた。

 ものすごく長い時間、トイレに行っていたと思っていたが、そうじゃなかったらしい。

 緊張の時間は、長く感じるものだから。

「だって、苺花……」

「無理やりじゃ嫌なの。大和が自分から好きだって思ってくれなきゃ嫌なのよ!」

 苺花の唇が震えている。

「大和にその気がなかったら、付き合っても楽しくないよ。虚しいだけだよ。同情で付き合ってくれるな

ら、付き合いたくないよっ……」

 取り乱してしまった苺花をなだめる両親。

 泣いている苺花。

 俺はどうすればいいんだろう。どんな言葉をかけてやればいいんだろう。

 口を開こうとしたけれど、言葉が何も出てきてくれなかった。

そして、何も言ってやれなかった俺は、苺花に強引に追い返された。




──やっぱり大和は、私のことなんか何とも思ってくれていないんだ。

心配はしてくれるけれど、それは同情でしかない。恋にはならない。

私の気持ちは大和に届かないんだ。



 泣きながら苺花が言った言葉が、耳から頭から離れない。

 苺花の家の前で、閉じられた玄関の扉を、ただ恨みがましく見つめているしか出来なかった。

 どうしたらいいのか、考えがまとまらない。

 同情じゃないとは言い切れなかった。

 苺花を、好きだと言って受け入れてやれなかった自分が悲しかった。





♪続きます♪

恋にとどくまで~大和と苺花(20)

大和



「苺花が、俺の幸せを願ってくれるのは、どうして?」

「そんなの簡単よ。友達だからだよ」

 あっさりと苺花は答える。

 梨々や椎名が言っていたことが本当ならば、苺花は俺が好きであり、俺の幸せを第一に考えようとして

くれているってことだ。

「友達ってだけじゃない気がするんだ」

 苺花に、本当の気持ちを確かめたい。

 苺花は俺をあっさりと納得させてしまうほどの言い訳なんかいくらでも言えると思う。

理屈で自分の気持ちに蓋をして、誰にも明かさずにいるつもりなのだろうか。

「大和、痛い……」

 知らず知らずのうちに、俺は苺花の腕をきつく握り締めていたらしい。

困ったような表情で、苺花は俺を上目遣いで見ている。

 言葉で言わせようと思ったって、苺花は言わない。だったら身体に聞いてみるのはどうだろう。

 でも、言わせてどうする? もし、苺花が白状したら、その後どうするつもりなんだ。ごめんって言う

のか? 無理やり言わせておいて、ごめんと言って断るのか?

「痛いよ、大和」

 顔を歪めた苺花を、気付いたら抱きしめていた。

「大和、どうしたの。大丈夫?」

 騒ぎもせず、苺花は大人しく俺の腕の中にいる。

「どうもしねーよ」

「じゃあ、放してよ」

「苺花が正直に白状したら、解放してやる」

「正直って?」

「苺花、俺が好きだろ?」

 苺花の体が、動揺したように一瞬震えた。

「……友達だからね」

「そういう意味じゃねーよ」

「変だよ、大和」

「うるせーんだよ。素直に吐けば解放してやる」

「……何のこと? 何を素直に言えばいいわけ?」

 やっぱり俺の思い違いだろうか。

 俺だけじゃない。

 梨々も椎名も、苺花の気持ちを勝手に誤解している。

 苺花が俺を好きなのは、あくまで友達としてであって、それ以上でもそれ以下でもない。

「……大和」

 苺花が両手を俺の背中に回した。

「苺花……」

「大和を……困らせたくない」

 苺花の身体が小刻みに震える。

 背中に回した指が、ぎゅっと俺の服をつかんだ。

「だから、言わない。何も言わない。私は大和の……一番の友達でいたいの。永遠にずっと友達とし

て……ずっと大和の幸せを見てる」

 もしも俺がすっげー鈍感な男だったとしても、苺花の言葉に隠された気持ちに気付かない程ではないと

思う。

 はっきり言わないことで、どうにでも解釈してもいいと、俺に負担をかけないように、言っているんだ

と思った。

 それとも本当は気付いて欲しい?

「大和、身体を……放して」

 苺花が俺の背中から手を放す。そしてそっと押しのけるように、俺の身体を押した。

「苺花……」

 俺を見上げた苺花の目が、涙で濡れて潤んでいた。

 そして、瞬きをひとつした習慣に落ちた涙の粒を見たとき、俺はとんでもないことをしでかしたんだと

気付いた。

「ガマン……してたのに」

 泣くつもりはなかったんだと、苺花が言ってうつむいた。

「大和は、ずっとずっと梨々が好きで、梨々しか見てなくて、私が見てたことも、他の女子が見てたこと

も全然気がつかないくらい梨々しか見えてなかった……」

 足元に視線を落としたまま、苺花が涙混じりの声で自分の気持ちを話し始める。

 いつもの冗談じゃない。

苺花が、真面目に本当のことを話してくれようとしている。

不覚にも心臓がドキドキと音を立て始める。

からかわれるのも嫌だけど、こんなふうにマジなのも、どうしていいかわからなくなるものなんだな。

言葉を途切れさせたまま、苺花は黙り込んだ。

続きを待っているべきか、それとも何か言ったほうがいいのか。

シンとした気まずい空気に感じるのは、考えすぎだろうか。

 目の前の苺花を見つめたまま、苺花がもし好きだと言ってくれたらどう答えようか考えた。

 自分の気持ちがわからない。

 苺花のことは気になるし、ほっとけないとも思うし、頼られて悪い気もしない。

 嫌いと言うわけではなく、どっちかというと好きなんだろうけれど、それが恋愛感情ではないとは漠然

と感じている。

 友達としての好き、なんだろうと思う。

 梨々に対して感じていた気持ちとは、違った。

 だけど──。





続くのでした。。。

恋にとどくまで~大和と苺花(19)

大和



 いきなり「なんか用?」と聞いてきた苺花からの電話を受けて、かけてきたほうが用事あるんだろうと

言いかけ、口をつぐんだ。

 そうだ。俺が連絡して欲しいと頼んでおいたんだ。

「話があるんだ」

「何の話?」

「電話じゃ言えない。会えないかな」

「会いたいの? 忙しいんだけどね」

 素っ気ない口調で苺花は言う。

 一瞬、忙しいならいいよ、と言いそうになったけれど、そこはぐっと我慢をして、低姿勢で言った。

「忙しいのに悪いけど、大事な話なんだ」

 どうして俺は、こんなに気を使わなければならないんだ。

 そうだ、他のひとに苺花が迷惑をかけるのがいけないんだ。

 それを俺が食い止めなければいけないんだ。

 梨々のため、涼のためでもある。

 ……なのかな?

「いつ?」

「いつにしようか」

 連絡を待ってはいたものの、いつになるのかわからなかった。

 いきなり、じゃあ今から? って言うのは気が早いだろうか。だけど早く解決したい気もするし。

「じゃあ今から会おうか」

 迷うヒマもなく、苺花のほうから言ってきた。

 俺は、忙しいのに悪いね、ともう一度言ってから、苺花の家まで迎えに行くことになった。

 夜なんだし、女の子に出て来させるのは危ないからなんだ。

 決して「じゃあ、迎えに来なさいよ」と命令されたからじゃない。




 苺花の家のチャイムを鳴らすと、出てきた苺花の母親が俺を家の中へ入るように誘った。

「どうぞ。苺花の部屋は2階に上がって左側よ。右側はお兄ちゃんの部屋だから、間違わないようにね」

 そう言うと、母親はさっさと奥に引っ込んでしまった。

 玄関先でじっとしていても、どうしようもないので、俺は小声で「お邪魔します」と呟き、

靴を脱いだ。

 階段をあがり、間違わないように左のドアの前に立つ。

 ノックをすると、中で苺花が動く気配がした。

「苺花……俺だけど」

 ドアに顔を寄せ、声をかけてみる。

「俺って誰?」

 ドア越しに苺花が答える。

 誰って、声でわかるだろう。と思ったが俺はちゃんと名乗った。

「大和だけど」

「大和が何の用事かしらね~」

 苺花はドアを開けてはくれず、からかうような口調で言った。

 一瞬、ムッとしそうになるが、ぎゅっと手を握りつつ、怒りを抑える。

「話があるって言っただろ。さっき電話で苺花が迎えに来いって言っただろ。だから……うわあっ」

 いきなりドアが開き、ドアに限りなく近づいていた俺は、危うく前に倒れそうになった。

 すぐ目の前に苺花がいて、俺をじっと見上げている。

「あの、苺花」

「外に出る? それとも中で話す?」

 唐突に聞かれ、返答に詰まった。

「いいよ。入りなさいよ」

 苺花は俺に中に入るよう、目で合図した。

「で、何の話? 説教なら間に合ってるからね」

 部屋の中に入り、苺花はまっすぐベッドに向かった。

 そこに腰掛けると、また俺のほうをじっと見つめてきた。

 あまりにじっと見つめられ、何も悪いことをしたわけでもないのに、目を合わせていられない気まずさ

があった。

 視線を外して部屋をチラリと見る。

 カーテンは、苺の模様だった。

 そういえば、苺花が座っているベッドカバーも同じ模様がついている。お揃いなんだ、とどうでもいい

ようなことを考えた。

 そして、ふと苺の香りが鼻をかすめる。

 視覚的なものだろうか、錯覚? いや、匂いだからこの場合……錯臭?

 って、そんなのないか。

「涼のこと、説教しにきたんでしょ? 梨々に頼まれた? それで、私に言いにきたんでしょう。梨々を

不幸にすんなって。涼を誘惑するのはやめろって。そう言いにきたんだ?」

 苺花に目を戻すと、いつもの苺花の悪戯っぽい笑みとぶつかる。

「涼を……誘惑したのか、苺花」

「したよ。涼が梨々と別れればいいって思ったんだもん。そうしたら大和、梨々と付き合えるでしょ? 

大和のためなんだから、大和は喜ばなきゃいけないのよ」

 まるで悪いなんて思っていないような口ぶりに、俺は戸惑った。

 そういうことを、本気で考えて実行しようとしたことに対し、涼を誘惑した理由がわかったこと以上

に、苺花の精神面が心配になった。

「苺花は、俺のために……してくれようとしたってこと?」

「そうよ。大和には幸せになって欲しいんだから」

「それは……。そう思ってくれることは、嬉しいけど。だけど涼はどうかな。梨々が好きなのに、別れた

ら悲しいんじゃないかな。それに梨々だって、好きなのは涼なんだから、別れたって俺と付き合うわけで

もないだろうし……」

 上手く伝わっているだろうか。

 伝わってないかもしれない。

 だけど、これ以上苺花がバカなことを続けるのはやめさせなければならないと思う。

 本当は、大声で怒鳴り散らしたい気分だった。

 バカなことするなって、言ってやりたかった。

 だけど、カッとなったら、きっとまた苺花も反撃してくるだろう。そうなるともう、話し合いどころで

はなくなってしまうのは、何度も経験しているからわかる。

 ものすごく自分を抑えながら、俺は苺花に優しく言い聞かせようと試みた。

| ホーム |


 BLOG TOP 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。