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約束【番外編】~真っ白なシーツ

ベッドに敷いてあった真っ白なシーツを見て思ったの。


いつかわたしは

あなたの手で

あなた色に染められるのかも。


…って。


未来のこんな場所と

真っ白なシーツの上で

色とりどりに彩られたわたしと

それを見下ろす彼の顔が

見えた気がした。




恥ずかしくなってふざけて笑って


部屋のドアが閉まる前に

エレベーターに向かって走るわたし。

「廊下を走るなぁー」

追いかけてくる清二くんと声に

振り向く余裕がないくらい

照れくさかった。
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約束~本能との葛藤

久しぶりに会った佐代ちゃんは、相変わらず小さくてかわいかった。


僕が泊まっているホテルに、こうも簡単に着いてきてくれるとは

思っていなかったけれど、こうして目の前にいる佐代ちゃんを見ていると、

僕と同じ気持ちでいてくれているのかもしれないと少しだけ……

いや、かなり期待してしまう。

「狭い部屋だね」

にこにこ笑いながら佐代ちゃんは、きついことを言う。

「それになんか暗いしー」

予算の都合上、おしゃれとは程遠いビジネスホテルしか予約できなかったのだ。

リゾート地でもない、リバーサイドでもない、

ましてや夜景など見えない街中にあるホテルである。

だって目的は佐代ちゃんに会うことで、交通費だけでもバカにならないのだ。

ホテルを予約したのも、佐代ちゃんに喜んでもらうためじゃなく、

少しでも長く一緒にいたいだけのためだったし、

寝に帰るだけだと思っていたから値段が安いというだけで決めたのだ。

佐代ちゃんがここにきてくれるというのは、妄想の中だけで

実現することまで予測していなかったのだからしょうがないのだ。

「清二くん、キレイなホテルだって言ってたくせに」

期待して損しちゃったよ、と佐代ちゃんは言いながら、

バッグの中から何故だか携帯を取り出している。

「あ、やっぱり着信あった」

「誰から?」

「お父さん」

「えっ!!」

何故かドキンとしてしまうのは、こんな場所に娘を連れ込みやがって、

と言う佐代ちゃんのお父さんの顔が浮かんだからだ。

「ちょっとかけなおすね」

待っててね、と言いながら佐代ちゃんは電話を始めた。

「あ、お父さん?」

聞かないようにしたほうがいいのか、けれどこの狭い部屋では

聞こうと思わずして聞こえてしまう。

「うん、いまね、清二くんの泊まってるホテルにいるの」

「さ……」

思わず叫びそうになった。

何も正直に父親に言うことはないだろうと思う。

だけど、佐代ちゃんの家庭はオープンだから、

何でも話せるんだよって言っていたので当然僕たちの関係も

知られているに違いない。

「え……。うん、うん。そう」

佐代ちゃんの言葉が気になる。顔も心なしか真剣だ。

「うん。ビジネスホテル。えっと、うん、たぶん。でも、わかんない……。うん、そ」

話の全容はわからないけれど、あまり楽しそうな話題ではなさそうだ。

それから間もなく、佐代ちゃんは電話を終えて携帯を閉じた。

「なんかぁ、お父さんにいろいろ言われちゃったー」

「いろいろって……なに?」

「んー、いろいろって、いろいろだよ。でも、清二くんのことも関係あるよ」

「僕の、こと?」

そりゃそうだろう。僕とここにいることを佐代ちゃんはしゃべったんだ。

何となくだけど、あんまりいい話ではなさそうだ。

こういうことは、あまり親に言うもんじゃねーよ……。

などと心の中だけで愚痴を言っていると、佐代ちゃんが急に前かがみになった。

どうやらハンカチを床に落としたようだが、僕の目はハンカチよりも

少し上の佐代ちゃんの胸元で止まった。

洋服の中身がモロに見えた。

心臓がドキッとなる。

こんな密室で、ベッドがそばにあって、部屋は薄暗くて

雰囲気はいまいちだけど……。

僕は座っていた椅子から立ち上がった。

下半身も立ち上がりかけていたが、そこに佐代ちゃんの視線が行く前に

僕は佐代ちゃんの視界を塞ごうと近づきかけたのだが……。

「だめーーーっ!」

思い切り両手で佐代ちゃんに突き飛ばされてしまった。

佐代ちゃんは僕の目の前で両手をバタバタさせながら、

首まで横にぶんぶん振っている。

「こんなことしちゃダメなんだよ、お父さんがダメって言ったんだもん!」

佐代ちゃんは僕に向かってさらに続ける。

「お父さんがさっき言ったの。エッチするのはまだ早いって」

「そ、そんなこと言われた……わけ?」

「うん」

佐代ちゃんはバタバタするのをやめて、こくんとうなずいた。

「お父さんはね、まだ早いって言ったの。清二くんの気持ちもわかるけど、

まだ責任とれる年齢じゃないでしょ、だから我慢してもらわなくちゃって。

私のことが大事だって清二くんが思っているなら

我慢してくれるはずだって言ったの」

そんなの、改めて聞かれなくても大事に決まっている。

大事だけど大好きだから、抱きしめたいと思うんだけど、それもまだ早いのか。

「男の子は……止まらない」

「え……」

「お父さんがなんか、そんな歌を歌ってて、」

「歌????」

「なんかね、止まらなくなるんだって。えとね、き、、キスだけのつもりでも

男の子は暴走族になるんだって」

「う……」

「あ。違った。暴走族じゃなかった、暴走しちゃうんだった。ごめんね」

そこの訂正は大きな問題じゃないのでどうでもいいが、

とにかく佐代ちゃんの父親に今日のことはバレバレで、

そしてもっと大きな問題は、佐代ちゃんにその気はないということだ。

ホテルの部屋までついてきたんだから、当然その気があったんだろうとは思う。

だけど父親からの電話であっさりそれを守ってしまうのだから、

素直と言うか、無邪気というか。

ただ、やる気も下半身もしぼんでしまったけれど、

佐代ちゃんへの愛情はそのままだ。

そして壊したいとも思わない。

大事にしたいから、無理やりするつもりもなかった。

まだまだ先は長いのだ。

僕はもう高校生になったんだからって思いがあったけれど、

大人たちから見ればまだまだ責任もとれない子供である。

周りの友達には、もう普通にやってるやつらもいるし、

責任を問われるような最悪な事態にもなった話も聞かない。

だから、僕たちだってそろそろいいんじゃないかと思っていたけれど、

僕たちは僕たちだ。

周りに合わせる必要はない。

そう、佐代ちゃんがその気になるまで待つんだ。

そうして自然にそうなったときが僕たちの時期。

「夜ご飯、食べに行こうか」

「うん、とろろそばが食べたいー」

無理やり自分をきれいな言葉で納得させた。

約束~大人の関係

先月のGW。

遠距離恋愛中の彼、清二くんが遊びに来てくれた。

大人だったら、たいしたことのない距離だよってお母さんは言うんだけど、

高校生のわたしたちにとって、この距離は毎月のお小遣いだけじゃ

行ったり来たりが難しい距離だと思う。

それを清二くんは学校へ行きながらアルバイトをして貯金をして

そしてわたしのところまで来てくれる。

わたしの高校はアルバイト禁止だから、清二くんのように頑張れないのが悔しい。


そんな清二くんと冬休み以来、久しぶりに会ったんだけど、

清二くんったら、無理をしてビジネスホテルなんか予約していたから

ビックリした。しかも年齢まで偽って、20歳だなんて嘘をついていたから

さらにビックリというか、あきれたというか、実は本音は嬉しかったとか・・・。



「スッゲーキレイな部屋なんだぜ」

清二くんとランチが終わってウインドーショッピングをしていたとき、

話題の中にホテルの話がでてきた。

「み・・・見にくるか?」

何故か清二くんは挙動不審に目を泳がせて、どもりながらわたしに聞いた。

ココロのなかで、心臓がドキンと跳ねた。

ホテルの部屋を見に行くってことは、もしかするとオトナの関係に

なってしまうかもしれない。

まだ、キスもしたことがないのに、急にまさかそんな展開はあるはずないかな。

頭の中で、行く? 行かない? 行きたい? どうする?

いろんな想いがぐるぐる回る。

友達の中には、もうそういう関係になってる子もいるし、

そうなってもっと親密になれたとか、愛されている実感がわくとか聞くし

わたしたちも付き合っているんだから、そうなってもいいんだと思う。

でも・・・・・。

痛いのは・・・嫌・・・。

怖い・・・・。

でも、好きならそれくらい我慢しなくちゃ?

「あ・・いや、ちょっと言ってみただけさ。気にすんな、忘れて」

わたしが長い間、沈黙していたせいで、清二くんは誘うのをやめた。

「え、忘れていいの?」

「え・・・えええ? 佐代ちゃんは・・・いいの?」

「・・・・う、うん。ちょっとなら」

いいよ、とうなづいてそのまま顔を上げられなくなった。

わたしの顔は、きっと真っ赤になっていると思う。

清二くんは、ただ部屋を見せてくれようとしているだけかもしれないのに、

わたしったら、エッチな妄想なんかしてしまって、恥ずかしい。

どうしよう、エッチな子だってバレちゃったらどうしよう。


結局わたしは、清二くんについてホテルに行くことにしたのだけれど・・・。



約束~わくわくなGW

春休み、僕は佐代ちゃんに会いに行く約束をしていた。

いつでもキャンセルできるし、とりあえず切符の手配もすませておいたんだけど、

間近になって急に佐代ちゃんの様子が変になったんだ。

何かが今までとは違うと感じたけれど、具体的に何が違うのかわからないまま、

結局春休みの約束は、キャンセルになってしまった。

「ごめんね」

と言った佐代ちゃんに理由を追求することができないまま、

なんだか納得もいかないまま、僕はあえて何も気にしていない素振りで

電話を切ったんだけれど、やっぱり気になってしょうがなかった。



半ば無理矢理、気にしない風を装って、あえて波風をたてないように、

佐代ちゃんとはこれまでどおり、接することを選んだ。

僕は佐代ちゃんに、『言いたいことは我慢しちゃダメだよ』といつも言うくせに、

自分はと言えば、言いたいことを全部言えていない気がしている。

何でも話し合える仲でいたいね、とか言うくせになんだ?

言うとこれまで築きあげてきた「なにか」が壊れるようで怖いのだ。

男のくせに、はっきりしないな・・・と、時々思うけれど、

その前に、佐代ちゃんを下手な言葉で傷つけはしないだろうかって

それのほうが気になってしまうのだ。


結局その後、佐代ちゃんがご機嫌なときに約束をした、GWに会うって話。

それが嬉しくて嬉しくて、春休みの気になることなんか、

どうでもいいやって思うんだから、僕って単純だよな。


GW、会えたら何をしよう。

まだまだひと月も先の話だけれど、もう今から待ち遠しくてしょうがない。

過ぎてしまえばあっと言う間の一ヶ月だけど、待っている一ヶ月って

なんて長いんだろうと、時間の進みの遅さにイライラしてしまった。


GWに会えたとき、一番に何をしよう。

そろそろ、少しくらい先に進んではいけないだろうか。

「泣かれたらこわいしなぁ・・・」

あくまでも強引さにかけるよなって思うんだけど、

そういうトコも好きだって佐代ちゃんが言ったんだし、

いざとなれば、頼れる男だってところを見せてやろう。

そのためにしないといけないことは、なんだろう。


そんな、すぐに答えの出ないことを考えながら、

僕は布団で目を閉じた。

約束~冬休みの宝物

朝早くのバスに乗って、目的の駅に急いだ。

急ぎすぎて、予定時間より早く着いてしまった駅のホーム。

吐く息は白くて、ポケットの中の手も冷たかったけれど、

心の中はどきどきして、暖かだった。

やがて、ホームに列車の到着を知らせるアナウンスが響き、

どきどきはますますヒートアップしていく。

「あ、記念撮影」

私はバッグの中からデジカメを取り出して、ホームに入ってくる列車の写真を撮った。

清二くんが乗ってる列車。

かじかんだ手でシャッターを切ったから、あまりキレイに撮れなかったけれど、

これもいい思い出の一枚になるだろうと思うと、嬉しかった。

どれくらいぶりだろう、久しぶりに会って、どんな顔をしよう。

ちゃんと笑顔で会えるかな。

清二くんは、変わらず優しくしてくれるかな。

いろんなことを一瞬のうちに考えていると、列車が止まってドアから清二くんが降りてきた。

「おはよう」

「……おはよ」

いざ、目の前に立たれると、緊張してしまって恥ずかしくて、まともに挨拶もできなかった。

お互い、それきり会話がないまま一緒にホームの階段をおりる。

そして、約束していた目的の場所まで移動した。

並んで歩くふたりの距離は、微妙に離れている。

あんなに電話で話していたのに、いざ会うとどうしてこんなにぎこちなくなるのか。

会えたのに嬉しくないの?

会えたのに、どうして笑ってくれないの?

私の心の中は、不安でいっぱいになっていく。

だけどそれは、観覧車に乗ってしばらくすると払拭された。

もうじき頂上だと言うとき、清二くんがわたしの指に指輪をはめてくれたのだ。

どこに隠し持ってたのかわからないけど、いきなりだったから驚いた。

「これ、渡そうと思ってずっとドキドキしてたんだ」

あ~、緊張した。

と、笑う清二くんの顔が、真っ赤になってた。暑くないのに汗までかいてた。

いつも、わたしよりたくさんしゃべる清二くんが、

ずっと無口だったのは、これのせいだったのだ。

「うれしい、ありがとう」

「いまは、こんなのしかやれないけどさ、いつか本物の指輪を買うからな」

ラピスラズリのブレスレットとおそろいの青。

サファイヤの石は、わたしの誕生石だ。

宝物がまた増えた。

約束。

約束が叶えられた幸せと、また新たな約束が出来た幸せを、

冬休みに会えたあの日、同時にもらった。

約束は、わたしにとって、人生の中の大きな大きな宝物だ。











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