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頭痛にビオフェルミン?

昨日の朝から風邪具合が悪かった僕は、とうとう今朝には高熱が出てしまい、起きられなくなった。
ちょうど仕事も休みの日だったので、悠を学校へ送り出すとそのままベッドへ直行した。
日頃から、睡眠不足は感じていたが、寝つきも寝起きも悪かった。
精神的にも体力的にも限界を感じていたのだろうか、熱が出るなんて、体が休めとSOSを出したんだろうな、と思った。
僕は食事も摂らないまま、悠が帰る4時過ぎまでぐっすり眠っていて、チャイムの音でやっと目が覚めた。
玄関まで歩いていくのも辛かった。ふらふらしながらドアを開けると、心配そうな顔で悠に聞かれる。
「大丈夫?」
「さあ、どうかな」
笑顔を作って大丈夫だよって言うつもりが、つい本音で答えてしまう。
「寝てたほうがいいよ」
「うん、そうする」
今まで寝てたんだけどね、と言いつつベッドへ潜り込む。
すぐに悠がなにやらごそごそする気配を感じ、ベッドの部屋へやってきた。
「お父さん、これ飲んだほうが早く治るよ」
枕元に差し出された悠の手のひらに、2粒の白い錠剤が乗っている。
「え、何の薬?」
「ビオフェルミン。頭痛いとき、飲んだら治るんでしょ?」
「……ああ、ありがとう。でも、それはお腹の薬だよ」
「お腹? じゃあ、頭は良くならない?」
悠は良くお腹をこわすので、時々ビオフェルミンを飲んでいる。
それでよくなるので、僕の頭痛にも効果があると信じて疑わないんだろうな。
悠に心配をかけたくなくて、僕は体を起こした。
「お父さん、寝てていいよ」
「もう平気。ご飯の用意をしよう」
心配そうな悠に、お腹すいただろ? と聞くと素直にうなずく。
「気をつけておりて」
悠が僕の体を支えてくれた。
昔は良く可愛い悠をぎゅっと抱きしめてた。
最近はふたりで部屋にいても、お互い別々のことをしていて、スキンシップどころか、まともに会話もしていなかったような気がする。
自立してきたとはいえ、もう少し構ってやったほうがいいのかな、と思っていた。
久しぶりに悠を抱きしめると、「やだよ」と言って離れようとする。
「ごめん、ツライんだもん。ちょっとだけ癒されたい」
ちょっとふざけ半分に言うと、悠は「しょうがないな」なんて言いつつも、僕の体を抱きしめてくれた。
子供の温かな体を抱きしめていると、本当に体にパワーが湧いてくるような気がして来る。
スキンシップは癒される。
改めて、その大切さが身に染みた瞬間だった。
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僕と悠の未来図【番外編】

今回、ちょっと視点を換えて、湊の同僚である「白石さん」の気持ちを描いてみました。


******************


「佳苗(かなえ)ちゃん。だって~」
恥ずかしくてもだえながら、私は枕を抱きかかえたまま、ベッドの上でゴロゴロ転がった。
現在片想い中の同僚、春原湊(はるはらみなと23歳)にお願いして
今日、初めて名前で呼んでもらったのだ。
ずっと白石さんって名字で呼ばれてた。
だけど、それじゃあ距離を感じるし、他人みたいで嫌だった。
もちろん、実際距離はあるし、他人なんだけど少しくらい近づけたら嬉しいなんて思ってた。
それで今日の帰り、勇気を出して言ってみたのだ。

「お願いがあるんだけどっ」
「なに?」
憎らしいくらい爽やかに微笑んで私を見るんだから、しばらく見惚れちゃって、すぐには言葉が出てこなかった。
実は、湊と初めて会った瞬間に、恋におちた。
ひと目ぼれだった。
ひと目ぼれって、だんだん相手を知るうちにマイナス部分が見えてきたり、違うって思ったりするものだと思っていた。
だけど、私のひと目ぼれには狂いがなかった。
会うたびに、話すたびにマイナスどころかプラスされていって、今じゃ大好きすぎて何パーセントなのかわからないくらい好きになってしまった。



彼は、結婚している。だけど奥さんとはずっと別居中だ。
たぶん、話し合いさえ進めば離婚するだろう。
彼には子供もいる。
奥さんの連れ子で、今11歳の悠くんだ。
彼とは血のつながりはない。それなのに、大事に大事に愛して育てているのだ。
割り込む隙間がないほどに仲がいい。
だけど私は彼の悩み相談に乗ってあげる、優しい親切な頼れる同僚のフリをしつつ、湊に近づいて割り込むところまで成功した。

この前は、デートできた。
無理やり頼んで付き合ってもらったようなものだったけれど、楽しかった。
その前は、家に押しかけて無理やりハンバーグカレーを作ってあげた。
苦手な料理。
何とか作れるその二品を披露することができて、しかも美味しかったと言ってもらえた。
徐々に近づけてる。
そして今日、思い切ってお願いする。
「私、佳苗って名前なのよね」
「え? 知ってるよ」
「うん。知ってるよね。それで、その……お願いなんだけど」
上目遣いで彼を見てから、私は名前で呼んで欲しいことを伝えた。
「え、別にいいけど」
彼は言って、「じゃあ、佳苗さん」と少し照れたような顔で言ってくれた。
母性本能……。
女にはそういうものが潜んでいるらしく、私はその表情にクラクラした。
可愛い。抱きしめたい!
思わず行動してしまいそうな体と心を何とかやり過ごし、私は言った。
「私も、湊くんっていうから、佳苗ちゃんって言って」
彼の目が、一瞬丸くなった。
びっくりした? それとも引いちゃった?
ドキドキしながら失敗したかと様子を伺っていると、すぐに彼はいつものように微笑んで、そしてやっぱり照れたように言ってくれた。
「じゃあ、か……佳苗ちゃん」
汗が流れる。
身体がカーッと熱くなる。
恥ずかしいのと嬉しいのと、それから照れ臭いのと。
何もかもがいっぺんに襲ってきたかのような複雑な混乱を覚えた。
何が始まったわけでもないけれど、名前で呼ばれたことが幸せだった。
奥さんのことは、気にならないし、嫉妬もしないけれど、彼の立場や状況、悠くんの気持ちも考えなければならない。
普通の恋愛が始まるようには、すんなりと行かないのもわかっている。
いつか彼が言っていたように、周りの反対だってあるかもしれない。
だけど、それに耐えていけないと思っているならば、先に進もうとも積極的にアプローチしようと思うはずが無かった。
叶わないかもしれない夢を、見ているだけかもしれないけれど、いつか悠くんと2人で仕事から帰ってきた彼を「お帰りなさい」と言って出迎えてあげられる日が来るといいな。




★おしまい~。

白石さんの裏側でした。

悠のいない1日

夏休み、義母の家に遊びに行った悠は、楽しく過ごしているらしく、ほとんど電話もかけてこない。
悠はともかく、僕のほうが少しホームシックならぬ悠不足に落ち込んでいる。
そんな僕を心配してだろう。
同じメガネ店で働く同僚の白石さんが、僕を水族館へ誘ってくれた。
「気分転換に遊びましょう」
断る理由はなかった。
白石さんは、僕の家庭の事情を知っている。相談にも乗ってくれる。
同情なのだろうが、聞いてもらうと不思議と心が落ち着いてくるのだ。
ふたりで休みをあわせることは難しいので、僕たちは夜の水族館へと行くことにした。
夏休み期間だけ、特別に遅くまで開園している水族館は、ライトアップされていて昼間に来るのとはまた別の感動を覚える。
「大人一枚、子供……」
入園のチケットを買うとき、言いかけて僕はハッとした。
そうだ。
いつもは悠と二人で来るから。
今日は白石さんとだから、「大人二枚」といわなければならないのに。。。



子供が直接、海の生き物を触って体験できるコーナーがあり、
悠に体験させたら喜んだだろうな、と思ったり、いるかのショーを見たときも、手を叩いて喜んだに違いないと思ったりしてしまった。
こんな僕の様子に白石さんが気付かないはずがなかった。
「今度は悠くんと三人で来たいな」
優しい白石さんの思いやりのある言葉に、僕の心は素直に嬉しいと感じていた。
悠がいないのは寂しいけれど、こんな風なデートも悪くないな、と少し思った1日だった。

悠のいない夏休み

夏休みになって僕は、仕事先のメガネ店に夏休みをもらった。
5日間だけだが、少し早めのお盆休みの代わりだ。
キャンプや、プラネタリウム。それにプールや海にも行こうと計画を立てていたのに、昨日の夜にかかってきた電話のせいで、すべて計画倒れになってしまった。
『悠ちゃんを遊びに来させてちょうだいね』
現在行方不明の妻、香織の母親からだった。
悠にとっては、血のつながった祖母なのだ。
気は進まないが、僕も一緒に着いて行こうかと考えた。
今現在の状況や、香織のことを話さなければいけないと思っていた。
義母は香織が家に帰らないことを知っている。
僕が話したからだが、時々香織からの連絡があるようで、さほど気にしている様子はない。
連絡があるから大丈夫。などとのんきに笑っているが、そういう問題なのだろうか。
問題だと考える僕のほうが、おかしいのかもしれないとも思ってしまう。
価値観の違い?
『あなたは来ないわよね』
今、僕も行きますと言いかけた瞬間だった。
先手を取られ、遠まわしに来るなって言われているような気がして、
「はあ、まあ」なんて曖昧に答えてしまった。
『じゃ、土曜に迎えに行くわね』
義母は、うきうきとした様子で言うと、さっさと電話を切ってしまった。
「ばあちゃんのうち? 行かなきゃいけないの?」
事情を話したら、悠は不満げな表情で口を尖らした。
「明日迎えに来るってさ」
「しょうがないな~。はあ、じゃ、1日だけ泊まってくるよ」
1日だけと悠は言ったが、1日だけで帰してもらえないことはわかっていた。
帰ったらたくさん遊ぼうね。と約束をしてから布団に入った。
「お父さん。手をつないで寝ようよ」
甘えたように言った悠の手を、僕はぎゅっと握ってやる。
悠がこんな風に僕に甘えてくるのは、寂しいと感じているときだと決まっている。
「寝たくないな……」
悠がポツリと漏らす。
「どうして?」
「だって、眠ったら一瞬で朝になるだろ? 明日になったらお父さんと離れ離れになるじゃん」
不覚にも目の奥がじ~んとなって、涙が出そうになった。
愛おしくて、可愛くて、たまらなくなって僕は悠に腕枕をして抱きしめた。
行かせたくないな。
でも、今さら断れないしな。
やがて安心したのか、悠は僕の腕の中で、すうすうと寝息を立て始めた。
眠るのがもったいなくなって僕は夜通しずっと悠を見ていた。



 
明日からしばらく悠がいない。寂しいのは僕も同じだった。
ひとりの夏休み。どう過ごせばいいだろう。
そう考えると、ため息しか出なかった。

夏休み直前編

以前の登校拒否が夢だったかのように、ひとり息子の悠は、一学期一度も休まずに登校出来た。
友達ともうまく付き合っているようで、笑顔もたくさん見られるようになったと、担任教師が連絡帳を通して教えてくれた。
5年生になった悠は、クラブの部長を引き受け、さらに委員会の副委員長までも立候補したらしい。
イガイに目立ちたがりだったのか、それとも責任感があるのか知らないが、人見知りで目立たないように、みんなと同じにしか行動出来なかった僕とは違う。
そう、僕とはまるで正反対の積極的な性格をしている。
「あのさ、もうすぐ夏休みだよね」
夕食時間、悠が僕に言う。
「一学期、あと、二日で皆勤賞だね、それで……」
悠が言いにくそうに目を泳がせる。
4年の三学期も休まずに登校できた悠に、僕はごほうびにって言って、
ゲームの攻略本をプレゼントしてやった。
あのときは、すごく喜んでいた。
もしかして、何かごほうびでもねだるつもりだろうかと考えた。
でも、それはどうだろう。
欲しいものを買ってもらいたいために頑張っているとしたら?
しかもそれをおねだりするって言うのは、ちょっと……。
「丸いケーキを食べようよ」
悠が言った。
「皆勤のお祝い?」
問い返すと悠はうなずいて、ちょっとだけ照れたように続けた。
「お父さんも仕事、頑張ったよね。一日も休まず皆勤だろ? 僕も皆勤だし、ふたりで頑張ったお祝いをしたいんだ」






悠に……泣かされてしまった。

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